6−9)脊髄損傷に対するマクロファージ移植

脊髄損傷に対する遺伝子導入マクロファージ移植の試み: migration機能を利用した硬膜内注入による損傷部位への遺伝子導入法の開発

  

脊髄損傷に対する治療法として、損傷部に神経栄養因子などを過剰発現させるための新しい方法を模索しているが、今回の研究では、炎症部位にmigrationにより集積する性質を持つマクロファージに着目し、脊髄に直接注入せずに、損傷部位に効率的な遺伝子導入を行う方法を開発した。遺伝子導入に際しては臨床応用を意識し、ウイルスを用いない電気的遺伝子導入法を採用した。

(方法)ラット胸髄MASCIS Impactorを用いて脊髄圧迫損傷モデルを作成した。同じ個体の腹腔内からマクロファージを採取し、電気的遺伝子導入法を用いてGreen fluorescent Protein(GFP)遺伝子を導入した後に、それを硬膜内に注入し、経時的に組織学的検討を行った。

(結果)GFP遺伝子を導入したマクロファージを、脊髄損傷後に硬膜内に注入し、1週間後に組織を観察すると脊髄損傷中心部に空洞ができており、その周辺に多数の蛍光を発するmigrateしたマクロファージが観察された。マクロファージは脊髄の辺縁部にも見られたが、損傷の強い中心部に多数migrateしていた。損傷部から1センチ離れた部位では蛍光を発するマクロファージの数は損傷中心部に比べて遙かに少ない量であった。この結果から硬膜内に注入されたマクロファージは、損傷中心部に集積することがわかった。GFPの産生は移植後3−4週間後でも損傷脊髄内に観察された。

同じ固体の腹腔から単離したマクロファージを硬膜内に注入すると、損傷部にmigrationし、集積することがわかった。移植されたマクロファージは少なくとも1ヶ月間生存し、目的蛋白をし続けることが確認された。本研究ではまず、GFPのみを含むベクターを導入し、マクロファージの動態を観察したが、今後、神経栄養因子などを組み込んだベクターを用いて同様のマクロファージ移植を行うことにより、脊髄損傷の軽減や神経再生の可能性を模索したいと考えている。


(この研究の一部は以下の雑誌に掲載されています)
遺伝子導入自己マクロファージ硬膜内注入による脊髄損傷部位への遺伝子導入法の開発

尾形直則
整形外科 575712号): 1610, 2006