アメリカのスキー場と言えばコロラド・ユタのアメリカンロッキーばかりが注目されていますが、東海岸・ボストン周辺にもスキー場はワンサとあります(トータル40カ所以上)。しかもワールドカップ級も多数。ボストン在住中に是非とも行っていただきたく、筆を取りました。名付けてボストン・ニューイングランド・スキーまる秘情報(独断編)。
東海岸でスキー場の集中しているのは、バーモント・ニューハンプシャー・メインの3州。ボストンから1-4時間のドライブで全てのスキー場にアクセス可能です。各スキー場までの道路の除雪はほぼ完璧で、早朝や深夜以外はスノータイヤの装着すら必要ありません。とにかくドライブでのアクセスをお勧めします。シーズンはスキー場によってちまちですが、近年スノー・メイキング・システムの導入で12月上旬から4月上旬まで滑走可能です。しかし、雪の状態は日本と同じく2月がベストの様です。
<バーモント州>
1.Killington
東海岸の雄とも言うべきスキー・リゾート。ここを先ずあげなければモグリと呼ばれそうです。リフト18、ゴンドラ1、Vertical Drop(トップとベイス間の標高差)3,150 feet(960
m)、Trails(コース)
170は東海岸の他の追従を許しません。その規模はコロラド州のアスペンをしのぐ規模と言えばお分かりいただけるでしょうか。しかし、メイン・ベイスが山の中腹にあるためこのVertical Drop程のロング・ランは楽しめません。おまけにウイークエンドの混みようもニューイングランドで一番。ただっ広い事もあって私は迷子になりました。アイスバーが多いのも減点の対象で総合点87点。ただし一見の価値はあり。アフター・スキーの豪華さ、リフト代の高さどれをとっても一級品。アメリカのスキー・リゾートを味わいたいお金持ちにはお勧めです。貧乏人の私は1回で満足しました。なお週末の混雑を回避したい貴方には、Killingtonから15分のドライブのPico(Vertical
Drop 1,967 feet (600 m)、42 Trails、リフト7)がお勧め。Killingtonの陰に隠れた大穴です。
2.Sugarbush
Vertical Drop 2,600 feet(792
m)、Trails 110はバーモント州第2位。走りに徹したいスキー野郎にとってはロング・ランの完成度はKillington以上と言っても過言では無いでしょう。NorthとSouthという二つのスキー場をニューイングランド一のロング・リフトでつないでいるのがウリですが、残念なことに寒いのでその利用はお勧め出来ません。第一、一日で両方を堪能しようなどと言うのはとうてい無理。どちらか一つにしましょう。Northの方が雪質、ロング・ラン、リフトの快適さから言って数段上。地図の上で広いSouthに騙されてはいけません。行くのなら先ずNorthです。比較的すいている事も加算して総合点83点。しかし、ボストンから3時間のドライブはやや遠いか?
3.Stow
サマー・リゾートとしても名高いStowはスキー・タウンとしても一級品。おしゃれなShopやHotel、B&Bが”Stow Village”を作ります。地元の人たちにとって”Stow”はこの”Stow Village”の事を指し、スキー場はMt.
Mansfield(誤解の無いように)。アフター・スキーにこの白い雪で出来たようなVillageを散策すれば、彼女もコロリとなること請け合い。スキー場Mt. Mansfield(Vertical
Drop 2,360 feet(719 m)、ゴンドラ1、リフト8)はベイスを二つ持ち、車で行き来しなければならないのはマイナス要因ですが、スキー場の作りはいわゆるすり鉢状。どこから滑っても同じベイスに帰ってこられるのは理想的な作りです。予想以上にゲレンデは広く、45 Trailsと聞いてビックリ。もっとありそう。「ボストンから4時間のドライブに日帰りは無理だよ」と彼女を口説きましょう。貴方の下心に84点。なお、Mt. Mansfieldのすぐとなりにはもう一つビッグなエリアSmugglers’ Notch(Vertical
Drop 2,610(796 m)、56 Trails、リフト5)があり、”Stow Village”に滞在する際には是非言ってみましょう(残念なことにMt. Mansfield、Smugglers’
Notch間の道路は冬季閉鎖され、30分の迂回路を使用しなければなりません)。
4.Mt. Snow / Haystack
Mt.Snowを「雪山」と思いの方はまだまだ未熟。筆者の域にはほど遠い。この地方の大地主Walter Schoenknechtが1954年に購入後、Reuben Snowと名付けたことに由来する、ここはまさにスキー・リゾートなのです。新進のスキー天国はニューイングランド第2位の広さをうたい文句に、Vertical drop 1,700 feet (518m)、84
