教授ご挨拶

この度、平成26年7月1日付で愛媛大学大学院医学系研究科公衆衛生・健康医学講座の教授に就任致しました三宅吉博と申します。平成27年4月1日付で講座の名称を「公衆衛生・健康医学講座」から「疫学・予防医学講座」に変更しました。

本講座は、昭和50年に木村慶教授の下、開講し、小西正光教授(平成7年)、
谷川武教授(平成20年)の3代の教授のご尽力によって発展してまいりました。4代目の教授として任務を遂行できますこと、誠に光栄でございます。

私は大阪の家族経営的な商売人の家で生まれ育ちました。一浪した後、なにげに受験し合格した防衛医科大学校に進学するよう、父親に強く説得され、進学いたしました。防衛医科大学校で過ごした6年間、私は例えようのないほど貴重な経験をすることができました。今あるのもこの6年間のお陰と感謝しております。この6年間のご恩を残りの人生で、私が専門としております疫学研究によりお返しできればと考えております。

3年間の内科研修の後、京都大学大学院医学研究科内科系専攻博士課程(指導教官:北徹教授)に進学いたしました。進学早々、私には分子生物学は向いていないと確信するに至りました。厚かましくも経済学で著名な佐和隆光教授に経済学の基本を少し教えて頂きましたが、医療経済学も難しいと思うに至りました。そこで、防衛医科大学校で公衆衛生学の講義を受けました古野純典教授を思い出し、連絡を取りましたところ、九州大学にご栄転されており、博多までご相談に伺いました。直ちに九州大学への転学を決心し、大学院2年生から九州大学大学院医学系研究科社会医学系専攻博士課程でお世話になりました。以後、疫学者として歩んでおります。

疫学研究は観察的疫学研究と介入研究に大別されますが、私は一貫して観察的疫学研究に携わっております。観察的疫学研究は、さらに生態学的研究、横断研究、症例対照研究、コーホート研究の4研究に分類されますが、私は幸い全てのタイプの観察的疫学研究を経験することができました。九州大学の大学院では、自衛官の退職時健診データを用いました横断研究で、コーヒー摂取と血清脂質との関連を調べたのが私にとって初めての筆頭著者原著論文であります。次いで、福岡心臓研究という症例対照研究で中高年別に心筋梗塞のリスク要因を検討いたしました。これが私の学位論文となりました。

大学院修了後、近畿大学医学部公衆衛生学で2年半助手を経験し、その後、福岡大学医学部公衆衛生学で講師、助教授、准教授を務めました。研究対象の疾患(アウトカム)としましては、アレルギー疾患やうつ、出生時体格、口腔疾患といった母子の健康問題、さらには、特発性肺線維症や特発性パーキンソン病といった難病の疫学研究に従事してきました。研究対象の曝露要因(疾患発症の原因)としましては、喫煙や栄養、社会経済的要因など幅広く環境要因を考慮しております。最近では、遺伝子多型という遺伝要因と疾患リスクとの関連、さらには遺伝要因と環境要因の交互作用も調べております。

今後とも、各種疾患発症のリスク要因及び予防要因解明を目的とした疫学研究を推進し、多くのエビデンスを創出することで、第一次予防医学の発展に貢献したいと考えております。これまで私が手がけていない中高年のコーホート研究を視野に入れて、可能な限り、研究対象のアウトカムの幅を広げたいと考えております。また、疫学に興味を持つ学部生や大学院生等には、第一次予防を目的とした疫学研究について学ぶ場を供し、情熱を持って指導していく所存です。

疫学は公衆衛生だけでなく、臨床医学においても重要な学問であります。私どもの講座から第一次予防医学の発展に貢献できる有能な疫学者、臨床疫学研究を適切に実践し英文原著論文としてエビデンスを公表できる臨床家、根拠に基づく医療或いは根拠に基づく公衆衛生学を十分に理解し医療保健活動を実践できる専門家を多数輩出できればと考えております。

No single study gives a conclusion. たった一つの疫学研究だけでは、その真偽はわからないのです。エビデンスを蓄積し、根拠の明確な予防プログラムを確立することが何よりも重要です。愛媛大学大学院医学系研究科がアジアでトップクラスの疫学研究拠点となるよう、努力する所存です。今後とも、ご指導ご鞭撻賜りますよう、何卒、よろしくお願い申し上げます。