授業

《参考資料》

大学院生用参考資料

   大学院生講義「がんの疫学」ハンドアウト

医学部生用参考資料

  愛媛大学医学部生用悪性リンパ腫授業プリント2022

《授業予定》

 

《授業実績》

令和5年10月2日(月)・3日(火)・4日(水)・5日(木)・6日(金)
医学部医学科第3学年 集中講義「臨床腫瘍学」
担当教員:筑波大学 木澤 義之、めぐみ在宅クリニック院長 小澤 竹俊、
戸田中央総合病院 相羽 惠介、昭和大学 髙宮 有介
本学 今井 祐記、丸田 雅樹、薬師神 芳洋、藤井 知美

 

令和4年10月3日(月)・4日(火)・5日(水)・6日(木)
医学部医学科第3学年 集中講義「臨床腫瘍学」
担当教員:筑波大学 木澤 義之、めぐみ在宅クリニック院長 小澤 竹俊、戸田中央総合病院 相羽 惠介
本学 今井 祐記、丸田 雅樹、薬師神 芳洋、藤井 知美

 

令和3年10月4日(月)・5日(火)・6日(水)・7日(木)・8日(金)
医学部医学科第3学年 集中講義「臨床腫瘍学」
担当教員:神戸大学 木澤 義之、めぐみ在宅クリニック院長 小澤 竹俊、
本学 今井 祐記、丸田 雅樹、薬師神 芳洋、藤井 知美

 

令和元年9月30日(月)・10月1日(火)・2日(水)・3日(木)・4日(金)
医学部医学科第3学年 集中講義「臨床腫瘍学」
担当教員:神戸大学 木澤 義之、めぐみ在宅クリニック院長 小澤 竹俊、
南松山病院 児島 洋、戸田中央総合病院 相羽 惠介、
本学 今井 祐記、佐野 由文、薬師神 芳洋、藤井 知美

 

平成30年10月1日(月)・2日(火)・3日(水)・4日(木)・5日(金)
医学部医学科第3学年 集中講義「臨床腫瘍学」
担当教員:神戸大学 木澤 義之、めぐみ在宅クリニック院長 小澤 竹俊、
南松山病院 児島 洋、関西電力医学研究所 東山 弘子、
本学 今井 祐記、薬師神 芳洋、藤井 知美

 

平成29年10月2日(月)・3日(火)・4日(水)・5日(木)・6日(金)
医学部医学科第3学年 集中講義「臨床腫瘍学」
担当教員:神戸大学 木澤 義之、めぐみ在宅クリニック院長 小澤 竹俊、
本学 今井 祐記、佐野 由文、薬師神 芳洋、藤井 知美、河添 仁

 

平成28年10月3日(月)・4日(火)・5日(水)・7日(金)
医学部医学科第3学年 集中講義 「臨床腫瘍学」
担当教員:神戸大学 木澤 義之、めぐみ在宅クリニック院長 小澤 竹俊、南松山病院 児島 洋、
本学 野元 正弘、今井 祐記、佐野 由文、薬師神 芳洋、藤井 知美、河添 仁

 

平成27年4月28日(火) 2限 10:20~11:50(城北キャンパス)
共通教育初年次科目「こころと健康」 -がんと治療とそれに伴う問題について-
担当教員:薬師神 芳洋

高校大学連携授業 【がんという病気にかかわる様々な問題】 担当教員:薬師神 芳洋

 

平成27年9月28日(月)・29日(火)・30日(水)・10月2日(金)・7日(水)
医学部医学科第3学年 集中講義 「臨床腫瘍学」
担当教員:福岡大学 田村 和夫、神戸大学 木澤 義之、四国がんセンター 谷水 正人、南松山病院 児島 洋、
本学 佐野 由文、今井 祐記、野元 正弘、薬師神 芳洋、藤井 知美

 

《課外授業》
愛媛大学臨床腫瘍学講座ホームページで示す「がん診療」のテクニック

(その1)「がん診断と患者へのアプローチ」

(はじめに)
病歴の把握、更には既往歴や家族歴の問診から理学的所見、検査・診断・治療に及ぶ一連のアプローチは、がん診療においても極めて重要です。この一連の手技・手法の中で注意すべき点を愛媛大学臨床腫瘍学講座が概略してみます。

