当講座は、1973(昭和48)年の愛媛大学医学部開設とともに発足した「病理学第一講座」を起源としています。分子病理学講座を経て、2026(令和8)年4月、附属病院病理診断科(病理部)と組織統合し、病理診断学講座として新たに歩み始めました。

1973(昭和48)年 病理学第一講座の発足 ── 初代 福西 亮 教授

愛媛大学医学部の開設にあたり、先発7講座の一つとして初代教授の福西亮先生が着任しました。同年9月、病理学第一講座が正式に発足します。

開設当初から研究の裾野は広く、ステロイド産生臓器、化学発癌、ラット乳癌、マクロファージの糖代謝など、複数のテーマが並行して進められました。1982(昭和57)年に辻村崇浩助教授、1984(昭和59)年に植田規史助教授が加わり、診断病理の体制も整えられていきます。

福西先生は医学部長を2度務め、1991(平成3)年には愛媛大学長に就任しました。1994(平成6)年に退官された後も社会的な活動を続けられ、2006(平成18)年秋の叙勲で瑞宝重光章を受章。2012(平成24)年、80歳で逝去されました。

1991(平成3)年 ── 第2代 植田 規史 教授

福西教授の学長就任にともない、植田規史助教授が第2代教授に就任しました。それまでの化学発癌や染色体レベルの研究に最新の分子生物学的手法を取り入れ、癌関連遺伝子の変化を追う研究へと展開します。

ヒト乳癌細胞株を用いた血管増殖物質の作用機序の解明、ラット乳癌におけるp53遺伝子変異の解析、細胞分化特異抗原の発現調節など、研究の幅が大きく広がった時期です。遺伝子改変動物を用いた個体レベルの病態解析に取り組む体制が整えられたのも、この時期にあたります。

植田教授は第8代医学部長を務め、2008(平成20)年には第54回日本病理学会秋期特別総会の会長として松山で学会を開催しました。また、県内の病理医の勉強会である愛媛病理研究会の代表世話人として会を率い、関連病院の病理診断の充実と、県下の死因究明に大きく貢献されました。2010(平成22)年に定年退官されています。

2010(平成22)年 ── 第3代 北澤 荘平 教授

2010(平成22)年6月、神戸大学大学院より北澤荘平先生が第3代教授として着任しました。着任早々の教室改装から始まり、設備と運営の両面で新しい教室づくりが進められます。

2012(平成24)年には北澤理子先生が准教授として赴任し、翌2013(平成25)年1月に特任教授へ。附属病院病理診断科(病理部)の部長として病院の病理業務を担い、ゲノム医療への取り組みも始まりました。

研究では、遺伝子発現制御とエピジェネティクス(北澤荘平)、破骨細胞分化の分子機構(北澤理子)を柱に、遺伝子改変動物を用いた形態形成の研究も進められました。病理組織標本上でDNAメチル化を可視化する手法の開発は高く評価され、2021(令和3)年に日本組織細胞化学会学会賞(高松賞)を受賞。2017(平成29)年には第58回日本組織細胞化学会総会を東温市で開催しています。

2024(令和6)年3月には、北澤荘平教授が「破骨細胞形成に関わる遺伝子発現調節機構とその異常」により令和6年日本病理学賞を受賞し、日本病理学会総会において宿題報告を行いました。日本病理学賞は1911(明治44)年に始まる歴史ある賞で、愛媛大学からの受賞は、2000(平成12)年のゲノム病理学・能勢眞人教授(現・愛媛大学名誉教授)以来2回目となります。

学部教育にも力が注がれ、独自のテキストを用いた病理学の講義と実習は学生に受け入れられて、赴任以来ベストティーチャー賞を受け続け、2019(令和元)年12月にはベストティーチャー特別賞を受賞しました。医科学研究(基礎配属実習)で講座に参加する学生も多く、学会発表と英文論文を目指す活気ある教室となりました。

2026(令和8)年4月 病理診断学講座へ ── 第4代 藤本 正数 教授

2026(令和8)年4月、基礎系講座であった分子病理学講座と、附属病院病理診断科(病理部)が組織統合され、病理診断学講座として新たに発足しました。第4代教授として、京都大学医学部附属病院病理診断科より藤本正数が着任し、附属病院病理診断科の部長を兼ねています。

半世紀にわたって基礎研究と病理診断の双方を担ってきた歩みを引き継ぎながら、愛媛県における病理診断の質の維持・向上と、病理診断医の育成を使命とする臨床講座として、あらためて出発点に立ったことになります。

歴代教授

初代  福西 亮   1973(昭和48)年 〜 1991(平成3)年
第2代 植田 規史  1991(平成3)年 〜 2010(平成22)年
第3代 北澤 荘平  2010(平成22)年 〜 2026(令和8)年
第4代 藤本 正数  2026(令和8)年 〜 現在

※ 本ページは、愛媛大学医学部創立50周年記念誌に寄稿した「分子病理学講座(病理学第一講座)50年の歩み」をもとに構成しています。