NSAIDsの適正使用について

日本の整形外科外来ではNSAIDsが使われすぎていると思います。
NSAIDsの一番効果的で安全な使い方は、60歳以下の急性(2週間以内)炎症性疼痛です。
NSAIDsのリスクは使用期間の延長とともに高くなり、また効果は、時間とともに少なくなってきます。「最初の1週間から2週間、NSAIDsを集中して使う」が一番有効で安全な使い方です。


解説
1)消化管障害
米国では、年間1,300万人のNSAIDs常用者の中で、これに関連した消化管障害による入院患者数は107,000人で、うち16,500人が死亡しているとのデータがある。アメリカは人口が3億人、2万人に1人以上が死んでいる。Singh, G., et al.:J. Rheumatol., 26, Suppl26:1824(1999)。これはAIDSで死亡している人に匹敵する人数であり、老年医学会ではNSAIDsの高齢者に対する使用を推奨しないということになっている。内視鏡を用いた消化管障害の研究では、2週間程度のNSAIDs内服で胃薬を用いても半数以上の人に小腸病変が出現するということも報告されています。
2)心臓・血管障害
Cox-2選択的阻害薬の添付文書では冠動脈バイパス再建術を受けている人や心不全(通常以下の身体活動で症状出現レベル)のある患者さんでは禁忌となっている。また、狭心症・心筋梗塞・脳卒中の既往、むくみや息切れ(心不全疑い)、心電図異常、高血圧は慎重投となっている。
3)腎機能障害
NSAIDsは腎機能障害のある患者には使ってはいけないことは常識。しかし問題は腎機能障害が外来で簡単にわかるかどうかです。血清クレアチニンを測定すると理論的なeGFR出せます。愛媛大学薬剤部の調査では、60歳代で30%、70歳以上では50%以上の人が慢性腎機能障害の重症度分類3期(中等度)以上の腎障害で、NSAIDsの使用は控えるべき人たちでした。

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