Course

児童精神医学

Course introduction

講座紹介

提案型寄附講座
児童精神医学

愛媛県の子どもたちのこころを育み、

愛媛県で子どものこころ専門医を育てる

児童精神医学講座は、愛媛県との協働のもと、愛媛県における子どもの精神科医療を発展させることを目的として設立された講座です。

全国的な子どもの数の減少と相反して、精神的な不調をかかえる子どもは増加しています。子どもたちは心に不調を感じても、なかなか誰かに相談できません。子どもの心の不調は「家庭や学校の問題」と捉えられがちでした。しかし、少しずつ身体のみならず心の不調についても病院で相談ができるものと理解されるようになり、児童思春期外来を受診する子どもたちが増えてきました。一方で、児童思春期を専門とする医師は、全国で650名ほど不足しています。愛媛県の「子どものこころ専門医」は現在7名ですが、到底十分とはいえません。何とかこの状況を打破したいと考えています。

子どものこころを育むということは、医療だけでなく、教育・福祉・行政・医療が一体となって取り組むべき課題です。この児童精神医学講座が、より良い連携・協働のためのファシリテーターを担っていきます。

 

【講座問い合わせ先】

提案型寄附講座 児童精神医学講座

〒791-0295 愛媛県東温市志津川454
TEL:089-960-5315 / FAX:089-960-5317

 

【関連HP】

精神神経科学講座 https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/neuropsychiatry/

愛媛県発達障がい専門医療機関ネットワーク構築事業 https://www.m.ehime-u.ac.jp/neurodevelopment/

愛媛大学医学部附属病院 子どものこころセンター https://www.hsp.ehime-u.ac.jp/department/子どものこころセンター/

子ども療育センター児童・思春期病棟(県内初)の整備について

 

【新着情報】

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Research content

研究内容

  • 思春期における発達障害とインターネット依存の関連と介入効果の検討

発達障害は現在、神経発達症といわれており、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)が医療現場でも関わることが多いです。これらの神経発達症は、インターネットをはじめデジタルメディアに依存しやすいと考えられており、特にADHDはインターネット依存やゲーム障害と関連が強く指摘されています。ASDに関しては報告に差があるため、当科では実際の関連について、臨床症例から検討を行っています。本研究は科学研究費助成を受けました(17K16383)

  • 思春期におけるインターネット依存の病態解明と予防マニュアルの開発

思春期においてインターネットへの没頭・依存は学校や家庭での日常生活に影響する問題へと発展することがあります。どうして依存してしまうのか、どのような電子メディアが依存を引き起こすのか、理由は多岐にわたりますが、その病態を解明することは今後の対策において重要だと考えています。そして、依存をきたす前の予防対策が重要となります。予防対策のマニュアルを作成し本ホームページにアップしていますので、研究成果からダウンロードしていただけます。本研究は科学研究費助成を受けております(20K18935)

  • 小学生におけるインターネット依存予防介入プログラムの効果検証と支援モデル構築

子どもをとりまくデジタルメディアの普及は著しく、過度な使用に陥ってしまうインターネット依存に関する問題が増加しています。ネットだけではなく、ゲームやSNSに関する依存が増加傾向かつ低年齢化しています。依存対策教育としての学校現場での予防介入が必要と考え、小学校における予防介入プログラムの開発と実施を検証していきたいと考えています。本研究は科学研究費助成を受けております。(23K09742)

  • 神経発達症の早期兆候としての睡眠の問題・睡眠障害

小児の睡眠問題に早期に介入することは、精神的健康や発達異常の予防的観点からも重要です。発達に睡眠がどう影響するかの早期兆候を捉えることを目的として、保健師さんと共に1.5歳および3歳児健診にて調査を行いました。加えて、乳幼児の睡眠に影響するメデイア使用と生活環境の実態についても調べました。この分野の研究は、コメディカルスタッフとの協働がとても重要になります。本研究は科学研究費助成を受けました(16K10252)

