看護師特定行為研修『臨床推論』の実習が行われました。-愛媛大学医学部附属病院総合臨床研修センター

看護師特定行為研修『臨床推論』の実習が行われました。

総合臨床研修センターは『総合』と銘打っておりますが、実際に看護師の育成にも関わっております。愛媛大学医学部附属病院では、今秋より看護師特定行為研修を開始し、愛媛県内の看護師5名(全員10年以上の経験)が研修を開始しました。修了後には、医師の指示のもと看護師が様々な高度な医療行為を行うことができる様になります。研修はe-learningを基本としますが、単元毎に実習やテストがあり、当院へ来院しなければなりません。

当センターの熊木天児センター長は、トロント大学消化器内科でadvanced nurseとともに診療にあたっていた経験もあり、本研修で指導医の役割を果たしております。『臨床推論』では、実例を用いた個別ワークおよびグループワークで考えていきました。そして、最後にセンター長が患者の訴えから診断に至るプロセスについて解説しました。受講生一同、医師の視点からのコメントに関心を寄せ、一生懸命メモを取っておりました。

≪看護師長よりコメント≫
看護師は普段、その方の生活や生きるをどう支えるかという視点で考えることが多いので、臨床推論は難しいというのが率直な感想です。しかし、熊木先生の解説はたいへん分かりやすく、実践の場ですぐにでも活かすことのできる内容ばかりで、研修生たちにとっても充実した時間だったと思います。お忙しいところ、貴重な時間をありがとうございました。

≪センター長よりコメント≫
看護師の皆さん、お疲れ様でした。臨床推論は少し難易度の高い内容であり、慣れないところもあったと思います。しかし、日々の診療において考えに基づいた診断を心がけることによって徐々に力がつくと思います。医学生にも配布しております資料も、永久保存版として活用して下さい。当日の6症例のうち1例は発熱および悪寒を伴った腎盂腎炎の症例でした。後日『臨床疫学』の研修もあるため、データに慣れていく必要があります。そこで、日常診療で患者さんに最も近い看護師にこそ役立つ論文をひとつ紹介しました。

悪寒を伴った発熱患者の寒気の程度で菌血症が予測できる、徳田安春先生の有名な論文です。
Am J Med 2005;118:1417.(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16378800/)

本論文では救急外来を一定期間に受診した体温38℃以上の全発熱患者(N=526)を対象に、悪寒のある患者を軽症(N=105, ジャケットなどの上着で改善)、中等症(N=100, 毛布で改善)および重症(N=65, 毛布でも改善しない)に分類し、悪寒のない患者(N=256)と比較しております。その結果、悪寒のない患者に比べ、軽症、中等症および重症の悪寒では菌血症であるリスクが、それぞれ1.8倍、4.1倍および12.1倍であることが判りました。すなわち、血液培養の結果が数日かけて戻ってくる前に菌血症を予想できる点がポイントです。やはり、患者さんの『見た目』って大事です!

看護師の皆さん、まだ研修は始まったばかりですが、引き続き実りのある研修になることを願っております。

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