6−8)脊髄圧迫と血流の関係について(血流改善剤の効果)

(研究の目的)
脊髄損傷や椎間板ヘルニアなどの脊髄圧迫病変における脊髄血流の動態を解明し、血流改善薬などの効果を判定するために、ラット脊髄に硬膜上から圧迫を加え、その部分の血流をリアルタイムに測定する装置を開発した。
この装置は
非接触型のLaser Doppler血流計を脊髄圧迫装置の一部として組み込むことにより、圧迫部位の血流を硬膜の外側から直接に観察することができるようになっている。この装置を用いて、ラットの脊髄圧迫に対する血流の変化を観察し、圧迫力に対する組織の脆弱性と圧迫解除後の回復力を評価することが第一の目的である。第2の目的としては、血流改善薬として臨床的にも使用されている薬剤を静脈投与した時に、脊髄圧迫中の血流や圧迫解除後の血流回復にどのような影響を与えるのかを観察し、脊髄圧迫病変における血流改善薬の効果を判定することであった。
脊髄圧迫時の血流変化を見た研究はこれまでにいくつか報告がある。水素クリアランス法や、radioactive tracer microsphere techniqueLaser Doppler flowmetory techniqueRane K. et al., nWestergren H. et al.などが用いられてきた。しかしこれらの研究では、圧迫部位の血流を直接リアルタイムに観察することができなかったため、圧迫中では圧迫部位の中枢や末梢の血流を評価したり、圧迫解除後に組織を摘出して測定したりする方法であり、解剖学的に特殊な血管分布のある中枢神経の病態生理を分析する方法としては問題があるといわざるを得ない。今回我々が開発している脊髄血流測定システムでは圧迫を受けたその部位の血流をリアルタイムに測定できる画期的な方法であり、今までspeculationとして議論されてきた脊髄の圧迫と血流の関係について最終的な結論を出す方法となると考えている。

(研究の結果)
この研究により、ラットにおいては約20gの圧迫で脊髄血流は完全に途絶えてしまうことがわかった。20gの圧迫(すなわち完全虚血)を20分行った場合には、除圧後血流は完全に回復し、下肢麻痺もほとんど起こらないが、40分間の圧迫(すなわち虚血)を行った場合には、血流は完全回復せず、下肢麻痺が出現することがわかった。
この結果は2007年のSpineに掲載された。


Real-time direct measurement of spinal cord blood flow at the site of compression: relationship between blood flow recovery and motor deficiency in spinal cord injury.

Hamamoto Y, Ogata T, Morino T, Hino M, and Yamamoto H

Spine 2007, vol. 32 (18), pp. 1955-1962