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臨床研究「膠芽腫手術における3D-CEST(chemical exchange saturation transfer)イメージングの有用性に関する観察研究 」の結果報告について
お知らせ
愛媛大学医学部附属病院では、医学・医療の発展のために様々な研究を行っています。その中で今回示します以下の研究では、以前にお知らせ致しましたように、当科にて加療を行った患者さんのカルテ記録や画像情報を使用致しました。この研究に関しては当科にて解析が既に終了しており、「Acta Neurochirugica (Wien)」に結果を公表致しております。内容の詳細を知りたい方は、下記【お問い合わせ先】までご連絡下さい。
【研究課題名】
膠芽腫手術における3D-CEST(chemical exchange saturation transfer)イメージングの有用性に関する観察研究
【研究機関】愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科
【研究責任者】井上明宏(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科 講師)
【研究代表者】井上明宏(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科 講師)
【研究の目的】
膠芽腫の治療において DNAメチル化剤であるテモゾロミド(TMZ)の導入は大きな転機でしたが、TMZ 耐性症例も多く化学療法剤単独による膠芽腫治療への限界が示唆されています。また、本邦ではBCNU wafer、Bevacizumab(ベバシズマブ)、光線力学療法、Novo-TTFといった膠芽腫に対する新たな治療法が認可され注目を集めていますが、依然として膠芽腫の予後は不良であるままです。これまでに私達は、膠芽腫の浸潤先端に存在している腫瘍幹細胞(glioma stem like cell:GSC)の中で幹細胞マーカーであるCD44を高発現するGSCは浸潤性が著しく高く、治療抵抗性であることを証明してきました。また、本細胞群はPET画像におけるメチオニン集積度が対側比で1.4以上の部位に存在することも突き止めています。これらのことを総合すると、理論的にはPETにおけるメチオニン集積度が対側の1.4以上の部位を初回手術時に切除することが膠芽腫患者さんの予後改善効果に寄与することは明白と思われますが、メチオニンを用いたPETは侵襲的な手法であることに加え、本邦では保険収載されておらず、現状では一般診療に導入することは困難と言わざるを得ません。そこで、私達はPETの代替方法として、MRI sequenceの1つであるCEST(chemical exchange saturation transfer)を用いたアミドプロトン解析を提唱しました。これまでの自験例の検討結果から、CESTイメージングは、膠芽腫患者においてメチオニンを用いたPET画像と同様にCD44高発現GSCの存在部位を可視化できることが証明されています。そこで、この新たなCESTイメージングを3D構築できるように撮像し、収集された画像を脳神経外科手術において一般的に使用されているナビゲーションシステムに組み込むことが出来れば、PET画像を利用することなく、保険診療範囲内でのGSCを含めた最大限の腫瘍摘出が可能となり、膠芽腫患者の治療効果の改善につながるのではないかと考えました。すなわち、本研究は膠芽腫患者さんにおいて3D-CESTイメージングをナビゲーションシステムを用いた手術に応用することで、膠芽腫の新たな治療戦略を開発することを目的とします。
【研究の方法】
(対象となる患者さん)2023年12月から2025年3月に愛媛大学医学部附属病院で手術を含む標準治療を施行予定の膠芽腫患者さん
(利用するカルテ情報)性別、年齢、発症時期、合併症、既往歴、身体所見、血液検査データ、画像検査データ(CEST画像、PET画像を含む)、治療状況、腫瘍データ(遺伝情報を含む)等
(利用する手術摘出組織情報)通常の手術で取得した腫瘍組織を用いて幹細胞マーカーであるCD44を含む各種分子マーカーを測定し解析致します。
【研究結果の公表】
【個人情報の取り扱い】
収集した試料・情報は名前、住所など患者さんを直接特定できる情報を除いて匿名化いたします。個人を特定できるような情報が外に漏れることはありません。また、研究結果は学術雑誌や学会等で発表される予定ですが、発表内容に個人を特定できる情報は一切含まれません。
<試料・情報の管理責任者>
愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科 氏名 井上明宏
さらに詳しい本研究の内容をお知りになりたい場合は、【お問い合わせ先】までご連絡ください。他の患者さんの個人情報の保護、および、知的財産の保護等に支障がない範囲でお答えいたします。
【お問い合わせ先】
愛媛大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学 講師 井上明宏
791-0295 愛媛県東温市志津川454
Tel: 089-960-5338