愛媛大学医学部 脳神経外科学

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臨床研究「中枢神経原性悪性リンパ腫における早期治療介入のための効果的な診断方法の確立に関する観察研究」の結果報告について

更新日:2024/10/18

お知らせ

 

愛媛大学医学部附属病院では、医学・医療の発展のために様々な研究を行っています。その中で今回示します以下の研究では、以前にお知らせ致しましたように、当科にて加療を行った患者さんのカルテ記録や画像情報を使用致しました。この研究に関しては当科にて解析が既に終了しており、「Acta Neurol Belgica」に結果を公表致しております。内容の詳細を知りたい方は、下記【お問い合わせ先】までご連絡下さい。

 

【研究課題名】

中枢神経原性悪性リンパ腫における早期治療介入のための効果的な診断方法の確立に関する観察研究

 

【研究機関】愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科

 

【研究責任者】井上明宏(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科 講師)

 

【研究代表者】井上明宏(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科 講師)

 

【研究の目的】

 中枢神経系原発悪性リンパ腫(以下、脳悪性リンパ腫)の標準治療は、大量メソトレキセート療法などの化学療法に引き続き全脳照射を行うことですが、最近では分子標的治療薬であるチラブルチニブや、大量化学療法併用の自家末梢血幹細胞移植の有用性も報告され、その治療方法は多岐に渡っています。一方で、この病気における手術の目的は、生検手術により組織診断を確定することであり、疑いのある患者さんには、画像評価、血液/髄液検査に加えて生検手術を早急に行う必要性があるのですが、典型的な画像所見を呈さない場合もしばしば存在し、時に他の病気との鑑別に苦慮することもあります。このような場合には、術中の迅速病理診断が極めて重要となり、迅速病理診断で確定すればその時点で手術は終了となりますが、その他の悪性腫瘍と診断された場合には可能な限りの摘出を目指した追加切除が必要になるため、術中の迅速病理診断は本疾患において極めて重要なウエイトを占めています。さらに、この腫瘍は増大速度が極めて高い腫瘍であり、急激に意識障害が進行し、数日で死に至る危険性も高く、診断から治療までの期間を出来るだけ短くする努力が必要になりますが、生検手術の場合は診断に十分な検体が得られないことも多く、従来の診断のみではその精度に限界があり、最終的な病理診断の結果が確定するまで化学療法を用いた治療を控えないといけないのが実情です。一方で、脳悪性リンパ腫の病理組織型は大部分がCD20陽性のびまん性大型B細胞性リンパ腫であるため、術中迅速診断に免疫組織診断を併用すれば、生検手術による術中迅速診断の精度を向上させることだけでなく、手術時間の短縮に加え不要な腫瘍摘出を防ぐことが出来るのではないかと考えました。そこで、我々は2021年1月から術中迅速免疫組織診断を導入しておりますが、現在のところ、本方法を導入することで、生検手術時における迅速診断の的中率は100%であり、免疫組織染色の導入は極めて有用な手法であると考えていますが、やはり最終の確定診断ではないため、偽陽性である可能性も常に付きまとっています。そこで、可能な限り偽陽性を減らす手段として、我々は、既に一般化された手法であるフローサイトメトリーに着目しました。術中に迅速免疫組織染色と並行して、フローサイトメトリーを行うことで、迅速組織診断における偽陽性を減らすことは十分に可能であると考えており、生検手術後の化学療法開始に要する時間が飛躍的に短縮されると思っています。そこで、当院において治療を施行した脳悪性リンパ腫患者さんの摘出腫瘍組織をフローサイトメトリーを用いて評価し、術中の迅速免疫組織染色を含む病理診断結果や画像所見と共に解析することで本仮説を検討したいと考えています。すなわち、本研究は脳悪性リンパ腫患者さんの術中の摘出組織を用いて、早期に治療介入を行うための効果的な診断方法の確立を行うだけでなく、脳悪性リンパ腫に対する新たな治療戦略を開発することを目的とします。

 

【研究の方法】

(対象となる患者さん)2021年1月から2024年3月に愛媛大学医学部附属病院を受診された方のうち脳悪性リンパ腫と診断された患者さん

(利用するカルテ情報)性別、年齢、発症時期、合併症、既往歴、身体所見、血液検査データ、画像検査データ、病理組織検査データ、フローサイトメトリー検査データ、治療状況、腫瘍データ(遺伝情報を含む)等

(利用する手術摘出組織情報)通常の診療手術で取得した術中腫瘍組織を用いて解析致します。

 

【研究結果の公表】

* Inoue A, Miyazaki Y, Watanabe H, Nishikawa M, Kusakabe K, Ohnishi T, Taniwaki M, Honda T, Kondo T, Kinnami S, Katayama E, Shigekawa S, Kurata M, Kitazawa R, Kunieda T. (2024) Reliable intraoperative diagnostic methods for PCNSL: utility of combining intraoperative immunohistochemistry, cytology, and flow cytometry in achieving optimal treatment. Acta Neurol Belg: 2024; Sep 21. doi: 10.1007/s13760-024-02637-3.

 

【個人情報の取り扱い】

 収集した試料・情報は名前、住所など患者さんを直接特定できる情報を除いて匿名化いたします。個人を特定できるような情報が外に漏れることはありません。また、研究結果は学術雑誌や学会等で発表される予定ですが、発表内容に個人を特定できる情報は一切含まれません。

 

<試料・情報の管理責任者>

  愛媛大学医学部附属病院  脳神経外科  氏名 井上明宏

 

さらに詳しい本研究の内容をお知りになりたい場合は、【お問い合わせ先】までご連絡ください。他の患者さんの個人情報の保護、および、知的財産の保護等に支障がない範囲でお答えいたします。

 

【お問い合わせ先】

愛媛大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学 講師 井上明宏

791-0295 愛媛県東温市志津川454

Tel: 089-960-5338

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