(患者さんを診察するまでに)
現在の日本の診療システムではがんの診断を入院で行うことは希です。即ち、外来の限られた診察時間内に診断医の能力を最大限に引き出す環境がとても重要です。多くの場合、患者さんは一次医療圏の病院から紹介状を持って受診します。この場合、前医のデータからある程度疾患を絞り込む事が可能です。問題は、精査のされていない患者さん、特異的とは言えない症状を訴える新患患者さんです。受診時、患者さんは疾患特異的な症状や非特異的な症状を訴えます(多くの場合羅列されます)。診察と処置で多忙な再診患者の合間に、患者さんの訴えを論理的に把握することは至難の業です。緊急の場合を除き、新患患者さんを再診患者の合間に診察することは避けましょう。場合によっては、十分な診療時間を持つことを約束して再診予約を入れましょう。それほど、がんを疑う患者さんの初期の診察は慎重であるべきです。

(初診患者の問診)
初期のがん患者さんに特徴的な主訴や症状はありません。必ず鑑別診断をあげる必要があります。原因不明の体重減少の患者さんでは、もちろん悪性腫瘍をあげるべきですが、同時に、糖尿病、甲状腺機能亢進症、慢性の疲労性疾患や結核を念頭に入れて問診をする必要があります。この際、患者さん自身の既往歴ならびに家族歴を把握する事は、鑑別診断を行うための重要なヒントとなります。年齢、生活歴、嗜好品、さらには職業や出身地、症状を指摘する人物がいるかどうか(客観的な症状であること)も重要です。また、こういった問診の際には、同席者不在の場合に本音が聞ける場合もあります。がんを極端に不安視するパーソナリティーの患者さんもいらっしゃいますが、こういったいわゆる「不安神経症」は除外診断であることを心すべきです。また、患者さんをサポートするキーパーソンは誰か、また患者さんの経済状態や病院までの距離や交通手段、居住地の医療機関や家庭医の存在などは今後患者さんと接していく上でとても重要な情報です。

(診察)
現代医療の中で最も軽視されがちな分野です。
すぐに対応すべき疾患であるかは、バイタルサインと全身状態(Performance Status; PS)、更に主治医の(経験からの)印象で決まります。特に、上大静脈症候群や心タンポナーゼなどの転移性腫瘍による心血管系の合併症、低酸素症を生じた呼吸器がん、出血を伴う消化器がん、がんの脊髄浸潤や圧迫による神経症状などは緊急処置を要するOncology Emergency(OE)です。対応を急がねばならなりません。また診察室での患者さんの体調にも常に気を配りましょう。

OEを除けば患者さんの頭から足先までじっくり診察します。身長、体重、血圧、脈拍、呼吸数、体温を診ます。PSも重要なチェック項目です。「見る(視診)」「触る(触診・打診)」「聞く(聴診)」を丁寧に行うには熟練した技術が必要です。一方で注目したいのは、この一連の手技に伴う「間」です。診察室の中で患者さんやご家族と対峙する時、唯一沈黙出来るのはこの診察手技の時間です。得られた所見から次に何を疑い行動(診察)するか集中し思考します。診断学の教科書には頭頸部から下肢にかけての順序だった診察手技が述べられていますが、これにこだわる必要はありません。