  • 自閉スペクトラム症の生物学的指標の検証

自閉スペクトラム症は、社会性の障害を中核症状とする神経発達症ですが、未だ診断に有用な生物学的指標は存在しません。そこで、成人の自閉スペクトラム症の方を対象に、血漿中の免疫系における遺伝子発現の変化を確認しました。今後、血漿でみられた変化が頬粘膜サンプルでも同様の変化がみられるのか明らかにし、未就学児についても検証します。ひいては、早期診断に役立つスクリーニング手法としての有用性を検証したいと考えております。本研究は科学研究費助成を受けております(22K07581)

  • 乳幼児および5歳児健診を活用した不登校予防のための教育‐医療連携システムの構築

 不登校の児童生徒数の増加とともに、不登校の低年齢化が問題となっています。不登校は病気ではありませんが、背景にある発達の偏りや、精神的不調を早く捉えて支援を開始することは、医療の役目と考えております。より低年齢において介入が必要と考えていますが、“学校に行けないからすぐに病院に行こう!”とはならないのが現状です(特に児童精神科や心療内科には)。そこで私たちは、不登校予防の観点を持って子どもたちを取り巻く環境を作るため、健診のシステムを利用した研究を実施する予定です。本研究は科学研究費助成を受けております。(25K13608)

Main achievements

主な実績

2025年

  • 河邉憲太郎. 若者の自殺対策-精神保健の専門家としてリスクをどう捉えて対応するか 児童・思春期・青年期の物質乱用と自殺. 精神医学. 2025; 67(2): 182-188.
  • 河邉憲太郎. 向精神薬のスイッチングの意義と技法 ADHD治療薬におけるスイッチングの意義と技法. 臨床精神薬理. 2025; 28(1): 75-84.

2024年

  • Kawabe K, Horiuchi F, Matsumoto Y, Inoue S, Okazawa M, Hosokawa R, Ueno SI. Practical clinical guidelines and pharmacological treatment for attention‐deficit hyperactivity disorder in Asia. Neuropsychopharmacology reports. 2024 44(1): 29-33.
  • Soga J, Kawabe K, Horiuchi F, Yoshino Y, Ozaki Y, Nakachi K, Ueno SI. Sleep Awareness of Japanese Outpatients: A Survey at a Psychiatry Department of a University Hospital. Clinics and Practice. 2024 14(5): 2116-2124.
  • Tsujii N, Okazaki K, Kihara H, Usami M, Fujita J, Horiuchi F, Negoro H. Is there evidence for the use of noninvasive brain stimulation techniques for children and adolescents with mental illness?. PCN Reports: Psychiatry and Clinical Neurosciences. 2024. 3(2), e190.
  • 堀内史枝, 細川里瑛. 意外と知られていない睡眠障害と神経発達症. 精神看護. 2024; 27(1): 44-46.
  • 兵頭沙梨, 細川里瑛, 堀内史枝. 子どもの眠りに関する問題,教育,治療総論 「眠れない」への薬物治療. 小児内科. 2024; 56(8):1219-1224.
  • 井上彩織,堀内史枝. 不登校の理解と支援 不登校と睡眠の問題 精神医学. 2024;66(10): 1317-1323.
  • 河邉憲太郎. 中枢刺激薬(methylphenidate, modafinil, lisdexamphetamin)の乱用, 依存, 離脱. 臨床精神薬理. 2024; 27(2): 169-178.
  • 曽我純也, 河邉憲太郎, 細川里瑛, 井上彩織, 松本優, 岡澤麻耶, 吉野祐太, 堀内史枝, 上野修一. 専門病棟を持たない大学病院精神科における児童の入院治療の特徴と課題. 最新精神医学. 2024; 29(1): 47-52.

