〇急性散在性脳脊髄炎(ADEMacute disseminated encephalomyelitis)とは

【定義】

急性に発症し単相性の経過をとる脳脊髄の炎症性散在性白質病変により神経症候を呈する疾患

【分類】

原因別に以下の3つに分類される。

_感染後ADEM(postinfectious ADEM)

・何らかの感染症に引き続いて発症するADEM.

・頻度的に最も多く、小児に多い。

・発疹性ウイルス(麻疹、風疹、水痘・帯状疱疹など)、ムンプスウイルス、インフルエンザウイルスの頻度が高い。他にEBV、コクサッキ_、アデノ、単純ヘルペス等のウイルス、マイコプラズマ、キャンピロバクター、溶連菌など。

・一般的には気道、消化管感染症などの後に起こるが、起炎病原体を同定できないことが多い。

_ワクチン接種後ADEM(postvaccinal ADEM)

・種痘、狂犬病、麻疹、日本脳炎、インフルエンザ、百日咳、ジフテリア、破傷風、ムンプス、B型肝炎等のワクチン接種後に引き続いて発症するADEM

_特発性ADEM(idiopathic ADEM)

・感染症やワクチン接種などの病歴がなく、明らかな誘因がないADEM

・若年成人に多い傾向がある。

※急性出血性白質脳炎(acute hemorrhageic leukoencephalitis)Hurst脳炎

・感染後ADEMの劇症型で、先行感染は上気道感染が多い。

・神経症状は通常のADEMと同じだが、症状の進展が速く重症化する。

10日_2週間で死亡するが、ステロイドや減圧療法などの治療による生存例もある。

【疫学】

・日本の推定有病率;人口10万人あたり2.5

【病理】

・中枢神経系内の白質の小静脈周囲に単核細胞浸潤を伴う脱髄病変が散在性に認められる。

・脱髄病変は多発性硬化症(MSmultiple sclerosis)のものに比べてより小型。

【病態生理】

・発症機序は以下の理由から自己免疫的機序が考えられている。

 _ウイルス感染後やワクチン接種後に発症する。

 _病巣に病原微生物を認めない。

 _実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAEexperimental autoimmune encephalomyelitis)の臨床像、病理像が本症に類似する。

・ミエリン抗原を含んだワクチンによるADEMでは、このミエリン抗原に対するアレルギ

ー反応により脳炎が生じる。

・感染後ADEMやミエリン抗原を含まないワクチンによるADEMでは、自己のミエリン                

抗原と分子相同性をもつウイルス抗原によりミエリン抗原反応性自己攻撃性T細胞が誘導され、このT細胞が中枢神経系内に移行し活性化されて脳炎が発症すると考えられる。また、ある種の細菌ではスーパー抗原の関与が示唆されている。

【臨床症状】

・感染後あるいはワクチン接種後、数日_4週後(多くは1_2週後)に急性に発症し、基本的には単相性の経過をとる。

・病巣により症状は多彩だが、初期症状として髄膜刺激症状(頭痛、悪心、嘔吐、項部硬直、発熱、Kernig徴候など)を認めやすい。

・通常の脳炎型では髄膜刺激症状(頭痛、発熱、嘔吐など)、意識障害、痙攣、片麻痺、失語、脳神経麻痺、小脳症状(眼振、小脳失調など)などがみられる。

【検査成績】

(1)血液所見

・末梢血の白血球増加、赤沈亢進、CRP陽性など

(2)髄液所見

・髄液圧の軽度上昇

・軽度_中等度のリンパ球優位の細胞数上昇(15_250/mm3)

・正常ないし軽度の蛋白上昇(35_150mg/dl)

・糖は正常範囲

IgG上昇

(3)画像診断

  1. CT
  2. ・病変は低吸収域を示す。

  3. MRI

T2強調画像で高信号域を示す。

(4)脳波所見

【鑑別診断】

 鑑別診断として感染性脳炎(急性ウイルス性脳脊髄炎、日本脳炎、マイコプラズマ脳炎、ライム病等)、髄膜炎(小児のコクサッキー、エコー、アデノ、HHV_6などのウイルスによるもの、結核性のもの)、脳膿瘍、多発性硬化症、同心円硬化症(Balo)Reye症候群、SLE、高リン脂質抗体症候群(APSantiphospholipid syndrome)、神経べーチェット病などが挙げられる。

 中でも急性ウイルス性脳脊髄炎と多発性硬化症が重要。

  1. 急性ウイルス性脳脊髄炎

  1. 多発性硬化症

【治療】

  1. 重症例;水溶性ステロイドパルス療法が第一選択。

  1. ステロイド抵抗性の場合

  1. その他

【予後】

・多くは単相性の経過をとる。

【参考文献】