6−5)プロスラグランジンE1
最近の研究で、腰部脊柱管狭窄症(中年から高齢者で発症する病気で腰椎部で神経が圧迫され下肢のしびれや痛み、歩行障害などが出現する病気です)の間欠性跛行(歩き出すと下肢のしびれや痛みが出現し、休憩をとることにより回復すること)に対してプロスラグランジンE1という薬が効果があることが判明し、現在使用できるようになっています。オパルモンとプロレナールが現在市販されている薬剤です。私自身の使用経験では、この薬の出現によって、今までは手術しなければならなかった患者の約半数が、薬物療法で症状を抑えられるようになっています。この薬は神経周囲の血流を増加させる働きがあります。この薬物を動物に投与して、腰椎部の神経(神経根と言います)の血流が増加することが観察されたということがこの治療法の根拠になっています。しかし、実際にこの薬物を患者さんに投与している私としては2つの疑問があります。1)血流を観察する動物実験で投与されているPGE1の量は、体重あたりで換算すると、患者さんに投与している量より遙かに多いこと。2)実際にこの薬物を投与し始めてから効果が現れ始めるのに2週間くらいの期間が必要であること。です。
我々はこの薬物に血流改善以外の効果があるのではないかと考えました。我々の脊髄損傷の二次的障害モデルは炎症を主体とするものです。我々は神経組織内における炎症細胞であるマイクログリアの作用をプロスラグランジンE1が抑制している可能性があるのではないかと考えました。
この研究結果は整形外科の基礎研究雑誌である Jouranal of Orthopedic Research に掲載されています。
Prostaglandin E1 analog inhibits the microglia function: suppression of lipopolysaccharide-induced nitric oxide and TNF-a release 
Chuai M., Ogata T., Morino T., Okumura H., Yamamoto H. and Schubert P.
J Orthopedic Res.
2002, vol. 20, pp 1246-1252
要旨を簡単に説明しますと、神経組織から単離培養したマイクログリアにLPSという薬品をかけますと、細胞が活性化され、組織障害性のある物質である一酸化窒素や腫瘍壊死因子(TNF-a)が多量に放出されます。この実験形は広く、炎症のモデルとして用いられています。この細胞はプロスラグランジンE1存在下では一酸化窒素や腫瘍壊死因子(TNF-a)の放出量が激減することがわかったのです。