6−6)選択的セロトニン再取り込み阻害剤
 

脊髄損傷後に痛みや知覚過敏などの感覚異常が起こることはしばしばあります。この痛みは難治性で、脊髄損傷患者の社会復帰を妨げる原因の一つになっています。脊髄損傷の治療を考えるに当たっては、この問題を無視することはできません。我々はまず、脊髄損傷により感覚異常の一つであるHyperalgesia(痛覚域値が低下している状態)を引き起こすモデルを作製しました。先に述べた脊髄損傷モデルで、圧迫時間を20分にすると、損傷後から約1週間続くHyperalgesiaを動物の温度痛覚域値を測定するHargreaves Plantar test apparatusで捉えられます。この実験系で選択的セロトニン再取り込み阻害剤(Selective serotonin reuptake inhibitor; SSRI)を試しました。

痛みを抑制する内因性の機構としてはオピオイド、ノルアドレナリンと並んでセロトニンがあります。セロトニンは痛みを抑制する伝達物質です。選択的セロトニン再取り込み阻害剤は細胞外のセロトニン濃度を上昇させることによって、この痛みのシグナルの下向性抑制系を賦活化する作用があります。

我々の実験結果ではSSRIやセロトニンレセプターアゴニストを投与(全身投与、硬膜内投与ともに)すると、Hyperalgesiaが抑制され、セロトニンレセプターアンタゴニストを投与するとHyperalgesiaが増悪することがわかりました。この結果は以下の論文に掲載されています。

 
Serotonergic signaling inhibits hyperalgesia induced by spinal cord damage
Horiuchi H., Ogata T., Morino T., Takeba, J., Yamamoto H.
Brain Res.
2003, vol 963, pp 312-320
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http://dx.doi.org/10.1016/S0006-8993(02)04055-6
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