研究内容

RNA結合タンパク質Acin1の生理機能の解析

遺伝子の発現は転写レベルだけでなく、スプライシング、mRNAの化学修飾、核外輸送、安定性の調節、翻訳制御など、多段階にわたる転写後調節によって精密に制御されている。これらの過程には多種多様なRNA結合タンパク質が関与している。なかでも選択的スプライシング(AS)は特に重要な役割を担い、単一の遺伝子から構造・細胞内局在・発現量・生物学的機能の異なる複数のタンパク質アイソフォームを生み出す主要な機構である。ヒト遺伝子の90%以上がその対象となり、ASの破綻は細胞・組織・個体レベルでの重篤な機能異常や疾患を引き起こしうるため、その制御機構の解明はきわめて重要な課題である。

我々は、アポトーシス時のクロマチン凝縮誘導因子として同定されたAcin1(Acinus)が、RNA結合タンパク質としても機能する点に着目している。Acin1コンディショナルノックアウトマウスを作製し、各組織におけるAcin1の生体高次機能の解析を進めている(Aoto M et al., Sci Rep. 2025)。さらに、新規Acin1結合タンパク質の探索を通じて、RNAプロセシングにおけるAcin1の生化学的役割の全容解明を目指している。

 

神経細胞の分化や脳の発生機序の解明

神経幹細胞は自己複製するとともに、脳を構成する神経細胞や各種グリア細胞に分化をします。この分化メカニズムはまだよくわかっていませんが、近年Zfp521という因子が神経細胞への分化に重要であることが明らかとなりました。我々はZfp521遺伝子を欠損したマウスを作製し、その生体での役割を調べています。これまでにこのマウスは統合失調症様の行動を見せること(Ohkubo N et al., PLoS One, 2014, Ohkubo N et al., Ehime Med. J., 2016)、脳内モノアミン量の変化があること(Ohkubo N et al., Life Sci., 2019)などを明らかにしてきました。本研究の成果は、神経幹細胞分化機構や脳の発生機構を明らかにするとともに、精神疾患や神経変性疾患の発症メカニズムや治療法に結びつくと考えています。

 

血液の微小循環の制御に関わる因子の探索

血液の微小循環とは、細動脈・毛細血管・細静脈レベルで行われる血液循環のことです。全身の細胞に酸素と栄養を届け、老廃物を回収するという、いわば「生命維持の最前線」の役割を担っています。微小血管は全血管の95%以上を占めており、細胞の代謝や免疫応答、組織の修復に欠かせません。我々は、この微小循環の制御に関わる物質の探索に取り組んでいます。