キャダバートレーニングが開催されました
令和7年1月24日に総合臨床研修センターの主催で「研修医のためのキャダバートレーニング」が開催され、19名(研修医10名、医学生5名、他病院の研修医4名)が参加し、腰椎穿刺、気管切開および胸腔ドレナージの手技を習得しました。
数名の研修医より、今回のキャダバートレーニングで実施する手技のシミュレータを用いた事前学習の希望もありました。各自、現時点の知識と技術の確認を行ってから、キャダバートレーニングに参加した研修医もいました。
はじめに地域医療支援センター1階の講義室にて、シミュレータを用いて手技のデモンストレーションおよび手順の確認が行われました。永井勅久先生(医学教育センター)に腰椎穿刺について、使用するデバイスも含めて説明を行っていただきました。続いて佐藤格夫教授(救急科)に、胸腔ドレナージと気管切開について、各手技の流れはもちろん、利用するメスや手術器具の種類、使い分けの理由についても詳しく説明していただきました。
その後、班に分かれて実際にご献体を用いたトレーニングを行いました。
腰椎穿刺では、永井先生に実臨床に則した説明をいただきながら全員が実践しました。さらに清潔野では1人で操作する必要があり、三方活栓の操作、マノメータの取り付け、髄液の採取など、実際にやってみると苦労すると予測される内容に関して、やり方の工夫などについても説明していただきながら実践しました。
気管切開では、研修医代表が実践しました。適宜、佐藤教授に解説いただきながら、参加者全員が気管切開を実施する上で重要な箇所を触れて、少しでも多くの体験ができるように進行していただきました。また、使用するデバイスによっては声帯を傷つけないようにしなければならないなど要所要所でのポイントについても説明いただきました。胸腔ドレナージでは研修医のみならず医学生を含め、全員が肋間を変えて実践しました。
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キャダバートレーニングは愛媛大学が全国に先駆けて導入したご献体を用いた手技向上トレーニングです。医学の発展を願って献体のご意向を示して下さった方、ご遺族への感謝の気持ちを忘れずに本研修を企画させていただいています。今回は指導にご協力いただいた先生方、トレーニング開催に伴いご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。参加者にとって今後の医師業務の糧にしていただけることを願いつつも、さらに今回の貴重な機会を充実した時間に繋げられるように日々精進して参ります。以下、参加者のコメントです。
【参加した研修医のコメント】
・今回は貴重な機会をいただき本当にありがとうございました。腰椎穿刺や胸腔ドレナージは、実臨床で経験したことがあるものの、まだまだ手技に慣れているとは言えない状況でした。その中、このような場で落ち着いて、気を付けないといけないことを説明していただきつつ実践できたことは非常に良い経験となりました。さらに気管切開に関しては、臨床現場で実践はもちろん、見たこともなかったため、自分の知識の手順と比較しながら学ぶことができました。この経験を糧に今後の医師人生に役立てたいと思います。
・シミュレータでの練習とは異なり、穿刺すべき部位にうまく穿刺できない、手順はわかっていても段取りに手間取るなど、実際にやってみてわかることが沢山ありました。実臨床ではもっと緊張感があり、バイタルの崩れなど早急に処置を終わらせる必要があり、今回の経験が今後に活かせると強く感じました。また、他の研修医が実施している場面でも、上手な手技を見て学ぶこともできる機会となりました。今回は本当に貴重な機会をいただきありがとうございました。
・経験したことのない手技を、あらかじめシミュレータを用いて予習していたため、より手順が身についたと感じています。現場で経験したことのある手技についても、ゆっくり教えてもらいながら実践できることで、いつも以上に細かな点に注意しながら実践できました。今後も同様な機会があれば積極的に参加し、医療の現場に還元していきたいです。今回は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
・今回の経験で実際の感触や難しさを感じることができ、普段確認することのできない周囲の解剖やトラブルシューティングも併せて学べる機会となりました。この経験をもとにより一層、知識を深め、手技に精通する医療人となれるように努力して参ります。さらに今回の研修を通して、感謝の気持ちの重要性を改めて感じる機会ともなりました。ご献体いただいたご本人とご家族には貴重な機会をいただきましたことに改めて御礼申し上げます。
・実際にご献体に手技を行うことができ、人体の感触を感じつつ学べただけでなく、人体構造をより具体的に把握できました。実際の患者さんでは緊張してしまうことが容易に想像でき、手技に戸惑う可能性があります。しかし、事前にこのような機会をいただき、少しは落ち着いて手技ができるのではないかと感じています。このような機会を下さった皆様に大変感謝申し上げます。
【参加した学生のコメント】
・学生の時からこのような経験を積むことができて本当に良かったです。予習はしていたつもりですが、実際の人体となると、思っていたより深かったり、硬かったり、滑りが良かったりと感じ方が違っていた点が非常に勉強となりました。今回の体験を忘れないうちに復習して、より現実に近い・正確な知識にしていきたいと思います。またこのような機会があった場合は、積極的に参加して、体験による学習の経験も積んでいきたいです。今回はありがとうございました。
・教科書では、解剖学的な位置の理解が難しかったり、細かい動作についてあまり詳しく記載されていなかったので、実際にご献体で手技を経験させていただいたことでより理解が深まりました。腰椎穿刺での骨にあたる感覚を体験できたことはとても貴重でした。また、同じ膜でも腰椎穿刺で硬膜を穿通する感覚と胸腔ドレーン挿入で胸膜を穿通する感覚が全く異なった点に驚きました。今回は貴重な研修に参加させていただきありがとうございました。
【センター長のコメント】
検査や治療に関わる手技の中には侵襲を伴うものも多く、如何に安全に実施するかが重要です。その点、キャダバートレーニングでは患者さんに実施する前に経験を積むことのできる最も貴重な機会です。本を読み、動画を視聴し、シミュレータに続いてご献体で実践できることは最大限に医療安全に配慮した取り組みです。献体のご意向を示して下さった方、ご遺族への感謝の気持ちを忘れずにこれからも精進してください。