Trails、ゴンドラ2、リフト14。さすがと言わざるを得ない数。唯一難点をあげるとすれば、easy trailsが多すぎること。まさに箱入り娘様の単純さ。ベイスの緩斜面は大きなマイナス要因。がんがんと攻めに興じたいカッ飛び野郎には物足りないかも。やっぱじゃじゃ馬ほど乗りたいもんでんなー。家族連れにぴったりなことから総合点81点。少し甘いか?私、箱入りも好きなもので… (この浮気者!)。隣にあるやや小振りのHaystackは同じリフト券でいける姉妹スキー場。でもお姉さんの方がやっぱええですわ。
5.Sttratton
「どうしてバーモント州のスキー場はどれもこんなにお洒落なの?」とついつい尋ねてしまうのは、そのベイスの充実度に依るのかもしれません。このSttrattonも選に洩れず、すてきなVillage持つスキー・リゾート。こんなすてきなスキー場の、粋なコンドミニアムの暖炉の前で、揺れる炎にパチパチされたなら、彼女から「もう、どうにでもしていいワヨ光線」がブンブン飛んで来ること請け合い。Vertical drop 2,003 feet (610m)、Trails 92、ゴンドラ1、リフト11は他に引けを取りません。難点はその美しい山にあり。山頂から放射状に滑り降りる各Trailは異なったベイスを持ち、やや交通が不便。これがマイナス要因。しかし総合点は82点。私も泊まりがけで行きたかった!
「誰か私をスキーに連れてって!」
6. JayPeak
是非行きたかったスキー場の一つ。ごめんなさい行っていませんのでレポート出来ません。ニューイングランド一の降雪量(平均325 feet)でニューイングランド唯一のパウダー・スノーがウリ。それもそのはず、ここはほとんどカナダ。Vertical Drop 2,153 feet(656 m)、46 Trails、ゴンドラ1、リフト3。ボストンからドライブ4時間は多少遠い? でも行ってみたい。期待度を込めて85点。どなたかお金ください。レポートします。
<ニューハンプシャー州>
1. WatervilleValley
バーモントのスキー・リゾートに比べてコンパクトなリゾートが多いのがニューハンプシャー。そんな中で質実剛健ニューハンプシャーの「おとっつあん」とも言うべきがこのWaterville Valley。数年前ワールドカップが開催された事でも有名です。Vertical Drop 2, 020
feet(616 m)、Trails 48はKillingtonより見劣りするとおっしゃる方はご覧あれ。トップ周辺の広いスロープの開放感は快適の一言です。乗り継ぎ無しでベイスからトップまであがれる高速クワットの快適さも加算要因。ボストンから2時間強のアクセスも私は大好きです。私情を加算して総合点82点。難点をあげるとすると駐車場。長い坂道をエイヤトットと登ってベイスに到着するのは一苦労(シャトル・バスもあるのはありますが…)。スキーの前の準備運動と思ってください。なお、周辺には宿泊施設が思ったほど多くは無い事から、ボストンからの日帰りに徹しましょう。
2.Loon
ボストンのファミリー・ゲレンデとして君臨するのがこのLoon。家族連れやカップルが多いことで有名です。それもそのはず、周囲には洒落た宿泊施設がいっぱい。Souvenir shop(日本語で言うとなんて事はない地元のお土産屋さんの事feet(640m)、Trails 41、リフト7、ゴンドラ1、スノー・メイキングの充実度、おまけに二つのベイスの間にアッと驚く機関車シャトル(恐らく電気仕掛けでしょうが…)を走らすなどとまさにホワイトsweet(なんのこっちゃ?)。ゲレンデを走る機関車を私は初めて見ました。しかしTrailsは比較的イージーでおとなしく、冒険好きの貴方には物足りないかも。Waterville Valleyが「おとう」なら、こちらは優しい「お母さん」。母への哀愁を込めて総合点80 点。ボストンから2時間半、母の胸で滑ってください。
3.Cannon
でた、Cannon。伝説のCannon。1931年開設はニューイングランド一。恐らく アメリカ一、二(?)の古いスキー場がここCannon。ベイスにはなんとニューイングランド・スキー博物館までありその歴史を感じます。心なしかオールド・スキーヤーも多く、彼らはそのオールド・スタイルの板、ブーツ、ポール(ストック)、手袋にlegendを漂わせます。Vertical Drop 2,146 feet(654m)、Trails
38、リフト4、ゴンドラ1。Trailsに山間コースが多く、急斜面、ブッシュ(こぶ)も充実。ただし初心者には少しばかり厳しく、その意味では上級者向きのスキー場と言えるでしょう。オールド・フアンに敬意を表し総合点79点。高速道路のすぐ横に位置し、アクセスも簡単。個人的には大好きなスキー場です。
4.Wildcat
ニューハンプシャーの誇るnational park、その名もWhite Mountain National Forest。 夏も良いけど、冬も良いんですよねー。その中心に忽然と君臨するのがここWildcat。Vertical; Drop 2,100 feet (640m)、Trails
31、ゴンドラ1、リフト5は決して見劣りしません。おまけにそのTrailのwildさもニューハンプシャー(何のこっちゃ?)。ニューハンプシャー州のスキー場って、メイン州やバーモント州と比べ男性的なんですよね。好きですWildcat、78点。しかし、ボストンからやや遠いのが難点か?
