小児がんの発症には様々な遺伝子異常・染色体異常が関与していることが知られています。染色体転座の結果として形成される融合遺伝子や、遺伝子変異など腫瘍特異的な多くの遺伝子異常が同定されており、この染色体・遺伝子異常の種類により病型・予後が規定されることも多くあります。愛媛大学小児科学講座では小児がん患者において、分子生物学的な手法を用いてこの遺伝子異常・染色体異常の検出・同定を行い、小児がんの早期診断や病型分類、治療効果判定などへの効果的な応用を目指しています。
白血病は小児期で最も多いがんであり、複数の染色体・遺伝子異常の獲得により多段階のステップを経て発症すると考えられています。愛媛大学小児科学講座では検体より分離した白血病細胞を移植した免疫不全マウスや、遺伝子異常を導入したマウス造血前駆細胞等の白血病モデルを用いて白血病の発症機構の解明を試みています。白血病やがんの治療成績は近年向上していますが、一部に治療抵抗性で予後不良な症例もあり、また寛解に至った症例でも強力な化学療法による後遺障害が問題となっており、より副作用が少なくかつ治療効果の高い新たな分子標的療法の開発・応用が望まれています。
日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group: JCCG)の多施設共同臨床試験に参加し、小児がんの治療方法の改善および治療成績の向上を目指しています。
- 先天性疾患におけるゲノム解析の臨床および基礎的応用
診断が困難な先天性疾患の原因解明のため、全エクソーム解析、アレイCGHなどの網羅的解析や、種々のFISH法などを用いた解析を行い、未診断症例の診断体制の構築を行っています。対象疾患は先天奇形症候群、代謝性疾患、免疫不全症、腎疾患など多岐にわたり、何らかの遺伝子変異が同定された場合にはその臨床的な意義を解明するために変異遺伝子の機能解析などを行っています。
県下の突然死症例の検討、学校内のAEDの設置場所の検討、地域での初期対応研修などを行っています。
先天性心疾患は100出生に一人と高頻度にみられる疾患ですが、その原因は未だ明らかにはなっていません。愛媛大学小児科学講座では全エクソーム解析やアレイCGHなどを用いて先天性心疾患の原因解明を行っています。先天性心疾患の発症メカニズムを明らかにすることで、その発症を予防することを目指して研究を行っています。
新生児の正常な発育発達には腸内細菌が密接に関わっていると言われており、新生児の便からDNAを直接抽出し定量的PCR、16S rDNAパイロシークエンス解析することにより正確な腸内細菌叢の確立の過程を明らかにしています。
小児の感染性胃腸炎に五苓散の注腸が有効であるか、プラセボ対照ランダム化比較試験を計画しました。2018年には、科研費をいただくことができ、臨床研究に加えて、ロタウイルスを利用して、細胞や動物を利用した基礎研究も行っています。
横断研究にて、筋疾患のため通常腎機能の評価に用いるCreではなくシスタチンCを用いて腎機能評価を行いました。
- ラットを用いた注意欠陥多動性障害発症機序の分子細胞生物学的解析
注意欠陥多動性障害の特徴を有したラットを用いて、分子細胞生物学的手法により病態解析を行っています。
- 在宅呼吸器・在宅酸素を使用している小児に対する災害対策についての調査
アンケート調査を行うことで、在宅呼吸器や在宅酸素を使用している患者さんが大規模災害発生時に必要とする支援を把握し、地域で課題となる点について検討していきます。
- DICの新たな診断・評価におけるcell free DNAの有用性
新たなDIC診断・治療効果判定のツールとして血清内のcell free DNAの上昇が有用化検討を行っています。
- 小胞体ストレスにおけるレジスチンの病態生理学的意義の分子機構に関する研究
インスリン抵抗性を惹起する悪玉アディポサイトカインとして注目されているレジスチンと、肥満や2型糖尿病患者で増強しているとされる小胞体ストレスとの関係を解明する研究を行っています。
- DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)における血管障害の評価
低たんぱく食を用いた低出生体重モデルマウス(LP)を作成し、10週齢時に正常出生体重マウス(NP)との血管リモデリング反応性の違いについて検討しました。LPでは血管障害が発生した際に明らかに血管リモデリングがNPに比べて亢進しており、IL-6等の炎症性サイトカイン産生、酸化ストレス反応、低酸素への反応性なども明らかに亢進していました。これらの結果から胎児期の環境は子供の将来における血管障害に対する反応性を変化させている可能性が示唆されます。