最近の医療の進歩にはめざましいものがあります。診断のための設備や治療技術など、10年前、いや5年前ですら比較にならないほど技術革新が進んでおります。しかしながらその一方で、なぜその疾患が発生するのか、なぜその疾患が進むのかなど、疾患の基本的な部分がまだまだ明らかになっていない疾患がたくさんあります。それらを明らかにすることにより、より有効な治療法を開発することが可能になります。基礎研究の中には、遺伝子の研究や生化学的研究などの試験管内での研究、動物を使った研究など多岐にわたります。
臨床研究といえば新薬と思う方も少なくないと思います。もちろん新薬を扱う研究もありますが、それだけではなく承認済みの薬を用いることもあれば、食事療法を取り入れたり、診断法を比較したりといろいろな研究があり、主に患者さんから得た組織や血液、情報などを用いて研究します。
特に、膀胱腫瘍や前立腺腫瘍に関する種々の研究を行っています。動物モデルや細胞、さらには患者さんからご提供いただいた組織などを用いて、その疾患に関わる因子の解明を行い、疾患の予防、早期発見、さらには治療など、日常の診療に役立たせるようにしております。
新しい成分が薬品会社により開発された後、動物実験によりその効果を確認されると、“治験”に入ります。“治験”は有効性と安全性を評価するもので、第1相から第3相までの試験段階に分かれます。第1相試験は、少数の健康な方を対象にし、主に安全性を調べます。第2相試験は、やはり少数の患者さんを対象にし、安全性と効果を調べます。第3相試験は、多くの患者さんを対象にし、既存の薬と比較します。それらの結果をまとめて厚生労働省に提出することにより、薬として承認されます。成分の発見から承認までには約10年以上かかり、その中でも“治験”にかかる期間は半分以上です。また海外ですでに使われている薬でも、日本国内で使用できるようにするには“治験”が必要です。
“治験”には、これまでにも多くの方が参加されてきました。“治験”は、参加される方の自由意志に基づくボランティアです。すなわち、誰からも強制されることなく、自分の意志で決めることができます。またその参加意志は、いつでも取り消すことができます。しかし、ご協力いただける方がいない限り、新しい薬は生まれてきません。“治験”にご協力いただくことにより、同じ病気で悩んでいる患者さんを救うことにもなります。しかしながら、安全性が確立した薬でないために、期待されない効果(副作用)が出現することもあります。“治験”に参加していただくと、通常の診察よりも時間をかけて、専門医による診察や検査を受けることができ、そういった副作用にも適切に対処いたします。また“治験”中は、一部の薬代や検査費、さらには通院のための交通費を製薬会社が負担し、治療費などが軽減されます。
“治験”を行った薬は、厚生労働省の厳格な審査を受け、“安全で充分に効果のある薬”と判断されると、承認を受け、市販されるようになります。しかしいったん薬が市販されると、多くの患者さんに用いることになり、性別、年齢、体質、その他の薬との併用など、様々な条件が加わり、期待しない効果(副作用)が出現することもあります。そういったことを継続的に検証し、評価する必要があります。この検証・評価を“市販後臨床試験”、あるいは“第4相試験”と言います。その結果、その薬の適切な使用方法を検討し、今後の医療に反映されるわけです。
医師あるいは研究者が、製薬会社に頼まれることなく、自主的に行う研究のことです。たとえ製薬会社にとって好ましくない結果が出た場合でも、製薬会社の意向を気にすることなく結果を公表することができます。通常、厚生労働省や文部科学省、あるいは種々の財団から獲得した研究費を用いて行います。また、通常の診療の範囲内で行うため、原則として薬代や検査代は保険診療の範囲で、患者さんに負担していただきます。
試験管内や動物における結果がそのままヒトの病気に当てはまるか否かは、実際にヒトに投与されて初めて確認できます。その意味で、治験などの研究は非常に重要です。しかしながら、もし医師から充分な説明がなく、調査や研究の内容を理解できない状態で、いつのまにか研究の対象にされていたとすると、それは人体実験になってしまいます。国際的にインフォームドコンセントが必要不可欠と認識される現在、倫理委員会により審議され了承された研究は、患者さんに公正かつ客観的な事実が提示された上で、自己の医師に基づき、参加を決められるようになっています。
より有効な治療法を開発するための研究は、多岐に渡ります。