自己免疫性肝疾患について

 自己免疫性肝疾患は、原因は不明ですが自己免疫が発生機序に関与していると考えられている病気です。主に以下の3つの疾患があります。いずれの疾患も遺伝することはありません。これらの疾患は頻度が低く、難治性の疾患であることから、一度は専門医の受診が望ましいと思われます。

1. 自己免疫性肝炎(AIH)
 本来自分の身を守るための免疫がAIHでは肝臓の細胞を攻撃するようになり、結果として肝臓の炎症を起こしている状態です。中年以降の女性に多く、50歳から60歳代が発症の中心となっています。検査所見では、肝障害による血中のAST(GOT)、ALT(GPT)の上昇がみられ、重症の場合は黄疸もみられます。高ガンマグロブリン血症、抗核抗体をはじめとする自己抗体の陽性所見が特徴的で、肝生検組織では一般に慢性肝炎像を示し、形質細胞浸潤が特徴的とされています。自己免疫反応を抑えるために免疫抑制剤、特に副腎皮質ステロイドが治療に用いられます。ほとんどの患者さんで投与により肝機能検査値は速やかに正常化します。しかし、肝機能検査値が正常化しても治療は長く続けることが大切です。適切な治療を行えば、肝臓の炎症は良く改善し、進行もみられなくなります。

2. 原発性胆汁性肝硬変(PBC)
 肝臓の中の細い胆管(肝臓でつくられた胆汁の流れる管)が慢性炎症により壊され、胆汁が流れにくくなり、肝臓内に胆汁が停滞することによって起こる病気です。中年以降の女性に多く、50歳代が発症の中心となっています。一般的にはまず皮膚の痒みが現れ、その後に黄疸が出現することが特徴的です(これら症状のある場合を症候性PBCと呼びます)。病気が進行し肝硬変になると、浮腫・腹水・食道胃静脈瘤の破裂による吐血や下血・肝性脳症などが現れます。 最近では、検診時肝機能検査値(ALP, γ-GTP)の異常をきっかけとしてみつかる、全く症状のないPBC(無症候性PBC)が増えており、新しくPBCと診断される人の2/3以上を占めています。治療としてはウルソデオキシコール酸(UDCA)が用いられます。内科的治療でコントロールされない場合には肝移植を検討します。

3. 原発性硬化性胆管炎 (PSC)
 肝臓の中あるいは外の胆管が障害され、胆汁が停滞することによって起こる病気です。日本では、発症年齢は20歳代と60歳代に2つのピークがみられます。若年の患者さんでは潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を合併しやすいとされています。高齢の患者さんでは膵炎の合併がみられることがあります。PSCでは、黄疸やかゆみが主な症状ですが、無症状で肝機能検査異常により見つかる場合もあります。診断には胆管造影検査が必要です。治療は、病態に応じて内服治療や内視鏡による治療が行われます。内科的治療でコントロールされない場合には肝移植治療を検討します。