- 口腔癌のCXCR4システムを介した転移機構における分泌型miRNAの役割
CXCR4シグナルの下流に存在する分泌型miRNAを同定し、CXCR4シグナルの癌微小環境への作用機序を明らかにすることを目的としている。CXCR4特異的阻害剤であるAMD070が、口腔癌細胞のin vitroでの遊走とマウス転移モデルでの転移を抑制することを現在明らかにしており、さらなる研究を進めている。
悪性口腔腫瘍には治療後直ちに局所再発あるいは転移を来たし、放射線や化学療法にも抵抗性を示し予後不良となる症例が存在する。そこで、このような症例よりゲノム DNA および total RNA を抽出し、ゲノム・エピゲノム解析を試みている。現在、ゲノム DNA を用いて腫瘍遺伝子変異解析を行い、TP53、PIK3CA、HRAS の変異の検出、さらに、total RNA を用いてマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行っている。
癌細胞は、アポトーシス/アノイキスへの抵抗性を獲得することで、転移を可能とするという作業仮説に基づきSrcとA20に着目して研究を展開している。さらに、ヒトが本来有しており、強力なアポトーシス誘導能を有するTNF-related apoptosis inducing ligand (TRAIL) は、治療への応用を見据える上で注目されている。Srcの量的、質的変動とTRAILの感受性について検討を行っている。
- リンパ節転移診断遺伝子アルゴリズムの構築による口腔癌リンパ節転移予測の確立
本研究では、原発組織の網羅的遺伝子解析の結果を用いたリンパ節転移診断アルゴリズムを構築し、cN0 症例のなかで、頚部リンパ節転移の可能性が高い症例のみを抽出する、リンパ節転移診断遺伝子アルゴリズムを構築することを目的としている。本研究は、アルゴリズムの構築による cN0 症例における治療成績の向上、過剰医療や不足医療による医療費の削減、標準治療の確立という EBM に基づいた cN0 症例の治療方針へのパラダイムシフトにつなげることを最終目標としている。
- mGluR5特異的経口阻害剤RG7090による口腔癌の転移抑制療法の開発
本研究では、CXCR4 システムを介した口腔癌の転移に対するmGluR5特異的阻害剤RG7090 の効果を検討することを目的としている。RG7090 は従来のmGluR5 阻害剤に比べ半減期が長く、隔日経口投与が可能であるためmGluR5をより低侵襲かつ持続的に抑制することができ、現在、in vitro/vivoにおいての検証を行っている。
- 口腔扁平上皮癌における 血清 Exosomal miRNA の発現機能解析
口腔扁平上皮癌患者および健常者血清から Exosome miRNA を抽出し、マイクロアレイ解析を行い、口腔扁平上皮癌患者で 3 倍以上発現亢進する miRNA を 33 種類、3 倍以上発現低下する miRNA を 15 種類同定している。これらの機能解析を行い、口腔癌治療の臨床応用を目的としている。
- 脂肪細胞の分化およびアディポカイン作用に関わるヒト特異的分子の探索
本研究では、DDTを含むアディポカインの作用や脂肪細胞分化機序に関わる分子をヒトとマウスの前駆脂肪細胞を用いて検討し、その差異を明らかにすることで、ヒト特異的なアディポカイン作用と脂肪細胞分化機序の解明を目指している。