当講座では、病理検体(ホルマリン固定パラフィン包埋組織)から DNA・RNA を抽出し、腫瘍の性質を決める遺伝子の変異や融合遺伝子を解析しています。プライマーの設計から解析、結果の判読までを講座内で行い、形態所見と遺伝子情報を同じ視点で結びつけることを目指しています。

解析手法

・ダイレクトシークエンス(Sanger法、双方向):点変異や小さな欠失・挿入を読みます。
・TAクローニングとコロニーシークエンス:複数のクローンが混在する場合に、それぞれの配列を分けて読みます。
・ARMS-PCR(アレル特異的PCR):特定の変異を高感度に検出します。
・RT-PCR とダイレクトシークエンス:RNA を鋳型として融合遺伝子を解析します。
・in situ genotyping(padlock probe と rolling circle amplification):組織切片上で個々の細胞の遺伝子型を可視化します。
・メチル化解析:特定領域のメチル化状態を調べます。

病理検体はホルマリン固定の過程で DNA や RNA が断片化するため、長い領域は増幅できません。いずれの手法でも、増幅する領域を短く設計することでこれに対応しています。

また、変異が「あるかないか」だけでなく「どのくらいの割合で存在するか」を捉えるため、デジタルPCR(ddPCR)や定量PCR による変異アレル頻度(VAF:検体に含まれる DNA のうち変異をもつものの割合)の定量にも取り組んでいます。

これまでに扱ってきた遺伝子

点変異・小変異
BRAF、KRAS、NRAS、GNAQ、GNA11、CYSLTR2、PLCB4、KIT、PDGFRA、CTNNB1、MYD88、TERT、UBA1

融合遺伝子
FUS::DDIT3

研究・教育への展開

これらの解析は、病理検体を用いた研究にも用いています。

学部学生の医科学研究では、病理検体から DNA を抽出し、サンガーシークエンスで変異の有無を確かめる実習を行っています。

大学院生や学生の研究テーマとしては、VEXAS症候群の病理学的研究、in situ genotyping による組織上の遺伝子型の可視化などに取り組んでいます。