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メッセージ

医学科で何を学ぶのか

生化学・分子遺伝学 教授

東山 繁樹 Higashiyama Shigeki

生命の営みはすべて分子の反応で説明がつくのだろうか?すべての病気は分子の反応で説明できるのだろうか?みなさんはこんな疑問を持ったことありませんか?私もこの疑問を幼いころから抱いてきました。そしてこの疑問に対する私の答えは、いまだありません。私達のからだは有限な分子の集合体です。だとすればヒトの全てが分子の反応で説明できそうです。しかし、私達はあらゆる困難を乗り越え進化をとげてきています。創造力をもっています。これは、ヒトは分子の反応だけでは説明できそうにない部分がありそうだと、語りかけています。

今、医学は大きな転換期を迎えています。20世紀から21世紀にかけて私達はヒトのからだの設計図であるゲノム構造を明らかにし、手にしました。体を構成する有限な分子を全て捕らえたのです。さて、これらの分子をどのようにつなげましょうか?どのようにつなげ、また、どのように組み合わせていけば体を構成する最小単位である細胞を理解できるのでしょうか?また、どのような分子の異変が、どのような病気を引き起こすのでしょうか?全ての分子を手にすることのできる今だからこそ、これらの疑問に答えるべく努力が可能になります。

医師を志す皆さんは、自分の体のことをどこまで理解していますか?私達は分子の機能を理解し、分子で構成されている細胞を理解することに全力を注いでいます。そして、分子の反応の変化がもたらす病気を理解し、治療に役立てる方法を模索しています。また、同時に、分子の反応では到底説明のつかないヒトの創造性に基礎医学研究を通して驚かされ、ヒトがヒトたる所以を日々感じています。

医学部は自分を分子のレベルから理解し、分子の反応では説明できないすばらしい創造力を持つ生命体であることを理解するところでもあるのです。私達と一緒にまず自分のからだの仕組みを理解するところから始めませんか。そしてヒトのすばらしさを実感してみませんか。愛媛大学医学部でお会いしましょう。