愛媛大学大学院医学系研究科 器官・形態領域 泌尿器科学 愛媛大学大学院医学系研究科
器官・形態領域 泌尿器科学 Department of Urology Ehime University Graduate School of Medicine.

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泌尿器の病気MEDICAL INFORMATION

腎がん

腎がんとは

腎臓とは、腰の高さに、背中の左右ひとつずつある臓器です。その働きは血液を濾過して尿を作り、水、電解質、老廃物を排泄する重要な臓器です。そのほかにも、血圧の調節をしたり、ビタミンの活性に関わったり、血を増やす物質を作ったりもします。
腎臓には腎血管脂肪腫やオンコサイトーマといった良性腫瘍もできることがありますが、腎臓にできる腫瘍の約90%は悪性腫瘍(腎細胞がん)です。毎年10 万人あたり8~10人程度の発生率といわれています。男性が女性の2倍多い傾向にあります。喫煙、性、ホルモン、遺伝子などが危険因子として考えられています。また、透析患者さんに高率に発生することも報告されています。

腎がんの症状

古くから3大症状として、腹部腫瘤、疼痛、血尿が言われていますが、これら全てが揃うことはあまり多くありません。むしろ最近はより小さな腫瘍が人間ドックや検診で発見されることが増えてきています。初期の段階では無症状のことがほとんどです。しかし、転移など進行した状態で発見されることもあり、発熱、全身倦怠感、体重減少などをきたすことがあります。

腎がんの検査

腎がんに特徴的な血液の検査はありません。画像診断が中心になります。

超音波(エコー)検査

最も簡便で、最も患者さんの負担にならない検査です。小さな器具(プローべ)をおなかや背中にあてて、体内の臓器を調べる検査です。また、血流を見ることができるドップラーエコー検査で、血流が豊富に流れている様子が見られます。

CT検査

身体の断層写真を撮ることによって、超音波検査よりも腫瘍の性状や拡がりを見ることができます。また、周辺や離れた場所への転移を見つけるためにも役立ちます。造影剤を使ったCT検査(ヨードアレルギーがある方はできません)では、より腫瘍の様子が明らかになります。

  • 単純CT
  • 造影剤を使用したCT

MRI検査

CT検査だけでは診断がむずかしい症例などに対しておこなう検査です。強力な磁気(磁場)を使って断層像をさまざまな方向から映し出します。造影剤が使えない方にもできる検査ですが、ペースメーカーなど身体に金属を埋め込んでいる方にはできません。

  • 輪切りに断層写真を撮ったもの
  • 縦切りに断層写真を撮ったもの

その他の検査

[排泄性腎盂造影]
造影剤を注射して尿路(おしっこの通り道)との関係を見たり、腎盂腫瘍(腎臓の中心部の尿の通り道の腫瘍)と鑑別します。

[血管造影]
腎臓や腫瘍内の血管の様子を調べたり、腫瘍の血管を薬剤やコイルで詰めたりする時にします。通常入院が必要になります。

腎がんの進行度

Ⅰ期:腎臓内に限局している7cm以下のがん
Ⅱ期:腎臓内に限局している7cmより大きいがん
Ⅲ期:腎臓周囲の組織(脂肪・血管)に拡がっていたり、1つのリンパ節に転移しているもの
Ⅳ期:腎臓周囲の筋膜(Gerota筋膜)を超えたり、2個以上のリンパ節に転移したり、他の臓器に転移したもの

腎がんの治療

手術

[根治的腎摘除術]
腎周囲脂肪組織を含め、腫瘍を含んだまま腎臓を全摘出する方法です。

[腎部分切除術]
病巣とその周囲の腎臓の組織の一部を切除する方法です。腎部分切除術を行うことで、腎機能を保つことが可能となります。病巣が小さい(7cm未満の場合は、ロボットを用いた腎部分切除を行うことが可能です。

腎凍結療法

CTを用いて病巣に専用の針を刺すことで腎がんを凍結させ死滅させる方法です。

免疫療法

インターフェロン療法(皮下注射)やインターロイキン療法(点滴注射)などがあり、転移症例に使用します。
次に述べる分子標的治療薬が使用できるまでは主要な治療薬でしたが、現在は、肺転移のみの方に使用することが多くなっています。

薬物療法

遠隔転移を有する症例や摘除不能な腎がんの場合、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた全身化学療法が一般絵的です。正常な細胞とがん細胞のどちらも攻撃する従来の抗がん剤とは異なり、分子標的治療薬はがん細胞の増殖に関わる因子(分子)を標的として治療する薬です。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんの免疫サイクルに作用することで、がん細胞を異物と認識させ自分の免疫細胞によってがん細胞を死滅させる薬です。

放射線療法

転移部位に放射線を照射する場合があります。

腎がんの治療効果

がんの種類や、進行速度によっても異なりますが、一般にはⅠ期、Ⅱ期の腎臓に限局している場合は5年生存率(5年間生きられる確率)が約90%といわれています。ただし、Ⅲ期では約70%、Ⅳ期では約30%と悪くなってしまいます。免疫療法の効果は一般には10~20%といわれています。早期発見によって治癒率が高くなります。