1,Common disease としての糖尿病


 我々糖尿病内科がめざすのは、糖尿病を代謝異常としてのみではなく、心血管病を中心とした全身疾患としてとらえ、多岐にわたる合併症を早期に診断し、検査データと生活背景に基づいた個別化医療を行うことです。
 現在、糖尿病の分野では、SGLT2阻害薬や48時間近く作用するピークレスのインスリン、weeklyのインクレチン関連薬など、次々と新しいコンセプトの薬が上市されており、治療の選択肢が広がっています。しかし、糖尿病の治療は10人10通りであり、マニュアルによる画一的な治療では上手くいきません。高齢者糖尿病ガイドラインにも示されているように、HbA1cの目標値も個々で異なります。糖尿病内科では、全ての対象患者に食事の内容、嗜好をはじめ、労働状況、生活リズム、ADL、家族のサポートなど生活全般についての聞き取りを行っています。さらに糖尿病罹病期間、合併症(特に心血管病や腎機能、認知症、癌)、年齢(余命)、インスリン分泌能、肥満度などを総合的に評価し、血圧や脂質のコントロールを含めた、包括的個別化医療を行っています。個別の治療方針決定の後は、原則としてかかりつけの先生のもとで外来通院をしていただいております。治療に難渋している患者さんか゛いらっしゃいましたら、ぜひご紹介ください。 

2,糖尿病合併症外来

 糖尿病には、食事療法を中心とした個別指導が欠かせません。前述のように、合併症は血管があるところすべて=すなわち全身に及びます。また、最近では、糖尿病患者の認知症や、癌が多く見受けられます。例えば、生活は変わらないにもかかわらず、急激な血糖増悪をきたす患者では、癌、感染症、リウマチ・膠原病などの鑑別が必要です。しかし、一般のクリニックにおいて、定期的に、これら合併症の管理と食事などの療養指導を含めた包括的な個別化医療を行うことは困難だと思われます。そこで糖尿病内科では、既に、何らかの合併症を持つ患者さんについて、1日で眼底、認知機能検査を含む全身の合併症の評価プラス食事療法や透析予防など個別の療養指導を行う専門外来を設けています。

3,CGM外来、インスリン導入プログラム

 更に、数分毎に5?14日間連続血糖測定ができる持続血糖モニタリング(CGM)外来を開設し、CGMによる細かな血糖変動に基づくインスリンの投与方法や治療方針の助言を行っています。今話題の食後の血糖スパイクをとらえることも可能です。また、新規インスリン導入のためのプログラムもあります。プログラム終了後は原則としてかかりつけの先生のもとで外来通院をしていただいております。

4,1型糖尿病(急性、緩徐進行、劇症)、遺伝子異常による糖尿病

<1型糖尿病や遺伝子異常による糖尿病は少なくない>
 一般医家にとってコントロールが困難な、1型糖尿病、遺伝子異常による糖尿病の診断治療を行っています。約1000万人の糖尿病患者のうち、約5%は1型糖尿病、1-2%はミトコンドリア異常のような遺伝子異常による糖尿病です。従って、一般クリニックの外来にも、かなりの頻度で2型以外の糖尿病患者が
存在している可能性があります。血糖コントロールが上手くいかない患者では、一度、血中Cペプチド、GAD抗体の測定を施行して頂くことが重要です。例えば、現在は内服薬で血糖コントロールできていても、GAD抗体陽性の場合は緩徐進行1型糖尿病の可能性が高く、将来インスリン依存となりえます。ミトコンドリア遺伝子異常による糖尿病は、若年発症が多く、家族歴に母系遺伝を認め、感音性難聴、低身長、神経障害、心筋障害などを合併することが特徴です。早期に腎不全へ移行する例も多く認めます。また、若年発症、3世代以上にわたる糖尿病家系はMODY(maturity-onset diabetes of the young)の可能性があります。このような遺伝子異常による糖尿病は、可能な限り早期に診断を行い、早期から厳格な治療を開始することが重要です。
 重篤なケトアシドーシスを引き起こし、診断が遅れれば、数日で死亡する可能性もある“劇症1型糖尿病”の初期症状は“かぜ症状や腹痛”であり、まず、一般外来や、救急外来を受診する可能性があります。また、妊娠中発症する例も認められます。激しい口渇や、検尿による高度な尿糖と尿ケトン、意識障害などが診断の契機となります。このような患者さんがいらっしゃいましたらぜひご紹介ください。

5,CSII, SAP による治療

 インスリン頻回投与法では十分な血糖コントロールが得られないブリットル型糖尿病や、厳重な血糖コントロールが必要とされる糖尿病妊婦などの患者さんを中心に、プログラム可能なインスリンポンプによるインスリン持続皮下注入法(CSII)や、リアルタイムCGMとCSIIを連動させた機器(SAP)の導入も積極的に行っております。CSIIやSAPの導入により、患者さんは、専門医の事前指示のもと、朝晩の日内変動にあわせたインスリン注入のプログラミングはもちろん、日々変わる生活強度や、現在の血糖値、今から摂取する炭水化物量などに応じて、インスリン投与量をその場で変更することができます。このような、システムにより、1型糖尿病であっても、ほとんど正常な方と同じレベルの血糖プロファイルを達成することが可能です。糖尿病内科では、このCSII、SAPを用いた治療を入院中だけでなく外来でも続けることが可能です。このような患者さんがいらっしゃいましたらぜひご紹介ください。


