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2017年11月04日

第11回 パーキンソン病・運動障害疾患コングレス(MDSJ)

2017年10月26日-28日に東京で開催されていた第11回パーキンソン病・運動障害疾患コングレス(MDSJ)に、
多田聡先生、研修医の廣瀬未優先生とともに参加しました。
MDSJは、東京と京都にて1年交代で毎年開催されている学会で、私は去年の京都に引き続いての参加となります。
出発の数日前まで巨大で大型の台風21号が日本列島に上陸しており、飛行機は多くの便が欠航しておりましたが、
無事学会前日の25日夜に東京へたどり着くことができました。

1日目(10月26日)は、多田先生が、
『ドパミントランスポーターシンチグラフィ(DaTSPECT)におけるDaTQUANTの有用性の検討』について発表されました。
多田先生は研修医時代からDaTSPECT、MIBG心筋シンチといった神経画像診断に深く従事されており、
今回はDaTSPECTにおける解析ソフトウェアであるDaTViewとDaTQUANTの比較を中心とした発表を行いました。
パーキンソン病およびパーキンソン症候群の診断・評価おいて、DATViewにおけるSBR (Specific Binding ratio) が広く用いられていますが、基準線を目視により設定することから誤差が生じやすいといわれており、また視覚的な集積低下とSBR値に乖離がみられる場合を少なからず認めるといった問題が取り上げられております。それに対しDaTQUANTでは自動処理にて解析が行われることから、SUR (Specific Uptake Ratio) 値は高い再現性を有するといわれており、また線条体を3部位に細分化して評価を行うことが可能であり、精度の高い解析が期待できるとされております。一般にパーキンソン病において被殻後方部から集積低下を認めるといわれておりますが、今回多田先生の発表において、パーキンソン病群と疾患コントロール群で比較を行ったところ、被殻前方の集積低下が最も陽性尤度比が高いとの結果でありました。座長やフロアの先生方もこの点に興味を持たれた様子であり、発症早期での検討や発症年数での解析はどうかとの声をいただいておりました。
DaTMan(DaTSPECTに関して研究する人)として、多田先生の今後の活躍を乞うご期待です。

2日目(10月27日)は、宮上が、
『パーキンソン病におけるlevodopa血中濃度と上部消化管構造の検討』 について発表を行いました。
今回は、特異な上部消化管構造をもつ3症例におけるlevodopa血中濃度に関して発表させていただきました。私の発表がセッションの最後であったのですが、終了後も何人かの先生方に質問をいただきました。また、日本医科大学の永山先生が座長をされていたのですが、胃幽門部~空腸上部の外科的切除を行う前後でlevodopa血中濃度を比較した症例を報告されており(Case Rep Neurol 2015;7:181-185)、私も読ませていただいていたのですが、報告の中で手術前に2回測定したlevodopa血中動態が非常に再現性の高い結果であったことが記憶に残っており、試験の方法等に関して質問させていただきました。永山先生からは、世界的にみてもlevodopa血中動態を研究している施設はさほど多くなく、実際自身が国際学会で発表した際にも非常に注目を集めたと教わりました。当科において薬物動態や薬物相互作用といった臨床薬理が一つの特徴であることから、今後も引き続き血中動態についての研究を続けていきたいと思います。

3日目(10月28日)は、廣瀬先生が、
『片側性の舞踏運動を呈した無セルロプラスミン血症の一例』についての発表を行いました。
無セルロプラスミンの症例で、片側の尾状核が萎縮し、片側性の不随意運動(chorea)を呈しており、代謝性疾患はほとんど左右差を認めないことが多いとされている中、画像上も臨床症状上も著明な左右差を認めた希少な症例でありました。糖尿病性舞踏病との鑑別が重要なキーポイントの一つでありましたが、頭部MRI画像所見や過去の症例報告から無セルロプラスミン血症に伴うchoreaが疑わしいと説明していました。非常に貴重な症例であり、座長の先生からも対側の尾状核の萎縮や症状の出現について今後の経過報告を期待するとの言葉をいただいておりました。
廣瀬先生は研修医1年目でありますが、同じセッションの他の先生にも引けを取らない、とても研修医1年目とは思えない堂々たる発表ぶりで、質疑応答もそつなくこなしておりました。私が研修医1年目のときは狼狽して、言葉にならない言葉を発していたような気がします。非常に将来有望な方であり、これからの活躍に期待したいと思います。

 

今回、私たちは各々の発表日の前日に、ホテルの部屋にて、ボトムハンガーにポスターをはさみ、カーテンレールに引っ掛け、来る翌日のポスター発表に向けて、実際の発表の流れを模倣しながら予行を行いました(差し棒は靴ベラで代用)。可能な限り想定質問も考え、特に最終日の廣瀬先生の予行の際には皆で質問、回答に関して対策を練りこみました。

「ボトムハンガー」「カーテンレール」「靴ベラ」、予行には最適な組み合わせでありました。

ぜひみなさんも予行の際には真似してみてください!