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臨床研究「MRS(magnetic resonance spectroscopy)を用いた膠芽腫における脳腫瘍関連てんかん患者の予測に関する観察研究」の結果報告について
お知らせ
愛媛大学医学部附属病院では、医学・医療の発展のために様々な研究を行っています。その中で今回示します以下の研究では、以前にお知らせ致しましたように、当科にて加療を行った患者さんのカルテ記録や画像情報を使用致しました。この研究に関しては当科にて解析が既に終了しており、「Biomedicines」に結果を公表致しております。内容の詳細を知りたい方は、下記【お問い合わせ先】までご連絡下さい。
【研究課題名】
MRS(magnetic resonance spectroscopy)を用いた膠芽腫における脳腫瘍関連てんかん患者の予測に関する観察研究
【研究機関】愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科
【研究責任者】井上明宏(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科 講師)
【研究代表者】井上明宏(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科 講師)
【研究の目的】
膠芽腫の治療においてDNAメチル化剤であるテモゾロミド(TMZ)の導入は大きな転機でしたが、TMZ耐性症例も多く化学療法剤単独による膠芽腫治療への限界が示唆されています。また、本邦ではBCNU wafer、Bevacizumab(ベバシズマブ)、光線力学療法、Novo-TTFといった膠芽腫に対する新たな治療法が認可され注目を集めていますが、依然として膠芽腫の予後は不良であるままです。しかしながら、これらの治療の進歩により治療合併症が軽減されたことは事実であり、外来通院が出来るまでに全身状態が改善する患者さんも多数存在しており、余命が限られた膠芽腫患者さんの生活の質(QOL)を大切にすることは重要な懸案事項であります。膠芽腫患者さんのQOLを損なう原因の1つにてんかん発作が挙げられますが、現時点では予防的な抗てんかん薬の投与の根拠はなく、無意味な薬物投与は患者さんの社会生活に影響を与えかねません。そこで、膠芽腫患者さんにおいててんかん発作を起こし易いグループを予測することが出来れば外来診療において極めて有用なツールになるのではないかと考えています。一般的には神経膠腫のてんかん発作の病態にはグルタミン酸が介在するとされており、特に腫瘍辺縁部では、正常な細胞の障害によりグルタミン酸の吸収が低下していることが報告されています。このことから我々は、腫瘍辺縁部のグルタミン酸の値を評価すれば てんかん発症が予測可能ではないかと考えており、グルタミン酸を含む各種の液性成分の存在量を、非侵襲的な方法(具体的にはLC-model algorithmを用いたMRS)で把握することが出来れば、膠芽腫患者さんのてんかん予測や治療改善にもつながるのではないかと推測しており、当院で経験した膠芽腫患者さんの摘出腫瘍組織や画像所見を解析することで本仮説を検討したいと考えています。すなわち、本研究は膠芽腫患者さんにおいてMRS画像を評価することで、てんかん発作の予防に対する膠芽腫の新たな治療戦略を開発することを目的とします。
【研究の方法】
(対象となる患者さん)2017年4月から2022年3月に愛媛大学医学部附属病院を受診された方のうち膠芽腫と診断された患者さん
(利用するカルテ情報)性別、年齢、発症時期、合併症、既往歴、身体所見、血液検査データ、画像検査データ(MRS画像を含む)、治療状況、腫瘍データ(遺伝情報を含む)等
(利用する手術摘出組織情報)通常の手術で取得した腫瘍組織を用いて幹細胞マーカーであるCD44を含む各種分子マーカーおよびグルタミン酸を測定し解析致します。
【研究結果の公表】
【個人情報の取り扱い】
収集した試料・情報は名前、住所など患者さんを直接特定できる情報を除いて匿名化いたします。個人を特定できるような情報が外に漏れることはありません。また、研究結果は学術雑誌や学会等で発表される予定ですが、発表内容に個人を特定できる情報は一切含まれません。
<試料・情報の管理責任者>
愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科 氏名 井上明宏
さらに詳しい本研究の内容をお知りになりたい場合は、【お問い合わせ先】までご連絡ください。他の患者さんの個人情報の保護、および、知的財産の保護等に支障がない範囲でお答えいたします。
【お問い合わせ先】
愛媛大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学 講師 井上明宏
791-0295 愛媛県東温市志津川454
Tel: 089-960-5338