前立腺癌特異的な骨転移の分子機構の解明のために、前立腺癌細胞株のマイクロアレイデータおよび骨転移を有する前立腺癌患者の臨床サンプルを用いた遺伝子発現データベースから骨転移に関連する候補因子を探索している。既に同定したGPRC5Aはノックアウトにより、in vitroおよびin vivoにおいて増殖が著明に抑制され、in vivoにおいて骨転移成立の抑制を認めた。ヒト前立腺癌生検組織 を用いた解析の結果、GPRC5Aの免疫染色性は、Gleason Scoreおよび骨転移の有無と有意な正の相関を示した。現在、他の候補因子につき研究を継続している。
- 2.前立腺癌の新規標的分子の探索と機能解析に基づく臨床応用研究
前立腺癌患者の約15%に共通して見られる変異遺伝子としてSPOPが知られている。SPOPはCullin3 (CUL3)をプラットフォームとするユビキチンE3リガーゼの基質受容体であり、アンドロゲン受容体やERGを代表とする標的基質の報告はあるがSPOPの基質は正確には把握されていない。SPOPの新たな基質を含めた基質探索を愛媛大学プロテオサイエンスセンターが独自に開発したヒトFlag-タグ24000タンパク質アレイを基盤としたAplhaScreenアッセイシステムを用いながら進めている。
本研究により見出される新規標的分子を、前立腺癌の治療及び診断に応用することを目指している。
無症候性水腎症の病態は、腎盂尿管移行部の狭窄により腎盂から尿管の通過障害が起こり腎盂内に尿が停滞する。そして、腎盂内圧上昇により腎実質での尿の産生障害、尿の直接的な腎実質への圧排が腎機能を悪化させると考えられている。しかし、腎盂内圧を測定する方法として体表より腎盂に針を穿刺し直接圧力を測る非生理的な侵襲的検査(Whitaker test)であり、手術適応をきめる検査としては使用されていない。腎盂内圧が与える腎実質への影響を解明することが水腎症の病態を把握する上で重要であり、生理的かつ非侵襲的な腎盂内圧測定方法を開発することが必要となる。愛媛大学工学部との共同でエラストグラフィとアレイセンシングを組み合わせた測定理論を考案し実験モデルを用いて検証を行う。
現在普及している泌尿器科におけるロボット手術は前立腺癌手術を中心に多くの経験が蓄積されてきた。一方で、ロボット手術に長けた熟練医と不慣れな医師との間で技術格差が認められることがあり熟練医の遠隔指導による技術向上が期待される。大阪大学工学部との共同でロボット手術技術の遠隔指導サ ービス実現を目的とし高精細・多次元映像伝送を元にした医療分野における遠隔指導サ ービスにもたらす影響を明らかにする。