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2016.03.16 活動報告

平成25年度 地域医療再生学講座(寄附講座)活動報告書

 平成26年3月
愛媛大学大学院医学系研究科 地域医療再生学講座

地域医療再生学(寄附)講座の平成25年度の1年間

畠山隆雄(地域医療再生学講座主任教授)

平成22年4月に私どもの地域医療再生学(寄附)講座が開設され・4年が経ちました。平成25年度の当講座のこの1年を振り返るとともに・当初予定していた当講座の開設期間4年間が終了しましたので・その総括も行いたいと思います。

国は地域の医師不足・救急医療等の課題等の対応として・平成21から25年度までの5年間の「地域医療再生交付金事業」として・各都道府県内にある2ヶ所の2次医療圏に1ヶ所25億円ずつの資金を交付しました。愛媛県は医師不足で救急医療等の問題を抱えていた八幡浜・大洲圏域と・県立三島病院の民間移譲に伴う地域医療の混乱が予想された宇摩圏域(四国中央市)を交付地域として選定しました。その後・県は両地域の医療支援等の目的で・受けた交付金の一部を愛媛大学に寄附しました。その資金をもとに・平成22年(2010年)4月に八幡浜・大洲圏域を担当する「地域救急医療学」と宇摩圏域担当の「地域医療再生学」の2つの寄附講座の開設と地域医療支援センター建設(2011年8月完成)を行いました。

この地域医療再生学(寄附)講座は以上の目的で開設されましたが・当初の教員メンバーは今川 弘教授(心臓血管外科)・篠原直樹助教(脳神経外科)・村尾紀久子助教(小児科)・そして私畠山隆雄教授(脳神経外科)4名の臨床系医師で構成されました。その後・小児科医師が平成23年4月に村尾助教から中野直子助教・24年4月に中野直子助教から本田美里助教・24年11月から西村幸士助教にバトンタッチされていきました。四国中央市役所にある「地域サテライトセンター」を通じて公立学校共済組合四国中央病院に小児科医師と社会医療法人HITO病院(旧石川病院)に残り3名(両病院にも愛媛大学「地域サテライトセンター」があります)の医師を派遣し・専門科の業務と救急支援にあたっています。事務補助員の本田聖子さんは・当講座の事務業務を行うのみならず・愛媛大学医学部内に事務補助員がいない他の地域医療支援の講座の事務も一部肩代わりしています。

教育においては・愛媛大学から平成22年5月より医学生5年生のHITO病院(旧石川病院)での選択型臨床実習が・さらに1年生の介護体験の実習が同院において24年度より開始されました。また・地域医療支援センターを介して・愛媛大学附属病院とのたすき掛け方式で・平成24・25年度に1名ずつの初期研修医の研修もHITO病院にて行われました。

平成23年8月より毎年一回開催されている愛媛大学医学部附属病院地域医療支援センター主催の第3回地域医療再生セミナーが11月12日に行われました。愛媛県・県内各自治体・関連病院および本学から多くの関係者が出席されました。愛媛大学医学部地域支援の4つ講座による講演があり・当講座から今川 弘教授による「地域医療のミッション」・私の「三方三得の地域医療再生をめざして」の講演が行われました。

平成23年11月から始まった愛媛県の地域診療機能強化事業により・宇摩圏域では「心筋梗塞患者における救急隊-病院連携体制の構築」と「脳卒中地域連携・相談機能の強化」の各事業が展開されました。前者の事業は・二次救急病院と四国中央消防署の支援で・急性心筋梗塞患者について・救急車から二次救急病院に心電図データを伝送し・専門医が治療方針や搬送先を決定することにより・治療開始までの時間短縮を図るための・救急隊と病院の連携体制を強化するものです。運用開始が24年3月から行い・25年8月末の時点で109件の心電図伝送が行われました。26年度からは・四国中央市(四国中央消防署)がこれまでの事務を引き継ぎます。後者の脳卒中地域連携事業は・四国中央保健所・四国中央市の支援を受けて・脳卒中患者について・急性期から維持期までの地域医療連携パスの構築・脳卒中地域連携相談センターの設置・および維持期での医療・介護関係者や患者・家族が患者情報を共有するための患者管理手帳の作成・運用を行っています。24年9月より地域連携パスの運用が開始され・26月1月末までに6件の連携パスが行われました。退院後の脳卒中の維持期患者に対して・130件(26年1月末)の脳卒中患者管理手帳「脳卒中ノート」を作成しました。同事業では・事務局の場所が宇摩医師会内からHITO病院内の愛媛大学サテライトセンターに移動しますが・これまでと同様・地域医療再生学講座が担当し業務内容を継続していきます。

平成26年度より・当講座への県からの寄附がさらに2年間延長されることになりました。当初の開設期間4年間をもって今川・畠山両教授が退官することになりました。後任には・久門良明教授・間島直彦准教授が担当いたします。これまでの診療・教育等の継続とともに・両教員の能力と経験を活かした診療・事業等の展開が期待されます。

宇摩圏域である四国中央市は・愛媛県の6医療圏中で・単位人口当たり医師・看護師および病床の数が最も低くなっています。平成21年度に宇摩圏域の地域医療再生計画にも挙げられたように・二次救急病院に過重な負担を掛けず・少ない医療資源を有効に活用するためには・不要・不急の時間外受診の抑制や地域における医療施設の機能分担などが必要とされています。これは・地域とともにある当講座が開設から4年間変わらず目指してきたミッションでもあります。22年度の宇摩圏域外への救急搬送数が全救急搬送数中20%であったのが・25年度には18%に低下し・軽度ですが・住民・医師・救急隊等への圏域外搬送の負担軽減につながっています。さらに・宇摩医師会開業医担当による1次急患センターでの平日夜間の一次救急患者数は・21年度では1日あたり平均4.7名であったのが・25年度には・6.3名まで増加しています。これによって・二次救急病院における医師の夜間診療の負担軽減に寄与しています。しかし・この4年間で同圏域の医師数の増加はなく・まだまだ厳しい状態が続いています。住民がより安心して地域で生活を送ることができるためには・今後とも県・四国中央市・地域医療機関・そして愛媛大学が手を携えて様々な課題の改善に取り組む必要があると思います。