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2026.02.18 研究成果

血糖正常の一般住民において将来高率(約11倍)に糖尿病を発症する群を特定

~糖負荷後1時間血糖値と年齢による将来の糖尿病発症予測~

 

研究成果のポイント

  • 血糖正常の一般住民において、75gブドウ糖負荷後1時間血糖値が5年後の糖尿病発症予測に最も優れた指標であることを解明
  • 現在血糖正常であっても、1時間血糖値149 mg/dL以上かつ57歳以上の条件が重なると、5年後に糖尿病を発症する危険性が11.1倍に上昇

 

研究概要

本研究は、愛媛県東温市の一般住民を対象とした「東温ゲノムスタディ」において、耐糖能正常者1,008名を5年間追跡した研究です。健康診断で「空腹時の血糖値」や「HbA1c」が正常範囲内であっても、5年以内に「糖尿病予備軍」や「糖尿病」へ進行するリスクが非常に高いグループが隠れていることを報告しました。75g経口ブドウ糖負荷試験において、ブドウ糖を飲んで「1時間後」の血糖値が、将来の糖尿病発症を予測する上で最も優れた指標であることを示しました。特に加齢による影響との相互作用を明らかにし、早期介入が必要な高リスク群を特定しました。

 

キーワード

①糖負荷後1時間血糖値
②正常耐糖能
③糖尿病発症予測
④加齢
東温ゲノムスタディ

 

1.背景

糖尿病予備軍の早期発見は、糖尿病や心血管疾患の発症予防に極めて重要です。しかし、従来の空腹時血糖やHbA1cによるスクリーニングでは、正常範囲にある人々の中に潜む将来の糖尿病リスクを十分に捉えられないという課題がありました。

2.方法

愛媛県東温市の一般住民を対象とした「東温ゲノムスタディ」に参加した耐糖能正常者1,008名を対象に、ベースラインと5年後に75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を実施しました。

3.結果

通常、75gOGTTでは、ブドウ糖を飲んだ「2時間後」の値を重視します。しかし、今回の5年間の追跡調査により、ブドウ糖を飲んで「1時間後」の血糖値が、将来の糖尿病発症を予測する上で最も優れた指標であることが明らかになりました。さらに、【1時間血糖149 mg/dL以上】と【年齢57歳以上】が組み合わさったグループは、条件に当てはまらないグループと比較して、5年以内に糖尿病になるリスクが著しく高い(オッズ比 11.1)ことが示されました。

4.メカニズム

1時間血糖の上昇には、インスリン初期分泌に関わるCDKAL1やCDKN2A/2B遺伝子の変異が関与していることが分かりました。遺伝的にインスリン分泌能が弱い人が、57歳前後から加齢によるインスリン抵抗性の悪化が加わり、耐糖能が急速に低下するというメカニズムが考えられます。

5.今後の展望

75gOGTTは検査時間や費用の面から、日常診療で頻回に行うことは困難ですが、今後スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスの精度が向上すれば、食後1時間の血糖をモニタリングすることで、将来の糖尿病発症リスクをより簡便に予測できる可能性があります。

 

図表等

画像1:正常耐糖能者における5年後の糖尿病発症の予測因子

 

参考URL

https://DOI.org/10.1016/j.diabres.2025.113079

 

論文情報

Simultaneous assessment of one-hour plasma glucose levels and age as a potential predictor of glucose intolerance development in individuals with normal glucose tolerance.

Misaki Takakado, Yasuharu Tabara, Shota Inoue, Toshimi Hadate, Ryoichi Kawamura, Koutatsu Maruyama, Isao Saito, Jun Ohashi, Haruhiko Osawa, Yasunori Takata.

Diabetes Res Clin Pract 232:113079, 2026. DOI: 10.1016/j.diabres.2025.113079

 

助成金等

JSPS 科研費 23K14714

 

問い合わせ先

氏名:高門 美沙季

電話:089-960-5647

E-mail: takakado.misaki.vl@ehime-u.ac.jp

所属・役職:糖尿病内科・臨床検査医学(検査部) 助教