愛媛大学医学部附属病院 先端医療創生センター

部門紹介

疫学・医学統計推進ユニット

スタッフ一覧

  • 三宅吉博(ユニット長)
  • 古川慎哉
  • 田中景子

ユニット概要

愛媛大学大学院医学系研究科では、分子生物学と疫学研究(人の集団を対象とした臨床研究を含む)をともに推進いたします。

つまり、Nature、ScienceだけでなくNew England Journal of Medicine、Lancet、JAMA、BMJに受理される研究成果の創出を目指しています。トランスレーショナル・リサーチを河川に例えると、上流は分子生物学などの基礎研究であり、何らかの画期的な研究成果が産み出された後、それが本当に人に有効であるのかどうかを調べる必要があり、下流に位置するのがまさに疫学研究なのです。統計解析は一連の疫学研究の行程において、重要ではありますが、一つのパートでしかありません。よくある例として、学会直前に統計解析を依頼し、無事に学会の発表を終えたら満足して終わりになるというパターンです。当然ながら、我々のユニットは統計解析支援の依頼に前向きに対応いたしますが、研究結果は学術誌に受理されて初めてエビデンスとなることを考えると、筆頭著者である臨床医は疫学のセンスを身につけ、PUBMEDに登録された査読のある英文学術誌に原著論文として公表できるよう、我々ユニットの力を活用しながら、努力すべきと考えます。どのような疫学デザインを採用すべきか、どの情報を収集すべきか、対象者数の人数は、統計解析手法は、方法と結果の記述内容は、方法論的な欠点は、・・・といった疫学研究における一連の流れを臨床の先生方とともに考え、臨床における疫学研究を推進することが我々ユニットの第一の任務となります。地味ではありますが、臨床講座において疫学研究ができる能力の涵養こそが極めて重要であります。前述の臨床系のトップジャーナルを目指すために、まずは、手元にある臨床データを駆使し、可能な限り数多くのエビデンスをインパクトファクターに関わらず学術誌に投稿し続け、疫学のノウハウを蓄積することが王道となります。

疫学研究の一丁目一番地は一次予防を目的とした各種疾患発症のリスク要因を解明することです。このような疫学研究の経験があれば、臨床における全ての疫学研究(臨床研究ともいいます)に応用することが可能となります。愛媛大学における一丁目一番地の疫学研究として、愛媛県内で大規模分子疫学コーホートである「愛大コーホート研究」を企画運営することも我々ユニットの重要な任務であります。このコーホート研究から各種疾患のリスク要因だけでなく予後因子に関する膨大なエビデンスが創出され、遺伝要因と環境要因との交互作用が明らかになれば、オーダーメイドの予防医学の発展に貢献できます。愛媛大学がアジアでトップクラスの疫学研究拠点となることを目指します。

研究紹介

【一次予防を目的とした疫学研究】
1.大阪母子保健研究

平成13年より妊婦さん1002名を子供が4歳半になるまで追跡した出生前コーホート研究です。このデータを用いて現時点で40編の英文原著論文を創出しています。妊娠中のお母さんのドコサヘキサエン酸(魚介類由来のn-3系不飽和脂肪酸の一つ)が多いほど、生まれた子の生後1歳半前後における喘鳴のリスクが有意に低下しました。一方、アトピー性皮膚炎のリスクとは関連がありませんでした。

2.琉球小児健康調査

平成16年度、那覇市及び名護市の全公立小中学生28,885名を対象とした横断研究です。このデータを用いて現時点で15編の英文原著論文を創出しています。

3.福岡・近畿パーキンソン病研究

症例群250名、対照群372名からなる多施設症例対照研究です。このデータを用いて現時点で20編の英文原著論文を創出しています。LRRK2 Gly2385Arg遺伝子多型は、極東アジア人でのみ変異型が認められ、約2.1倍パーキンソン病のリスク上昇と有意な関連を認めました。喫煙はパーキンソン病の予防要因でありますが、野生型で喫煙有り群を基準とした場合、変異型で喫煙無し群では約5.8倍リスクが高まり、この遺伝子多型と喫煙との間に有意なadditive interactionを認めました。

4.九州・沖縄母子保健研究

平成19年より妊婦さん1757名を追跡している出生前コーホート研究です。このデータを用いて現時点で33編の英文原著論文を創出しています。母親においてVDR遺伝子多型rs731236と歯周病との関連を調べたところ、AA遺伝子型に比較し、GG遺伝子型では約3.7倍リスクが高まりました。喫煙との交互作用を検討したところ、有意なadditive interactionを認めました。

5.九州・沖縄3歳児健康調査

平成24年度より2年間、九州・沖縄45自治体に住む3歳児6,579名を対象とした横断研究です。これから解析を進めます。

6.日本潰瘍性大腸炎研究

平成27年度より全国26医療機関の協力を得て、症例対照研究を実施致します。

【臨床における予後等解明を目的とした疫学研究】
1.道後STUDY

平成19年より愛媛県内10医療機関で糖尿病患者の合併症に関する予後関連因子の解明を目的とした多施設疫学研究で、平成26年10月末で1,051名の登録が終了しています。このデータを用いて現時点で2編の英文原著論文を創出しています。女性2型糖尿病患者における睡眠呼吸障害と微量アルブミン尿及び顕性蛋白尿との有意な正の関連、2型糖尿病患者における潜在性甲状腺機能低下症と微量アルブミン尿との有意な正の関連を報告しました。