愛媛大学  大学院・医学系研究科   寄生病原体学分野  大学院生  博士課程ガイド2013 

大学院医学系研究科 博士課程 ガイド
研究キーワード :: 研究内容及び将来の展望 :: 講義テーマ

(1)研究キーワード
マラリア(Malaria)
感染機構(Infection mechanism)
遺伝子クローニング(Gene cloning)
ジーンターゲティング(Gene Targetting)
ワクチン開発(Vaccine development)



(2)研究概要

 鳥居本美 教授
 マラリアは、蚊の吸血に伴いマラリア原虫が伝播されることで引き起こされる寄生虫症です。マラリア原虫は、蚊の消化管内で有性生殖を行い、その後消化管壁を通り抜けて、次の感染型へと発育します。消化管内での原虫発育を阻止することで、マラリアの伝播を抑制しようとするのが「伝搬阻止ワクチン」の試みです。私たちは、候補抗原タンパク質の探索を行うことで、将来的に伝搬阻止ワクチン開発へと繋げることを目指して研究しています。

 石野智子 准教授
 マラリアは蚊によって媒介されますが、蚊の唾液腺内に集積したマラリア原虫(スポロゾイト)がどのように人の肝細胞を認識し細胞に侵入できるのか、分子レベルで解明することを目的にしています。げっ歯類に感染するネズミマラリア原虫を用いて、遺伝子改変原虫を作出し解析することで、分泌型タンパク質等の機能解析を行います。将来的には、マラリア原虫の標的細胞侵入機構の全貌を明らかにするために研究を行っています。


1)マラリア原虫スポロゾイトのほ乳類感染の分子基盤の解明

 マラリア感染蚊の吸血に伴いほ乳類皮内にスポロゾイトが注入されることが、感染の最初のステップということができます。このスポロゾイトは皮内を活発に動き回った後血流にのって肝臓へと到達します。そこで、肝細胞に寄生した後、次の赤血球に感染できるステージへと発育します。これらの寄生の分子機構を解明することは、マラリア原虫の狡猾な寄生戦略が理解できるのみならず、感染そのものを阻止するような予防法の開発へと繋がる可能性を秘めています。 この問題にアプローチするために、私たちはネズミマラリア原虫をモデルとして用いて、特に遺伝し欠損原虫作出など、分子生物学的手法を駆使した解析を行っています。

2)マラリア原虫の宿主細胞侵入機構の細胞生物学的解析

 マラリア原虫が肝細胞や赤血球などに侵入する際,標的細胞表面の特異的糖蛋白を認識しますが,この侵入の分子機構を明らかにすることがマラリア感染防御にとって重要であると考え,宿主細胞表面の標的蛋白および虫体側のレセプターや侵入に特異的な小器官の機能について解析しています。特に,赤血球への感染型であるメロゾイトの先端部に位置するロプトリーやマイクロネームと呼ばれる小器官に着目し,これらの小器官に局在する蛋白に焦点を当て,蛋白をコードする遺伝子のクローニングを行っています。また、これらの蛋白の機能解析を目的として、遺伝子ノックアウト原虫、遺伝子の一部改変原虫および蛍光蛋白との融合蛋白の作成など、ジーンターゲティングの手技を駆使した研究を行っています。

3)伝搬阻止あるいは発症阻止を目指したワクチン開発に向けての基礎研究

 当研究室において、マラリアを媒介する蚊の体内でみられるオーキネートというステージの虫体表面に特異的に発現する分子量25kDa,28kDaの蛋白が,蚊によるマラリアの伝搬阻止に関与することを明らかにしました。特に25kDaの表面蛋白は抗体の作用のみで伝搬が阻害されることから有力なワクチン候補と考えられます。これらの表面蛋白の遺伝子の塩基配列の解析を行い,三日熱マラリア原虫の25kDa,28kDaの蛋白の遺伝子構造を明らかにしました。この結果を基に遺伝子組み換え技術を用いてこの蛋白の大量発現をアメリカ合衆国のNIHと共同して行い,実験室株を用いた実験でワクチン効果があることを明らかにしました。マラリアワクチン開発では流行地における原虫の抗原変異の存在が重要な障害となっています。そこで、流行地であるタイ国の三日熱マラリア患者から採取した血液を材料として、これと実験動物で作成した抗血清とを人工膜吸血装置の中で混合して媒介蚊に吸血させたところ、流行地の三日熱マラリア原虫においてもこの伝搬阻止ワクチンが有効に作用する可能性が示唆されました。現在このワクチンの有効性を高めるための研究と同時に、他の伝搬阻止ワクチン候補抗原の検討を開始しています。

4)将来の展望

 我が国では土壌媒介性の寄生虫症は激減しましたが,最近のめざましい経済発展によって国際交流の機会が増し,熱帯地方などからの輸入感染症が増加しています。また,国際社会からは開発途上国に対する我が国の国際貢献への期待が高まっています。これに応えるためには,我が国においても熱帯医学や国際保健学を拡充し,開発途上国で問題となっている疾患の研究を進めると同時に,これらの国々の研究者の養成を援助する必要があると思われます。その中心となるのが寄生虫疾患を主とする熱帯病です。寄生虫学教室ではこのような社会的要請に応えられるよう講座の研究体制を整備すると共に,国内やNIHなどの海外の研究機関との共同研究を積極的に行っています。


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