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2025.06.16 研究成果

レムナントコレステロールと代謝異常を伴う脂肪肝の関連

研究成果のポイント

  • 血清レムナントコレステロール(Rem-C)値は、肝脂肪蓄積・風船様変性など代謝異常を伴う脂肪肝(MASLD)の活動性スコア(NAS)と有意に関連し、MASLDの活動性を反映する指標となりうる。
  • この関連は特に男性において顕著であり、性差による影響が示唆された。
  • 一方、Rem-Cと線維化ステージとの関連は認められず、また計算式によるRem-C値では組織学的所見との関連はみられなかったため、実測値の重要性が示された。

 

研究概要

本研究では、肝生検により診断された222例の代謝異常を伴う脂肪肝(MASLD)患者を対象に、酵素法で測定した血清レムナントコレステロール(Rem-C)値と肝組織所見との関連を検討しました。その結果、Rem-C値は肝脂肪化、炎症、風船様変性といったMASLDの活動性スコア(NAS)の構成要素と有意に関連し、特に男性において高Rem-C値は高NASと関連していました。一方で、線維化ステージとは有意な関連を認めませんでした。これらの結果から、血清Rem-C値の上昇はMASLDの病態活動性を反映し、特に活動性の高い脂肪肝炎の早期把握に有用な指標となる可能性が示唆されました。

 

キーワード

1.レムナントコレステロール  2.代謝機能障害関連脂肪性肝疾患  3.代謝機能障害関連脂肪肝炎  4.組織学的活動性

 

はじめに:

脂肪肝は、生活習慣の変化により世界中で増えている病気です。中でも、代謝異常を伴う脂肪肝(MASLD)は、進行すると肝炎(MASH)や肝硬変だけでなく、心臓病のリスクも高めます。これまで、レムナントコレステロール(Rem-C)という血中の脂質が心血管病と関係していることが知られていましたが、MASLDとの関係ははっきりしていませんでした。そこで本研究では、酵素法で測定したRem-Cと肝臓の状態(組織学的変化)との関係を調べました。

方法:

肝生検によりMASLDと診断された222人を対象に、血清Rem-C値を酵素法で測定しました。その上で、肝臓の脂肪のたまり具合や炎症、肝細胞の障害の程度(NAFLD活動性スコア=NAS)や線維化の進行度と、Rem-Cとの関連を統計的に解析しました。性別による違いや、インスリン抵抗性などの要因も考慮して評価しました。

結果:

Rem-C値が高い人では、肝臓の脂肪沈着、炎症、肝細胞の風船様変性が強く、NASが高い傾向がみられました。特に男性においてこの傾向が顕著でした。一方、Rem-C値と肝線維化の進行度との間には明確な関連はありませんでした。また、一般的に使われる計算式によるRem-C値では、肝臓の状態との関連はみられませんでした。

考察:

Rem-Cの実測値は、MASLDの活動性を反映する新たな血液マーカーになる可能性があります。特に男性において、高いRem-C値は活動性の高いMASHの存在を示すサインかもしれません。今後、Rem-Cを指標とすることで、脂肪肝の悪化や心臓病リスクを早期に捉えられる可能性があり、治療戦略の新たな手がかりとなることが期待されます。

 

参考URL:Association Between Serum Remnant Cholesterol Level and Metabolic Dysfunction-associated Steatotic Liver Histology | The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism | Oxford Academic.

 

図表等

 

論文情報

Association Between Serum Remnant Cholesterol Level and Metabolic Dysfunction-associated Steatotic Liver Histology

Teruki Miyake, Shinya Furukawa, Bunzo Matsuura, Osamu Yoshida, Ayumi Kanamoto, Masumi Miyazaki, Akihito Shiomi, Hironobu Nakaguchi, Yuki Okazaki, Yoshiko Nakamura, Yusuke Imai, Mitsuhito Koizumi, Takao Watanabe, Yasunori Yamamoto, Yohei Koizumi, Yoshio Tokumoto, Masashi Hirooka, Teru Kumagi, Masanori Abe, Yoichi Hiasa.

The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 110, e2064–e2070, doi: 10.1210/clinem/dgae597, 2025 (May 19).

 

助成金等

JSPS科研費 22K11804

 

問い合わせ先

氏名:三宅 映己

電話:089-960-5308

E-mail:miyake.teruki.mg@ehime-u.ac.jp

所属・役職:地域生活習慣病・内分泌学講座 准教授