野元先生雑感

2018年03月05日

春分(しゅんぶん)姿勢について 3月21日

3月21日 春分

19日に桜の開花が宣言された。愛媛県の基準木は道後公園にある。隣の桜が先に咲くこともあるが、開花宣言は基準木が咲くまで待っている。また、この日にテニスの大阪なおみが優勝した。完勝であった。スポーツの国際大会では全体に日本の女子の成績が良い。男子も頑張っていると思うのだが。社会での働き方の関係であろうか。

 

姿勢について

私たちの姿勢は、加齢によっても病気によっても前傾となりやすい。病気の診断につながる重要な医学的所見であり、神経学的診察時には姿勢の状態を観察して所見用紙に記録している。

ヒトの祖先はアフリカで誕生したといわれている。それまで樹木上で生活していたが、大火災等のため樹木が少なくなり、地上での生活を始めたといわれる。地上に降りて二本足で立つようになり、樹木に掴まる必要のないことから前足は手として発達し、結果として脳が大きくなり発達したと考えられている。脳が発達して高度の文明を築くことができたが、身体的には膝と腰の負担が大きくなり、私たちは人生の後半で変形性膝関節症と脊柱管狭窄症が増えてきた。また2本足で起立することにより転倒が増えた。直立歩行では後方へのバランスが特に不安定となり、転ぶと怪我につながりやすい。ヒトが加齢により前かがみとなるのは、転倒を防ぐ防御姿勢ともいえるだろう。また、歩行時には左右への足幅(歩隔)が広くなる。これも転倒を防ぐ防御態勢といえる。

このような姿勢はヒトが長寿を達成したための知恵ともいえるが、ただ、前傾姿勢は腰や項部の筋を使うために、腰痛や項部痛、頭痛を引き起こしやすい。日々の診療ではストレッチやリハビリを勧めている。歩くときには転倒予防が一番大事なので姿勢のことは、あまり意識してはいられない。このために、座っているときや、掴まるもののある時にストレッチを毎日実施することを勧めている。また、普段の生活では、なるべくお辞儀をしないようにも勧めている。お辞儀をすると前傾姿勢が強くなり、かつその後も持続してしまうためである。多くの方は60歳以上であり、お辞儀をしなくても、それほど、失礼に当たらないと思う。その分、声を出して挨拶し、かつ、笑顔で声を掛けて挨拶することを勧めている。

前傾姿勢の強い方では、治療薬も大事な手段であるが、薬物治療とともに毎日の暮らし方とストレッチを工夫をしてみてほしい。