5.Sunapee
案外知られていない大穴がここ。ボストンから1時間半のアクセスでこれだけの規模はもうけもの。おまけにここはニューハンプシャー州立のスキー場(CannonとSunapeeだけが州立)のためリフトは他より安め。Vertical
Drop 1,510(460m)、Trails 30、リフト4を中規模と言う貴方、行って御覧あれ。山頂からのLake
Sunapeeの全景はまさに絶景。朝ゆっくりボストンを出発して日帰りスキーを堪能するなら是非ここです。総合点74点。なお景観を楽しむならGunstock [Vertical Drop 1,400 feet(427m)、Trails
39、リフト5]もお勧め。Lake Winnipesaukeeが全貌出来ます。ボストンから1 時間半強ののアクセスはほぼSunapeeと同じと言えるでしょう。
<メイン州>
1.Sunday
River
ボストンのスキー野郎に、そのお勧めのスキー場を尋ねたら、まずKillington。次にあがるのが間違いないSunday River。イヤーとにかく広い、とにかくお洒落。スキーの後、ベイス横にある温水プールに浸かるものなら、まさにアメリカのリゾートを征服した気分になること請け合い。Vertical Drop 2,300 feet (701m)、Trails
95、リフト12(ただしゴンドラは無し)、そしてスノー・メイキング・システムやTrailsの完成度はKillingtonの双璧(いやそれ以上)と言っても過言ではないでしょう。もう一度行きたい、もう一日滞在したい、と思わせること請け合い。総合点85点。唯一の難点は短く終わるTrails(何でロング・ランを作ってくれなかったの?)。これは明らかに設計ミス。これだけの規模のスキー場、やっぱスキーの醍醐味はロング・ランでしょう。ゴンドラで一挙に上がってその後ロング・ラン。作ってよ、ねえ、Sunday River
2.Sugarloaf/USA
何でスキー場の後に「USA」が付くの? と問われても、すいません調査不足です。だって、このスキー場ボストンから最北端に在るんですもん。そうそうレポートのために行けませんよ。ここはほとんどカナダとの国境。どうしてこんな所にこんな馬鹿でかいスキー場が…と思うような巨大な山。Vertical Drop 2,837 feet (864m)、94 Trails、ゴンドラ1、リフト11。イヤーこれはすごい。この秘境(?)に、私の求めたロング・ランがついに在りました。Sugarloafの夕日に思わず涙したのは、このレポートを閉じるに最適な場所だったから、では(残念ながら)なく、その日車のラジエータが凍り付き、あと一泊を余儀なくされたためでした。スキー場では最低一日一回必ずエンジンをかけること、心しましょう。ラジエータをも凍らすその寒さに84点。でももう一度行きたい!誰か、連れってって!
その他今回は記載しませんでしたが、Attitash & Bear Peak [ニューハンプシャー州、Vertical Drop 1,750 feet(533m)、40 Trails、”Attitash”ってIndian語で”ブルーベリー”のことなんて知ってました?]、Okemo Mt. [バーモント州、Vertical Drop 2,150 feet(655m、72 Trails)]も是非行ってみたいスキー場です。
それではマサチューセッツ州のスキー・リゾートは? ボストン在住の貴方のその御質問に最後にお答えします。あります、あります。Vertical Drop 1,000 feetを越えるスキー場。Berkshire East、Brodie Mt.、Jiminy Peakそして貴方の良く知っているWachusett。しかし残念なことにどれも小粒。同じリフト代を払うなら、私はボストンから近いWaterville valleyやSunapeeを選びます。マサチューセッツ州の観光案内で働いている皆さん、御免なさい。
ニューイングランドのスキー場はとにかく寒さが厳しいことで有名です。十分な防寒具を用意することをお勧めします。
某スキー雑誌連載中