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専攻長・学科長挨拶

Greeting

ご挨拶

愛媛大学大学院医学系研究科看護学専攻 専攻長・看護学科長

薬師神 裕子  Yakushijin Yuko

人と対話する力 ”dialogue” を大切に

 近年の地球温暖化による大規模災害、頻発する地震、新型コロナウイルス感染症の拡大、飢餓、紛争など、私たちの社会環境はこれまでと大きく変化しています。それに伴い、人々の健康ニーズはますます多様かつ複雑化しています。日本では、超少子高齢化による子育てや介護に関するさまざまな課題に向き合うために、地域における子育て支援、在宅医療や訪問看護の必要性がさらに高まっています。看護職が病院から飛び出し、地域包括ケアシステムの中で、医療・保健・福祉をつなぐ中心的な役割を担い活躍する時代になりました。
また、医療の高度化とともに、医療依存度が高く複数の疾病を有する患者に対し、様々な知識を統合して高度な看護技術を提供することも求められています。さらには、科学技術の進歩により保健・医療分野においても、デジタル・トランスフォーメーション(D X)の活用が飛躍的に進み、テクノロジーやAIを活用した看護のイノベーションが期待されています。このような変化の激しい世の中において、安全で質の高い看護を提供するために、私たちはどのような学びを進めていけば良いのでしょうか。
本校では、2021年度から看護学教育モデル・コア・カリキュラムに対応した新カリキュラムを展開しています。新カリキュラムでは、入学時早期から地域に足を運び、住み慣れた安心・安全な場所で暮らす人々の生活について、五感を使って感じる「暮らしの体験演習・実習」を取り入れています。この実習では、子どもから高齢者までのあらゆる年代にある人の物の見方や感じ方を生活者の視点から理解し、本当に必要なケアとは何かについて考える教育を大切にしています。また、高度化する医療に対応できる看護職を養成するために、シミュレーターやVRなどのデジタルツールを活用して、実践的な知識と高度な技術を身につけられるシミュレーション教育に取り組んでいます。
しかし、どんなに医療が高度化しデジタル機器やA Iの導入が進んだとしても、人を理解し手のぬくもりを提供する看護の本質は変わりません。これまでも、そして、これからも看護に重要なことは、A Iにはできない「人と対話する力 ”Dialogue” 」です。対話をとおして本当に相手が必要としているケアを共に見つけ出すことが必要です。同様に、チームで共に働く多職種との対話を重視する姿勢も求められています。そのためには、自分の考えを言語化し意見を述べること、相手に関心を寄せること、ひとつの見方にとらわれない想像力、他者の痛みに対する敏感さ、そして、自分自身を客観視し状況に適応していく力を養うことが必要です。
本校は1994年に開学し、これまでに学士課程1637名、修士課程267名の卒業生を送り出してきました。卒業生は、看護師、保健師、助産師、養護教諭、あるいは大学教員として、臨床/教育/研究の場で活躍しています。2020年度から大学院博士後期課程も設置され、たくさんの社会人学生がこれまでの経験をもとに看護を紡ぎ直しています。2024年には開学30周年を迎える愛媛大学医学部看護学科・看護学専攻で、これからの時代に即した新しい看護のかたちを一緒に創造していきましょう。

学科長・専攻長 薬師神裕子

2022年4月1日