6−3)ステロイド
Hall and Braughler (1992)は動物モデルで30 mg/kgMethylprednisolone(MP)を脊髄損傷前に投与することで、Lipid peroxidationが抑制されると報告しました。これに基づいてNASCISII human studyが行われました。方法は最初の45分で30 mg/kgMPを投与し、その後23時間かけて5.4 mg/kgMPを持続投与するというものです。このマニュアルで受傷後8時間以内に投与開始された人は6W, 6Mの検診で有意な改善が認められました。ステロイドホルモンの神経障害に対する作用は、古くから知られており、特に、炎症や浮腫を抑制することにより局所の血流を温存するという考え方で臨床の場でも多く使われてきました。ちょうどその頃(論文発表したのは1993年ですから)、我々はステロイドの脊髄障害における作用には浮腫や血流以外の何らかの作用があるだろうと考えて、培養神経細胞にグルタミン酸をかけて、細胞障害を観察するという研究をしていました。その結果は下記の論文に記載している通りで、ステロイドホルモンはグルタミン酸による細胞障害から神経細胞を保護することがわかりました。発表した当時には私も、Lipid peroxidationの抑制かなと思っていたのですが、現在では興奮性アミノ酸による神経障害のメカニズムにもいろいろなものがあることが知られてきましたので、本気で調べると、興味ある結果が出てくるかもしれません。しかし、臨床的にあまりめざましい効果が観られない報告が相次いだため、この論文を最後に我々はステロイドの研究からは手を引いてしまいました。
Steroid hormones protect spinal cord neurons from glutamate toxicity.
Ogata T., Nakamura Y., Tsuji K., Shibata T. and Kataoka K.
Neuroscience
1993, vol. 55, No. 2, pp. 445-449