6,最近の話題

CGMやリアルタイムCGMの登場により、血糖の評価は自己血糖測定(SMBG)による1日24回の点から24時間の連続した線となりました。これは、糖尿病治療にとって、大きなパラダイムシフトと言えます。
 例えば、表 はある糖尿病患者のSMBGの結果です。本症例は1型糖尿病で血糖が不安定であり、基礎インスリンとしてグラルギンを朝夕6 単位の2 回注射をしていました。SMBG の結果からは朝と眠前の高血糖を認めたため基礎インスリンが不足しているように思われ、従来であれば眠前の基礎インスリンを増量していたかもしれません。

 しかし、本症例では、は同時にCGM による3 日間、5 分毎の連続血糖測定も行われており(図1、CGM の機種がiPro2 であったため、測定結果は8月12 日の午後に明らかになっている)、その結果、8 月11日および12日の深夜から早朝にかけて低血糖を認めていました。従って、朝に認めた高血糖は低血糖によるSomogyi 効果(深夜の低血糖に反応して分泌されたインスリン拮抗ホルモンによる)が一因と考えられました。そこで、基礎インスリンをむしろ減量し、作用時間のより長いデグルデクに変更した結果、深夜の低血糖、および朝の血糖の改善を認めたました。その後、他の症例でも、CGM による連続血糖測定の結果、深夜から早朝にかけての低血糖と朝の高血糖という現象を、特に高齢者を中心に複数例経験したため、これらの症例では持効型インスリンの投与を眠前ではなく朝に変更しています。CGM による連続血糖測定は、SMBG では見逃しがちな時間帯の低血糖、高血糖を明らかにでき、治療方針の決定に有用です。

 当科では、CGM外来を開設し、御紹介頂いた先生に、CGMの結果とともに、血糖変動に基づくインスリン治療方針の提案などを行っています。このような患者さんがいらっしゃいましたらぜひご紹介ください。




7,研究成果


 現在当科ではインスリン抵抗性関連遺伝子のプロモーターSNPを標的としたメタボリックシンドロームの予防・診断法についての研究をすすめております。教授の大澤らはレジスチンのSNP-420のG/G型が2型糖尿病感受性遺伝子であることを発見しました。(Am J Hum Genet 75: 678, 2004)。 将来的には、遺伝子検査に基づくプレシジョンメディスンの確立をめざしています。1型糖尿病についても県内の多施設共同研究のEhime Studyとして、HLAや自己抗体との関連を報告しており、我々の研究成果は劇症1型糖尿病の診断基準などにも採用されています(Diabetes Care 25: 995, 2002、Diabetes 53: 2684, 2004)。



 氏   名    大澤 春彦
  (おおさわ はるひこ)
 役   職   教授
 所属講座   愛媛大学大学院糖尿病内科学講座
 卒業年度   昭和59年
 専門領域   糖尿病内科(日本内科学会認定内科医、同研修指導医、
  日本糖尿病学会専門医、同研修指導医、日本臨床検査
  医学会臨床検査専門医)
 自己紹介
糖尿病を専門に診療を行っています。2型糖尿病では、生活習慣の改善を基本に、経口血糖降下薬やインスリンによる適切な治療を心がけています。1型糖尿病はインスリンの4-5回頻回注射と血糖自己測定によるインスリン強化療法を全例に行っています。さらに、血糖に加え、血圧、脂質異常症、肥満を含めたメタボリックシンドロームの総合的な治療により、動脈硬化性疾患の予防を試みています。将来的には、遺伝子検査に基づくオーダーメイド医療の確立をめざしています。


 氏   名    高田 康徳
  (たかた やすのり)
 役   職   特任講師
 所属講座   愛媛大学大学院糖尿病内科学講座
 卒業年度   平成6年
 専門領域   動脈硬化、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常
  (メタボリック症候群)、糖尿病腎症
  (日本糖尿病学会専門医、日本内科学会認定総合
  内科専門医、同認定医、同研修指導医、日本循環器
  学会専門医、日本腎臓病学会専門医、日本高血
  圧学会専門医、同指導医)
 自己紹介
動脈硬化を専門にしており糖尿病を糖代謝異常のみならず血管病としてとらえ診療しております。糖尿病による動脈硬化や心不全の研究を行っております。高血圧や脂質代謝異常を伴う糖尿病、心血管合併症を伴う糖尿病、糖尿病性腎症などの患者さんがいらっしゃいましたらご紹介ください。


 氏   名    川村 良一
  (かわむら りょういち)
 役   職   助教
 所属講座   愛媛大学大学院糖尿病内科学講座
 卒業年度   平成15年
 専門領域   糖尿病(日本内科学会認定内科医、
  日本糖尿病学会専門医)
 自己紹介
糖尿病を専門に外来診療を行っています。また、周術期やステロイド投与時、高カロリー輸液時の血糖管理にも対応いたしますので、御紹介いただけましたら幸いです。


 氏   名    松下 由美
  (まつした ゆみ)
 役   職   助教
 所属講座   愛媛大学大学院糖尿病内科学講座
 卒業年度   平成18年
 専門領域   糖尿病(日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会専門医)
 自己紹介
糖尿病全般を担当しています。合併症を予防し、患者さんひとりひとりのQOL(Quality of life:生活の質)の向上を目指すべく、患者さんの立場から、患者さんと一緒により良い医療をと考えながら日々診療しています。


 氏   名    山内 淳子
  (やまうち じゅんこ)
 役   職   医師
 所属講座   愛媛大学大学院糖尿病内科学講座(検査部)
 卒業年度   平成10年
 専門領域   日本内科学会認定総合内科専門医、同認定医、
  日本糖尿病学会専門医
 自己紹介
小児を除く糖尿病全般を担当しております。自覚症状のないうちは、治療への意欲が保ちにくい疾患ではありますが薬物療法に加え、食事、運動療法など、患者様とともに、
よりよい治療を目指してまいります。