令和6年4月
愛媛大学大学院医学系研究科 地域医療再生学講座
令和5年度 地域医療再生学(寄附講座)活動報告書
間島 直彦(地域医療再生学講座主任教授)
愛媛大学大学院医学系研究科 地域医療再生学講座は、宇摩地区が抱える地域医療の課題(医師不足、 救急医療)に取り組むために、平成22(2010)年4月に愛媛県の寄附講座として愛媛大学医学部に設置されました。平成28(2016)年4月からは四国中央市の寄附講座となり、現在も活動を継続しております。四国中央市役所や関係医療機関の皆様のご支援に心より感謝いたしております。 令和5年度は、整形外科は間島直彦(2014年度より)、小児科は新野亮治助教(2023年度より)、脳神経外科は日下部公資助教(2023年度より)、中村和助教(2022年度より)の4名のスタッフが、四国中央病院とHITO病院内のサテライトセンターで活動しています。 整形外科分野では、四国中央市の救急外傷、関節疾患、高齢者骨脆弱性骨折の診療活動に加え、骨・関節・筋肉などの運動器疾患に関する地域住民の健康増進活動に取り組みました。HITO 病院サテライトセンターに設置した人工関節センターでは、愛媛大学と連携して最先端医療を提供できる体制を提供しています。令和5年度から院内骨バンクも新たに構築し、再手術症例など難症例に対する体制も整えました。手術件数は順調に伸び本年も 100 症例を超えています。地域貢献としては、今年度は「ひざと股関節の痛みとその治療について」として市民健康講座を開催することができました。また市内すべての整形外科医療施設と協力して四国中央市における高齢者骨脆弱性骨折の二次骨折予防に取り組んでいます。具体的には、積極的に骨粗しょう症治療の連携を行い、地域住民の骨折を減少させようとする活動を行っています。啓発活動としては、骨に対する健康意識向上のために世界保健機関の世界骨粗鬆デーに合わせて、骨粗鬆症市民公開講座を開催して 210 名の参加がありました。臨床研究としては、人工関節手術後にロボットリハビリテーションを積極的に推進して、患者の早期退院や良好な機能回復を目指しその結果を報告しています。 脳神経外科分野では、HITO病院にて脳神経、脊髄・脊椎疾患の治療にあたるとともに、脳卒中治療に積極的に取り組みました。HITO 病院では令和 3 年度より SCU(Stroke Care Unit : 脳卒中ケアユニット)を開設しています。SCU は脳卒中診療医を常時配置する必要があることから、本年度も当講座からは 2 名の脳神経外科を配属し、四国中央市医療圏における24 時間 365 日の脳卒中診療維持に努めております。当院では宇摩地区のみならず、徳島県三好市や香川県三観地区など県外一部の地域からの救急搬送も積極的に受け入れており、これらの人口を合わせると約 20 万人の医療圏になります。超急性期治療に対するニーズは年々高まっており、皆様に最先端の医療を提供できるよう今後も診療体制の維持に努めてまいります。また、当院における特徴として、スマートフォン端末を用いた遠隔情報共有があります。コメディカルスタッフとの連携において極めて有用なツールであり、労働環境改善だけではなく脳卒中の超急性期治療においても役立っています。 小児科分野では、四国中央病院において小児科診療、新生児診療、専門外来(小児循環器、小児内分泌)、小児保健事業(予防接種や健診)を提供しています。四国中央病院は当地区唯一の分娩取り扱い病院であり、医師と助産師が中心となって小児虐待や養育困難のハイリスク妊婦に対しても早期から介入し、行政や教育機関と定期的な情報交換を行いながら、各機関と連携した活動を行っています。また、病院の特徴として、小児リハビリテーションがあり、発達遅滞や自閉症などの児童に対して、小児科医が看護師やリハビリテーション技師と連携して対応しています。小児救急医療においては自治体の垣根を超えた東予東部の2次救急輪番体制を整備し、県立新居浜病院、西条中央病院と連携してその役割を担っています。地域貢献としては、子供の心に焦点を当てた市民公開講座を開催して、正しい知識の普及に取り組んでいます。 教育面においては、愛媛県の地域医療医師確保奨学生が、関連病院における研修として四国中央病院や HITO 病院に派遣されています。サテライトセンターでは、各病院と協力しながらの若手医師の育成に取り組んでいます。 地域医療再生学講座では、専門医による専門医療を提供するだけではなく、地域の子供たちの健やかな成長、高齢者の健康維持や豊かな生活に役立つ活動を継続していきたいと考えております。また、次世代の地域医療を担う研修医や若手医師の受け皿となってまいります。これからもご協力やご指導を宜しくお願い申し上げます。