ご挨拶

教授 西原佑
愛媛大学大学院医学系研究科 麻酔・周術期学講座は1976年から初代教授横田晃和先生、二代目教授新井達潤先生、三代目教授長櫓巧先生、四代目教授萬家俊博先生らの指導により発展してまいりました。2024年4月1日より、私、西原佑が当講座を主宰させていただいております。これまでに紡いできた歴史を引継ぎ、より麻酔・周術期医療を維持・発展させ、愛媛県内はもちろんのこと、全国、世界の人たちに貢献できる臨床医、医学者を育てていく所存です。
臨床について
現在、愛媛県において手術麻酔・集中治療・ペインクリニックに従事する麻酔科医は徐々に増えてきてはおりますが、それ以上に手術需要が増えていることによって、相対的にはまだまだ麻酔科医は足りていないのが現状でございます。愛媛県内の中核病院には当講座より麻酔科医を派遣しておりますが、特に松山市内における中核病院はほぼ我々の関連施設になっていただいています。経験できる症例や特徴は施設ごとに異なっており、大学病院を含め様々な施設を経験できるように、各個人からのヒアリングを基に、それぞれの技術や知識の習熟度、家庭事情など様々な事を考慮しながら人事を采配しています。各医療圏におけるニーズに応えながら、多くの医局員が満足のいく働き方や研修が出来るように工夫をしています。
研究について
当講座では神経系を中心とした基礎研究を行っています。主に、脳損傷や脳梗塞、敗血症に伴うせん妄や神経炎症、末梢神経障害痛などについて、グリア細胞を中心とする神経免疫の観点から研究を行っています。当講座の大学院生は、これまで分子細胞生理学講座や免疫学講座等において研究に従事してきました。私をはじめ各卒業生が研究を指導しつつ、2025年4月1日より、分子細胞生理学講座より当講座に迎え入れた2名の新たな研究者中心に、さらに基礎研究を発展させていくための体制を取っております。現在の大学院生2名は免疫学教室において研究を行っておりますが、今後の大学院における進路として、これまでのように基礎系教室でどっぷりと基礎研究を行う道に加え、当講座でしっかりと研究する、もしくは臨床と研究のバランスを取りながら研究する、などの様々な道を提示いたします。
また、臨床研究も進めており、大学院に進学しなくても学位取得が出来るように後方視的研究・前方視的研究いずれかに従事できるような環境整備を進めています。臨床を離れて研究に集中する時間は大切でありますが、臨床を離れてしまうことに不安を覚える医局員にも、安心して研究活動ができ学位取得を目指すことが出来るような体制を構築しています。
教育について
愛媛大学医学部附属病院では、年間約6500件ほどの手術を行っておりますが、そのうち約4900件程度が我々麻酔科の管理下に行われています。特に愛媛県内で当施設のみで行われている手術も多く、人工心臓埋め込み手術、先天性心疾患に対するカテーテル治療や外科手術、肝臓移植など、他施設では経験できない様々な手術の麻酔を担当しております。愛媛大学に加え、愛媛県内の施設も経験することで、麻酔科医として必要な知識や技術などの習得が可能となります。また、教授に就任して以降、様々な大学や医療施設の教授や麻酔科部長との親睦を深めており、医局として国内留学を後押しする方針を進めています。これまでには、国立循環器病センターや兵庫県立こども病院などに医局員を送り、心臓や子供の麻酔を勉強してもらい、専門性を高めてもらっています。今後もさらに多くの施設と連携を図り、産科麻酔・ブロックなど、各医局員の専門性を高めていくための後押しをしてまいります。
教育は将来への投資です。それは臨床だけではなく研究でも同じであり、研究をしたい人、臨床で身を立てたい人、臨床・基礎関係なく全ての医局員が自身の専門性を高め、愛媛県内の医療、世界の医学の発展に貢献できる医師・医学者の育成を行ってまいります。
最後に
私は21年間という当講座を発展させるに十分な時間をいただきました。その反面、21年後の愛媛県の周術期医療に対して大きな責任を担っていることになります。今現在の医療も当然大事ではございますが、今だけではなく、未来を見据えた臨床・研究・教育を行ってまいります。
愛媛県で手術医療をお受けになる患者様、どうぞ安心して手術を受けられてください。当教室の医局員がしっかりと患者様の周術期管理を行い、安全を確保いたします。
麻酔科に興味のある学生さんや研修医の皆さん、どうぞ安心して我々の講座を選んでください。一人一人の成長や生活を真剣に考えた教育と環境を提供いたします。
20年後の愛媛県における周術期医療が明るいものとなるよう、尽力してまいります。
愛媛大学大学院医学系研究科 麻酔・周術期学講座 教授
西原 佑