人体構造学Ⅱ(組織学)

責任教員:加藤英政

担当教員:朱鵬翔

【一般目標】

組織学では人体諸器官の成り立ちを肉眼的に観察不可能な微小構成要素にまで及んで追跡し、精緻に組み上げられた各要素の形態 とそれを反映した機能を知る。そのために、各器官,組織の形態学的特徴を主として光学顕微鏡下での観察を通して理解する。また、透過型及び走査型電子顕微 鏡を用いて明らかにされた組織・細胞の微細構造についても理解する。

【学習上の注意】

◎組織学の学習では、正常の組織像を見極めることを最大の目標とする。正常の組織像が理解できなければ、3年次で学習する病理 学において病的な組織を把握することも不可能となる。改めて言うまでもなく、病理組織学は臨床医学において最終診断ともいうべき重みを有しているので、学 生諸君が将来医師となり自身が受け持つ患者の治療方針を決める上でも必須のものとなる。組織学はこのような病理組織学の基礎となる事項を学ぶためにあると いう自覚を持って、講義・実習に臨んでほしい。

◎テキストは用いるが教材は必要に応じて配布する。参考書としては「Human Histology」、「Essential Histology」(D.H. Cormack, ed)をすすめる。

◎組織学においては、行動目標の主旨に沿った知識の修得,理解の徹底を計るため講義の後、直ちに実習を行う。講義—実習の形式をとるので、講義に出席できない場合は必ず予習をして実習を受けること。

◎講義実習について疑問があれば直ちに質問すること。

【評価方法】

筆記試験及び実習試験を行い評価する。場合によっては口答試問を行う。

【授業内容】※:組織学総論  ◎:組織学各論 【行動目標】
はじめに(講義・実習説明(標本、借用書))
※上皮組織Ⅰ ・ 講義、実習
※上皮組織Ⅱ(外皮系) ・ 講義、実習 (上皮組織・外皮系)
1. 上皮組織の特性,形状,配列の違いによる分類ができる。
2. 上皮が特殊に分化した腺について説明できる。
3. 皮膚の恒常性維持に関わる各細胞・組織の役割について説明できる。
※結合組織Ⅰ ・ 講義、実習
※結合組織Ⅱ(脂肪組織) ・ 講義、実習 (結合組織・脂肪組織)
4. 細胞外基質である線維性成分や無定型基質の成分・機能について概説できる。
5. 細胞の細胞外基質合成・分泌機序について説明できる。
6. 結合組織の種類について説明できる。
7. 白色脂肪組織と褐色脂肪組織の構造上・機能面における違いについて説明できる。
※骨、軟骨、骨発生 ・ 講義、実習 8. 軟骨組織について概説できる。
9. 骨組織について概説できる。
10. 膜内骨化,軟骨内骨化について説明できる。
※筋組織 ・ 講義、実習 11. 筋の収縮機構について概説できる。
12. 筋組織の種類とそれぞれの形態学的特徴について説明できる。
※神経組織 ・ 講義、実習 13. 神経系を構成する細胞について説明できる。
14. 神経伝達物質,ホルモン,受容体,イオンチャンネル等の構造・機能について説明できる。
15. 細胞内情報伝達系について概説できる。
16. 神経組織について概説できる。
◎中枢・末梢神経系 ・ 講義、実習 17. 中枢神経系と末梢神経系の違いについて概説できる。
18. 中枢神経系を構成する細胞について説明できる。
19. 中枢神経系における神経伝達について概説できる。
20. 末梢神経系を構成する細胞について説明できる。
21. 末梢神経系における神経伝達について概説できる。
◎血液 ・ 講義、実習 22. 血液成分の種類・特徴・働きについて説明できる。
23. 造血組織及び造血幹細胞から各血球への分化と成熟の過程を説明できる。
◎心臓と脈管系 ・ 講義、実習 24. 心臓及び血管の構造について説明できる。
25. 毛細血管の構造と機能の相関が理解できる。
臨床組織学特論Ⅰ ・ 講義
最新の研究分野や臨床医学にてとくに必要となる組織学テーマについて、基礎・臨床の専門家が講義する。
◎消化器1(口腔関連臓器・食道) ・ 講義、実習 26. 口唇,舌,咽頭,軟口蓋,唾液腺,歯,歯肉,食道の組織像について説明できる。
◎リンパ系 ・ 講義、実習 27. 生体防御器官としてのリンパ性組織,脾臓,胸腺等の組織学的特徴を概説できる。
28. 生体防御に関与する細胞等の形成過程や役割について説明できる。
◎泌尿器系 ・ 講義、実習 29. 腎臓及び尿路系の構造を理解し、尿の生成から排出に至る過程を概説できる。
◎消化器2(胃腸) ・ 講義、実習 30. 消化管の一般的構造について概説できる。
31. 食道,胃,十二指腸,空腸,回腸,大腸の組織学的相異が説明できる。
32. 胃,小腸における消化・吸収がいかに行われているのか説明できる。
◎消化器3(肝・胆嚢・膵) ・ 講義、実習 33. 付属消化腺としての肝臓,膵臓等の構造を理解し、各々の器官の働きについて概説できる。
◎呼吸器系 ・ 講義、実習 34. 気道各部位の組織学的特徴を概説できる。
35. 肺におけるガス交換の仕組みについて説明できる。
36. 嗅覚を司る鼻粘膜嗅部の形態学的特徴について説明できる。
◎内分泌 ・ 講義、実習 37. 内分泌器官の構造及びホルモン産生機序について概説できる。
38. 神経内分泌について説明できる。
39. 腺性下垂体の血管(下垂体門脈系)とその意義について説明できる。
◎感覚器 ・ 講義、実習 40. 眼球線維膜(強膜,角膜),血管膜(脈絡膜,毛様体,虹彩),網膜(網膜視部,網膜盲部,中心窩)ならびにレンズ(水晶体)の組織学的構造を説明できる。
41. 眼房水の産生と吸収について概説できる。
42. 外界から光刺激を受容する仕組みについて説明できる。
43. 平衡感覚装置,聴覚感受装置としての耳の構造を概説できる。
44. 外界からの音刺激を受容する仕組みについて説明できる。
45. 皮膚の構造及び機能を概説できる。
◎男性生殖器 ・ 講義、実習 46. 精巣と精路の組織構造と機能を説明できる。
47. 精子の発生と成熟過程について概説できる。
◎女性生殖器 ・ 講義、実習 48. 卵巣、卵管、子宮、膣、膣前庭の組織構造と機能を説明できる。
49. 卵母細胞と卵胞の発生と成熟を説明できる
50. 月経周期ならびに妊娠により各器官の組織構造と機能の変化を概説できる。
臨床組織学特論Ⅱ ・ 講義
最新の研究分野や臨床医学にてとくに必要となる組織学テーマについて、基礎・臨床の専門家が講義する。