CTLA4関連遺伝子と精神神経疾患の関連についての解析のお知らせ

お知らせ

CTLA4関連遺伝子と精神神経疾患の関連についての解析のお知らせ

2020.04.03

CTLA4関連遺伝子と精神神経疾患の関連についての解析

研究概要

精神疾患(統合失調症、うつ病、躁うつ病)は未だに病態が明らかになっておらず、精神疾患および認知症(アルツハイマー病、レビー小体型認知症)においてヒト末梢血で臨床的に十分有用とされるバイオマーカーは明らかにされていません。これまで当科の研究において、上記の精神疾患および認知症患者の血液を用いて、遺伝子の発現解析やメチル化解析を行うことで、それぞれの疾患の病態に関わる遺伝子の発見やバイオマーカーになりうる遺伝子を明らかにしてきました[Nakata Shunsuke et al. 2019, Yoshino Yuta et al. 2017, Mise Ayano et al. 2017.]。そこで今回私たちはCTLA4 (Cytotoxic T lymphocyte associated protein 4) 遺伝子の精神疾患および認知症への関与を検討したいと考えています。CTLA4遺伝子はT細胞刺激受容体のCD28とリガンドを共有して、T細胞の機能に抑制的に働くことで、T細胞の免疫調節に関与することが指摘されています。既報にて統合失調症患者の患者において、血液中のCTLA4 mRNA発現にCTLA4遺伝子の一塩基多型やメチル化が影響を与え、CTLA4 mRNA発現が健常対象者群と比較して増加している可能性を示唆する報告があります[Kordi-Tamandani Dor Mohammad et al. 2013.]。私たちの知る限り、アルツハイマー病とCTLA4遺伝子が関与していることを直接示す報告はありませんが、CTLA4遺伝子と同様にT細胞の免疫調節に関与しているPD-1遺伝子がアルツハイマー病の神経炎症に関わっているという報告があります[Saresella Marina et al. 2012.]。そこで本研究は精神疾患および認知症の簡便な臨床的バイオマーカーを検討することを目的として、CTLA4遺伝子に注目し、当科にすでに保存している患者の血液サンプル(脳とこころの病気の遺伝子解析研究のためのバンク構築 承認番号305)を用いてCTLA4遺伝子の一塩基多型や遺伝子発現、可能であればメチル化率やCTLA4遺伝子に関連する遺伝子発現(PD1CD28)等を対照群と比較し、年齢や性別、罹病期間や発症年齢、内服薬、神経心理学的検査、血液検査等の各種臨床データとの関連を解析したいと考えています。研究結果から、診断の確定、治療の評価、再発の指標となるデータ等を得ることができる可能性があります。また将来的に、疾患に有用なバイオマーカーの作成に役立つことに加え、病因に関わる情報を得ることができる可能性があると考えています。

参考文献

1)Nakata S et al. (2019). Differential expression of the ghrelin-related mRNAs GHS-R1a, GHS-R1b, and MBOAT4 in Japanese patients with schizophrenia. Psychiatry research, 272, 334-339.

2) Yoshino Y, et al. (2017) INPP5D mRNA Expression and Cognitive Decline in Japanese Alzheimer’s Disease Subjects. J Alzheimers Dis. 58(3):687-694

3) Mise A et al. (2017) TOMM40 and APOE Gene Expression and Cognitive Decline in Japanese Alzheimer’s Disease Subjects. J Alzheimers Dis. 60(3):1107-1117

4) Kordi-Tamandani, D. M et al (2013). Evaluation of polymorphism, hypermethylation and expression pattern of CTLA4 gene in a sample of Iranian patients with schizophrenia. Molecular biology reports, 40(8), 5123-5128.

5) Saresella M et al. (2012). A potential role for the PD1/PD-L1 pathway in the neuroinflammation of Alzheimer’s disease. Neurobiology of aging, 33(3), 624-e11.

研究代表者

伊賀淳一 愛媛大学大学院医学系研究科精神神経科学 准教授

施設代表者

上野修一 愛媛大学大学院医学系研究科精神神経科学 教授

研究デザイン

症例対照研究

登録症例規模および研究期間

精神疾患(統合失調症、うつ病、躁うつ病)および認知症(アルツハイマー病、レビー小体型認知症)と診断した患者様で、当院と当院の関連病院、および研究協力機関である徳島大学病院精神科を受診した約800例が対象となります。研究同意に関しては、当院と関連施設で行っている(脳とこころの病気の遺伝子解析研究のためのバンク構築 承認番号305)に基づいて同意を得ています。対照群は精神疾患の既往がなく精神科医の面接により精神疾患がなく健常と判断されたボランティア等約500例とします。新たな侵襲や診察、検査はなく、この研究に用いる資料やデータも、(脳とこころの病気の遺伝子解析研究のためのバンク構築 承認番号305)で得られた血液から抽出したDNARNA、各種臨床データを使用します。本研究のHPでの公開によって研究参加を拒否された場合は除外とします。

  • 患者登録にかかる調査対象期間: 2025 224 日まで
  • データ解析期間:倫理委員会承認時~2025 2 24

研究参加施設

関連病院:大洲平成病院、十全第二病院、双岩病院、JCHO宇和島病院、くじら病院、くろだ病院、財団新居浜病院、四国中央病院、十全第二病院、松山記念病院、松風病院、真光園、西条済生会病院、堀江病院、野村病院、和ホスピタル

研究協力機関:徳島大学病院精神科徳島大学医学部医歯薬学研究部精神医学分野

研究の開示

本研究の結果は、個人が特定できない形式で学術会議や学術雑誌において公表する予定です。なお、本研究の成果物は本研究に登録された患者さまには属しません。

倫理的配慮、個人情報の扱いについて

本研究は愛媛大学大学院医学系研究科等ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理委員会にて承認を受けた方法を遵守して実施されます。本研究は、すでに同意を得て採取している試料やすでに倫理委員会で承認された研究で採取したデータを利用して行う研究であり、対象者へ新たに検査などの侵襲を加えることはありません。また、解析するデータも、個人情報に配慮してすべて匿名化を行うため、対象者への不利益はないと考えています。通常の診療で得られた内容のみを使用する研究ですので、患者さま一人ずつの直接の同意はいただかずに、この掲示になどによる患者さまへのお知らせをもって実施されます。患者さまにおかれましては研究の主旨をご理解頂き、本研究へのご協力を賜りますようお願い申し上げます。

万一、この研究への参加を希望されない場合、途中から参加取りやめを希望される場合には主治医に直接お申し出いただくか、下記の連絡先にご連絡下さい。

また、研究に対しての質問・苦情等がございましたら、下記の連絡先にご連絡下さい。

本研究に関する連絡先

愛媛大学医学部附属病院精神科
伊賀 淳一
Tel: 089-960-5315

 

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