内子町の死因統計、国保レセプトから、生活習慣病、特に糖尿病に起因する疾患での死亡や透析導入例が、愛媛県の他の地域よりも多いことが判明しました。自治区単位で「地域健康教室」を2010年度に小田地区から開始し、2019年度で内子町内全地区を終了しました。また、2011年度から少なくとも年1回は、生活習慣病やがん検診などのテーマを取り上げて、地域での「市民講座」や「高齢者大学」、「婦人会講座」を町が主催で、当講座が協力して開催しています。2017年度からは厚労省(市町国保、協会けんぽ)、愛媛県医師会、糖尿病対策推進会議の連携による糖尿病性腎症重症化予防プログラムが稼働し、内子町の特定検診、国保レセプトの突合によるハイリスク例の抽出、医療機関への受診勧奨、保健指導、検診受診勧奨の保健活動に協力するとともに、小田診療所、加戸病院での減塩不十分例に対する在宅保健指導の依頼を行っています。また、内子町内のかかりつけ医(非専門医)と専門医(小田診療所、加戸病院)の連携のためのセミナーも行っています。
2012年度から、福島原発事故による愛媛県への避難民(20歳未満)の甲状腺一次検診を当講座が担当するようになり、3年間で初期の26名の検診を実施しました。2015年度からはfollow upの検診となり、対象者が20歳になるまで、2年に1回、それ以後は5年に1回、検診を実施する予定です。2016年度からは二次検診も当講座が担当していますが、二次検診の該当者は現時点ではゼロです。
消化管ホルモンは、生活習慣、あるいは生活習慣病と密接にかかわっています。日々の食行動、すなわち食欲に始まり、実際の食事摂取・嚥下、消化管運動、消化・吸収、代謝、体組成維持に至るすべての過程において、消化管ホルモンが関与しています。従って、肥満やメタボリックシンドロームの発症や治療に消化管ホルモンは関係してきます。一方、ガストリンやインスリンには細胞増殖作用がみられ、膵癌や胆道癌、大腸癌においてガストリン受容体異常やインスリンの関与が報告されています。当講座では、消化管運動に関与するモチリン系とグレリン系を中心に、受容体活性化機構の解明とともに臓器連関の解明を行っています。
抗酸化作用を有する天然型ビタミンEのサプリメント800IU/日(533mg/日、日本人のビタミンE摂取目安量は6-7mg/日)を糖尿病のないNASH例84例に96週間投与したSanyalらのRCTの報告では、AST、ALTの改善、肝組織における脂肪化、炎症の改善がみられています。当講座における温州ミカンに高濃度に含有するカロテノイドの一種であるβ-クリプトキサンチン3mg/日(温州ミカン3個分に相当)含有飲料(「アシタノカラダ」、えひめ飲料(株)製造)のNAFLD例 39例に対する12週間の投与では、NAFL例、NASH例ともに、有意にHOMA-Rの改善、酸化LDLなどの酸化ストレス系の改善、SODなどの酸化ストレス抑制系、IL10などの炎症性サイトカインの改善を伴って、AST、ALT、G-GTの低下が見られました。その他抗酸化作用を有するアスタキサンチンやポリフェノール、アントシアニン、レスベラトロールなどもモデル動物において肝の脂肪化や炎症、線維化を改善させる報告が多く見られますが、ヒトでの介入試験で明らかにNASHを改善させた報告はほとんどありません。β-クリプトキサンチンのNAFL/NASH改善の機序を解析中です。