Research Summary

研究内容

加齢に伴って生じる病態が及ぼす全身性疾患への影響、逆に老化に与えるトータルライフコースとしての胎児期環境、さらにアレルギー・炎症・免疫に関連した研究をを進めています。

①筋肉量低下(サルコペニア)と免疫力低下との関連について

②マスト細胞における脱顆粒機構の解明:薬物アレルギーの原因究明

③水素の持つ抗老化作用

④自然免疫機構におけるマスト細胞役割の解明:COVID-19感染によるマスト細胞の役割検討及び新規治療標的の探索

⑤老年者の薬物効果に関する検討

1.筋肉量低下(サルコペニア)と免疫力低下との関連について 

サルコペニア動物モデルを用いて、免疫細胞の機能に与える影響や自己免疫疾患発症との関連性を評価する。

寝たきりなどフレイルの高齢者では肺炎などが起こりやすいことから、骨格筋量の減少は免疫系へ影響を与えていることが示唆される。そこで、マウス坐骨神経離断モデルを作成し、筋肉量の低下の変化についてイメージング手法などを用いて定量化し、このサルコペニア動物モデルにおいて、免疫細胞の分化状況や炎症因子の遊離を測定し、免疫能の変化を検討している。さらに、このモデル動物を用いて、がん免疫との関係も分析を進める。またサルコペニアの予防法についての研究も進めている。

2.マスト細胞における脱顆粒機構の解明:薬物アレルギーの原因究明と新規メカニズムの検討

マスト細胞モデルに抗アレルギー薬を投与して脱顆粒が抑制されるのかについて、投与時間や濃度を変化させて観察する。

また、オーファン受容体であるMas-related Gタンパク質共役型受容体ファミリーでIgE非依存性ヒスタミン遊離作用に関連するMRGPRX2受容体に着目した基礎的、臨床的検討を進めている。

薬剤の中には投与期間や濃度により本来の作用とは異なる作用を示す薬剤も多い。そこで、マスト細胞における脱顆粒機構に着目して、抗アレルギー薬の投与により脱顆粒機構がどのように変化するかについて検討する。粘膜型マスト細胞であるラット好塩基球性白血病細胞(RBL-2H3)を用いて各種薬剤が誘発するアナフィラキシー様反応を解析し、薬剤アナフィラキシー反応を実験動物にて再現することにより、発症原因の究明を行う。また、MRGPRX2受容体発現培養マスト細胞におけるIgE非依存性ヒスタミン遊離反応を測定し、アナフィラキシー様反応の機序を明らかにする。

3.水素の持つ抗老化作用

 水素には強力な抗酸化作用から細胞死や細胞老化を防ぐ作用が期待されている。我々はこれまでに水素投与チャンバーを用いてマウスにおいて、血管リモデリングの抑制効果や紫外線照射による皮膚老化の抑制効果を報告してきた。さらにその詳しいメカニズムについて検討中である。

 高齢者では骨格筋量の低下(サルコペニア)による生活の質の低下や全身症状への影響が危惧されています。サルコペニアはフレイルの一つとして、健康寿命の低下に関与し、適切な介入による予防が元気な高齢者を増やし、超高齢社会の日本においては求められています。