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2017.12.12 活動報告

平成28年度 地域医療再生学(寄附講座)活動報告書

平成29年3月
愛媛大学大学院医学系研究科 地域医療再生学講座

地域医療再生学(寄附講座)の平成28年度活動報告

久門良明(地域医療再生学講座主任教授)

 

当講座は、今年度より愛媛県から四国中央市に引き継がれました。新たな1年間の活動を振り返ります。スタッフは4名で、脳神経外科2名(私と松本 調助教)と整形外科1名(間島直彦教授)はHITO病院、小児科1名(元木崇裕助教)は四国中央病院のサテライトセンター(SC)の勤務です。

当講座には3つのミッション(M)があります。M1は「現場のニーズに対応できる医療支援システムの構築」ですが、HITO病院ではセンター構想で方向付けられました。脳卒中センター(平成26年4月)並びに人工関節センター(本年度)が開設され、関連診療科や診療部がチームとして診療に当たっています。また高性能の画像診断機器や手術支援システムが導入され、SCでも大学と同等の高度な医療を行なえるようになりました。これはSCでの教育・診療・研究、並びに地域医療への貢献につながっています。

脳卒中では循環型の地域病診連携を目標にして、これまでの連携事業を発展させています。宇摩地区脳卒中地域連携パス検討会が活動の中心で、急性期病院・回復期リハビリ病院・医師会代表・介護支援専門員の医療介護関係者と、保健所・市役所の行政関係者とで構成され、年3回の会合を開催しました。そして介護支援専門員との連携強化のために、新たに年1回の意見交換会や研修会での講演を行っています。また小児科では、東予東部小児二次救急システムを構築し、新居浜急患センター、県立新居浜病院でも診療を行っています。

M2は「地域医療に貢献する医学生や医師教育システムの構築」です。関係大学の医学生教育として、介護実習、社会学実習、地域医療実習、クリニカルクラークシップに携わっています。HITO病院では3名の初期研修医が現在研修中で、希望に応じたプログラムに沿ってスタッフ全員による教育や指導が行なわれています。地域医療を組み込んだ体験学習や医療研修に特徴があり、急性期医療に加えて回復期リハビリや維持期医療についてもグループ施設内で学ぶことができます。消防防災センターや保健所との関わりも知ることができ、地域医療の重要性の理解に結びついています。また関節疾患や心房細動に関する登録研究を地域医師と協力して行っています。

M3は「研究成果の普及や啓発活動」です。四国中央市の行政・医療関係者を対象にした講座活動報告会(29年2月3日、四国中央市保健センター)と市民啓発目的の市民フォーラム(9月6日、HITO病院)を今年度も開催しました。その中では脳卒中、運動器疾患、小児疾患などの啓蒙とSCの役割を伝えました。また、今年度から四国中央市主催の「健康まつり」に、参加致しました。さらに住民の健康寿命を延ばす目的で、整形外科では運動器症候群(ロコモーティブシンドローム)予防のために市民向けにロコモ教室を開催し、平衡感覚や筋力回復を目指したロコモ体操を指導して転倒による骨折防止に努めました。また脳神経外科では脳卒中予防を目的に、毎年5月末の脳卒中予防週間に合わせて市内ショッピングセンター内で脳卒中相談会開催に加えて、電話による脳卒中市民相談も継続しています。

なお、脳神経外科ではその他に、日本脳卒中協会愛媛県支部の活動や全国学会の日本術中画像情報学会第16回大会を開催しました。

このように地域医療再生のためには大学とSCとの連携は有効です。また、行政参画による地域医療連携システム構築や市民啓蒙は、今後の地域包括ケア時代に向けて必須と思われます。そして地域医療を担う医師養成のためには、医学教育や研修システムの改正とともに、初期研修後も地域医療に携わる医師確保には専門医制度の地域医療への配慮が不可欠と考えられました。

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