(検査)
全ての病院で施行できる初期検査で情報が多いのは血液検査です。
がん患者さんの半数が貧血を示します。慢性疾患では貯蔵鉄利用が低下(血清鉄は低下しフェリチンは上昇)し赤血球寿命は短縮。さらに担がん状態に伴う炎症性のサイトカインはエリスロポイエチン産生を抑制し、患者さんは正球性・正色素性貧血を伴います。これに慢性の出血が伴うと血球は小球性に転じます。一方、多血症は、エリスロポイエチンの産生増加を伴う腎がん、肝がん、子宮・卵巣がん、後頭蓋窩腫瘍(Hemangioblastoma)に合併する場合があります。血液がんを除き、がん初期に白血球異常を伴うことは殆どありません。一方、白血球の増加とリンパ球の相対的低下は多くの進行がんで認められます。また、血小板数は慢性炎症を反映して増加傾向となります。しかし、骨髄がん腫症やDIC(播種性血管内凝固症候群)を伴う進行がんの場合、産生能低下や消費の亢進から血小板は低下します。脾臓は血小板の30%をプールしプール量は脾サイズに比例します。即ち、脾腫を伴う血液がん、肝胆道系のがん、転移性の脾腫瘍・血管肉腫では、初期においても血小板は低下します。
逸脱酵素(AST, ALT, LDH, AlP, γ-GTP等)の変化は相対的に把握する必要があります。ALTの上昇を伴わないLDHの上昇は肝疾患以外を疑い、γ-GTPの上昇を伴わないAlPの上昇は骨病変を疑う必要があります。この際アイソザイムの測定は有益で、たとえばLDH2,3の上昇は血液がんを疑う所見であり、LDH1,2の上昇は心筋疾患のみならず、胚細胞腫瘍や胎児性腫瘍を念頭に入れます。またAlPは、正常成人でAlP2>AlP3、正常小児でAlP2<AlP3となりますが、AlP1の出現は悪性腫瘍による肝外性の閉鎖性黄疸や転移性肝がんを疑う所見です。
腫瘍マーカーを診断やスクリーニングに用いることは適切ではありません。全ての腫瘍マーカーは早期のがんで通常陰性であり、病期に従って陽性率が上昇します。前立腺がんのPSA、肝芽細胞腫のAFP、絨毛がん・奇形種のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)等を除き、がんを特定出来る腫瘍マーカーは乏しいと言わざるを得ません。また、全ての腫瘍マーカーは非がん状態でも増加(擬陽性)します。非ホジキンリンパ腫患者で使用される可溶性インターロイキン-2レセプター(sIL-2R)は、ウイルス肝炎の存在や活動性の膠原病患者では全例が上昇し、免疫応答に応じて変動する非特異的マーカーです。
その他考慮すべき検査としては、現有臓器能のチェックです。特に心機能、肝腎機能の評価は薬物療法を行う上で重要であり、免疫抑制効果のある薬物やステロイド剤を使用する際、HBウイルスのスクリーニングを行うことは重要です。

(画像診断)
病気の大きさや広がり具合を把握するには画像検査は有益です。超音波検査や内視鏡、CTやMRIからFDG-PET(Positron Emission Tomography)まで様々です。特にPETは現代のがん診療において無視できない領域にあります。ただ、このPETの弱点も把握しておく必要があります。例えば、糖尿病患者さんの場合、あるいは胃がんの一部(特にsignet-ring-cell cancer)、細気管支肺胞上皮がん、肝細胞がん、腎細胞がん、脳腫瘍、膀胱がんなどは、生体内の血糖の上昇・腫瘍の性質や糖代謝・解剖学的な問題から検出感度は低く、腸管や炎症性疾患への生理的なFDGの集積、更に良性腫瘍でも擬陽性としての所見を示します。また、PET検査を行うには保険上がんの確定診断が必須であり、極めて高価な検査であることも心しましょう。

(生検・病理診断)
がん診断には病理検査は必須です。しかも、非侵襲的な細胞診から侵襲の高い針生検・open biopsyまで様々です。病理診断医は確定診断をするために多くの診断材料を希望し、臨床家(主治医)はその侵襲性から最小限を主張する傾向があります。もちろん低侵襲は理想であるものの、十分なインフォームド・コンセントの基に、確実性の高いopen biopsyをためらってはいけません。信頼のおける病理医は、診断の際に臨床所見を問い合わせる傾向があります。診断時に臨床医の意見を反映します。病理検体の提出の際には簡潔で的を得た臨床コメントを添付しましょう。また、必要に応じて連絡出来るように主治医の電話番号を記載しましょう。場合によっては病理診断(sign-out)に参加する熱意も必要です。こういった配慮は必ず患者さんの的確な確定診断に反映されるものです。

(キーポイント)
・ 初期のがんには特有の症状が乏しい。このため鑑別診断をあげ多くの可能性を模索します。
・ Oncology Emergency(OE)を例外として、時間をかけた問診と診察を行い、次いで画像検査を試みます。
・ PET-CTにも弱点があります(一つ一つ述べられますか?)。
・ 病理診断は治療の始まりです。病理医との十分なコンタクトが必要です。