知識を統合し患者を理解する思考 ー診断学ー
知識を統合し、患者を理解する思考法 ー 診断学 ー
「診断学」という言葉を聞いたことはありますか?
医師は、医学部で細胞レベルの話や生理学など身体のメカニズムについて学び、その後、さまざまな病気の概念や治療を学びます。医学は日々進歩しており、医師は生涯にわたって学び続けることが求められます。
こうして身につけた知識は、すべて患者さんの「病い」を理解し、診断するために用いられます。患者さんが複数の症状を訴えた場合、まず行われるのが問診です。そこで得られた情報をもとに、「どのようなメカニズムで起きているのか」「どの臓器が関わっている可能性があるのか」を、基礎医学や日々の臨床経験を背景に考えていきます。さらに身体診察を行い、頭の中に浮かんだ疾患の確からしさを検証していきます。
このように情報を統合し、仮説を立てて検証していく思考の過程を臨床推論といい、臨床推論について体系的に学ぶ学問が診断学です。重要なのは、診断は検査から始まるのではなく、検査を行う前にある程度の見立てがなされているという点です。診断学は、その「見立て」を可能にする力を養います。
診断学の世界には、まるで魔法のように瞬時に診断を導き出す名医も存在します。そうした医師は、数えきれないほど臨床推論を積み重ねてきた結果、極めて高速に思考を巡らせることができます。その姿は、経験の浅い医師や学生から見ると、まさに“技”のように映るかもしれません。
しかし、総合診療において最も大切なのは、「診断をつけること」そのものが目的ではないという点です。診断がつくことで、患者さんが受け入れ難い現実に直面することもあります。総合診療医には、正確に診断する力に加えて、その先にある患者さんの気持ちや生活を見据え、寄り添いながら支えていく姿勢が求められます。私たちは、臨床推論と診断学を、患者さんのために活かされる医療の基盤として大切にしています。