愛媛大学医学部 脳神経外科学

研究紹介

脳腫瘍② シグナル伝達

これまでに、悪性腫瘍の浸潤・転移について様々な分子やシグナル伝達に関する研究が盛んに行われてきました。中でも、matrix metalloprotease (MMP) 2やその活性化に関わるMMP14の関与が重視され、阻害剤を悪性腫瘍の治療に応用することが目指されてきましたが、臨床応用には至っていません。一方、正常組織や良性腫瘍の細胞が周囲への浸潤や遠隔臓器への転移をしない理由は現在でも明らかにされていません。我々は、ラットC6グリオーマ細胞を用いた遠隔転移モデルにより、転移しない細胞に高発現するタンパク質として、Chloride intracellular channel protein (CLIC) 2に着目しました。

CLIC2はマウスにそのゲノムがないこともあって、最も研究が進んでいないCLICファミリータンパク質ですが、最近我々の研究も含めてがんの予後改善と関係することが示唆されています。ラットを用いた実験系(Figure 1)と臨床研究(Figure 2)の双方で、CLIC2高発現が腫瘍の予後を改善することを示し、そのメカニズムはMMP14阻害にあることを見出しました。また、イオンチャネルタンパク質とされ、膜結合型として存在するものと考えられてきたCLIC2が細胞外に分泌されていることも明らかにしました。CLICファミリータンパク質は後生動物に広く保存されていることから、良性腫瘍のみならず正常組織の細胞が他所へ浸潤転移することを抑制している可能性も考えられ、詳細な分子メカニズムについて研究を継続しています。

 Figure 1 CLIC2 suppressed metastasis and invasion in the rat tumor models.
a) Survival of the rats up to 42 days after brain tumor cell transplantation. n=21 (C6), 23 (empty), and 25 (CC= C6 cells highly expressing CLIC2).
b) Brain tumor tissues stained with hematoxylin and eosin.

Figure 2 CLIC2 was highly expressed in benign human tumors.
c) Representative immunohistochemical staining for CLIC2 in grade I, II, and III meningioma tissue sections.
d) High CLIC2 expression was correlated with longer progression-free survival in patients with meningiomas and GBM.

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