トラムセットという薬の特徴
有効性
トラムセットはアセトアミノフェン+モノアミン再取り込み抑制+mオピオイドレセプター作動薬の3つの鎮痛効果を有する薬剤で、神経痛の有無にかかわらず、広く整形外科領域(運動器)の痛みに有効です。
使用に適さないケース
心因性要素の大きく関与する疼痛には効きません。
抗炎症作用は有りませんので、急性期の炎症にはNSAIDsが第一選択です。
安全性
NSAIDsにみられるような生命に危険を及ぼすような重度の副作用はありません。
習慣性(中毒)になることは無く、中断する際にも禁断症状が出ることはありません。

特にお勧めの使用方法としては
NSAIDsが無効な慢性の疼痛(強い鎮痛効果が期待できます)
・以下の理由によりNSAIDsの投与を避けたい患者
a) 消化管障害が懸念される
b) 心臓血管系の障害(心不全やバイパス術後など)
c) 腎障害が懸念される
高齢者ではa)b)c)ともにリスクが高く、NSAIDsの投与は慎重にならざるを得ません。特に抗血小板剤を内服されている患者はNSAIDs潰瘍は致命的になります。
注:現時点ではトラムセット使用に際しては疼痛、持続痛、難治性疼痛のいずれかの病名が必要です。


平成24年8月1日以後、トラムセットは長期処方できるようになります。NSAIDsに比較し、命に関わる副作用の少ないこのような薬をベースに、炎症急性期のみNSAIDsを追加するというのが最も合理的な痛み止めの使い方ではないかと思います。



副作用対策
1)説明で対処する
トラムセット内服に伴う嘔気で、中断してしまうケースがあります。問題は患者さん今まで経験したことのない嘔気が起こったときに不安感が生じることです。「腰がこんなに痛いのに吐き気まで起こってきて私はどうなるのだろうか・・・」という心理状態になり薬を拒否するという事態を招きます。
吐き気を患者さんに怖がらせないようにすることが処方のポイントと思います。
説明の具体例
「この薬を飲むと、半分ぐらいの人に吐き気が起こります。しかし3日間、吐き気止めを飲むと10人に1人だけになります。
もしあなたがその10人に1人でも、心配ありません。2-3日で体が慣れますので、その後は起こりません。
吐き気が起こっても怖がらずに体が慣れるまで2-3日我慢してください。」


2)予防薬で対処する
トラムセット使用の際のお勧めの補助薬
悪心・嘔吐:プリンペラン(5mg) 3-4錠、長期に出す必要はありません。3日間の処方でたいていOKです。
必ず「胃炎」を病名につけましょう。
便秘:プルゼニド1錠:
必ず「便秘症」を病名につけましょう


3)2錠で開始する
開始を1日2錠からにすると、副作用の頻度はかなり小さくなります。
私は2錠開始の場合には、現在特に説明を行っていません。
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