【著書】 河邉憲太郎.「死にたい」子どもたちと向き合う11のポイント 児童精神科の現場から伝えたいこと.星和書店.2024

      http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo05/bn1091.html

【受賞】 児童精神医学講座.愛媛大学令和6年度学長賞

      河邉憲太郎.第65回日本児童青年精神医学会総会優秀発表賞

      河邉憲太郎.PCN Reports Best Reviewer Awards 2023

2023年

  • Kawabe K, Horiuchi F, Hosokawa R, Ueno SI. School teachers’ awareness of internet addiction in elementary school students: a regional survey in Japan. Frontiers in Psychiatry. 2023; 14: 1187387.
  • 堀内史枝河邉憲太郎,細川里瑛,仲地究,上野修一. 身近な臨床疑問から研究を:睡眠・摂食・ネット依存. 愛媛医学.      2023; 42(2): 49-54.
  • 堀内史枝. 小児の不眠障害治療:薬物治療-実施する?実施しない?. 臨床精神薬理. 2023;26(11): 1053-1060.
  • 中野広輔,重見律子,藤枝俊之,渡部承平,河邉美香,若本裕之,吉田和弘,堀内伊作,岡澤朋子,堀内史枝. 愛媛県内の      乳幼児健康診査の現状について-神経発達症の早期発見・早期介入の視点から-. 愛媛県小児科医会雑誌. 2023; 4(1): 2-7.
  • 河邉憲太郎堀内史枝. インターネット依存とADHDを併発した概日リズム睡眠・覚醒障害の一例. 睡眠医療. 2023; 17(3):    379-383.
  • 河邉憲太郎. ネット社会のアディクション SNS依存の診断,症状,治療,予防. カレントテラピー. 2023; 41(11): 1015-1019.
  • 松本優,中村真之,河邉憲太郎,武田直也,上野修一. Escitalopramを使用したうつ病33例の臨床的検討-年齢層に注目したcase series-. 臨床精神薬理. 2023; 26(7): 715-723.

【著書】  堀内史枝(監修).依存症・トラウマ・発達障害・うつ 「眠り」とのただならぬ関係.アスク・ヒューマン・ケア.2023

【受賞】  堀内史枝.第11回西予市おイネ賞 地域奨励賞                                              

      河邉憲太郎.第31回愛媛医学会賞

      河邉憲太郎.松本優.第11回アジア児童青年精神医学会BEST POSTER AWARD

                                           

reaserch result

研究成果

Staff introduction

スタッフ紹介

児童精神医学
堀内 史枝  教授

河邉 憲太郎 准教授

教授・准教授からのメッセージ


《堀内教授》

本講座の重要な役割は、二つあると考えています。一つ目は、愛媛県全域の児童思春期精神医療の基盤作りです。具体的には、児童思春期の外来から入院までスムーズに治療が行える診療体制を構築します。現在は、子どもで入院治療が必要となった場合は、大人の精神科病棟に入院することになります。大人に囲まれることで安心できるメリットもありますが、デメリットもあると考えています。子どもは子どもの中で生活することで、自分を見つけていくものです。今後は、愛媛県と共に子ども専門の入院設備を整備し、「治療の場」のみならず「育ちの場」を提供したいと考えております。二つ目は、「子どものこころ専門医」の育成です。子どものこころ専門医は、日本専門医機構が規定するサブスペシャリティ領域となる予定です。現在、愛媛大学を基幹病院として「愛媛県子どものこころ専門医研修施設群」を立ち上げ、医師の研修・教育を開始しています。愛媛県で児童精神医学も含めた精神医学を学びたいと若手医師が思える講座にしたいと考えております。

 

《河邉准教授》

現在、我が国では子どものメンタルヘルスに関して、その重要度が注目されています。その内容としては、コロナ禍を契機に知られるようになった子どもの自殺や児童虐待の増加などのニュースや、SNSの適切でない使い方やいじめなどの社会的問題が中心です。このような状況の中、子どものメンタルヘルスを専門とする児童精神科医が必要となりますが、児童精神科医は全国的に少ないことが指摘されています。当講座の役割として、愛媛県における児童精神科医の養成は重要課題の1つです。また、子どものメンタルにかかわる要因は生物学的、心理学的要因のみならず、社会的な要因など様々であります。この要因は時世によって変化するものであり、より新しい知見が求められます。愛媛大学医学部の理念をもとに、子どもから学び、子どもに還元する教育・研究・医療を行えるよう努めて参ります。

スタッフ紹介