研修医の一次・二次救急研修報告「奥深い便秘診療」-愛媛大学医学部附属病院総合臨床研修センター

研修医の一次・二次救急研修報告「奥深い便秘診療」

アイプログラム(愛媛大学医学部附属病院を中心とした研修プログラム)では、救急研修の一環として、大学病院に隣接する愛媛医療センターで研修医が一次・二次救急の診療にも当たっております。熊木天児センター長が指導医として同行することもあり、センター長から与えられたお題に応えるように、研修医の皆さんに経験談をレポートして頂きました。どの研修医も学びに繋がるしっかりとした研修を受けております。

第1弾でご紹介するのは、薬剤による副作用を考えることの重要性を学べたという経験です。4日連続で投稿していきますので、ぜひご確認ください。

奥深い便秘診療(2年目研修医 A先生)
 便秘、腹部膨満感、嘔吐のため近医を受診した結果、不完全腸閉塞(sub ileus)が疑われ、紹介されて来院された70歳代の男性を診察しました。病歴聴取の結果、2ヶ月前から腹部症状が出現していたことが分かりました。腹部打診上は鼓音が目立っていた訳ではなかったものの、紹介元の先生からsub ileus除外のご依頼がありました。そして、腹部CTを撮影しましたが、便秘以外の異常所見はありませんでした。
 すると、センター長から「この方はスルピリドを内服しているため、薬剤性パーキンソニズムを含めた副作用による便秘かもしれない」とコメントがありました。お薬手帳の記載を遡ると、多剤が処方されている中、スルピリドだけが3ヶ月前から増量されていることが判明しました。すなわち、前述の問診で聴取した2ヶ月前の出来事は、スルピリドを増量した1ヶ月後のことであることが分かりました。
 また、センター長から(パーキンソニズムを意識して)歩行状態について質問を受けました。小刻み歩行は見られなかったものの、患者さんが診察台から降りた際にふらついていたことを思い出し、お伝えしました。すると、姿勢保持障害や自律神経症状かもしれないねとコメントがありました。
 今回の患者さんの診察を通して、常に薬剤性を鑑別に挙げること、歩行状態など全身を観察することの重要性を学びました。

センター長からのコメント
 高齢化社会に伴い、複数の治療薬を内服している方が増える一方です。従って、常に薬剤による副作用の可能性を想起する必要があります。なお、ある特定の薬剤ではなく、相互作用によって副作用が出現することもあります。今回と直接関係がある訳ではありませんが、そのことを診療中に見抜くことは難しく、複数の調剤薬局で処方をしてもらっている場合には「かかりつけ薬剤師」を持つことの重要性を、我々医師はもっと啓蒙しなければならないですね。前から読んでも後ろから読んでも「くすりはりすく」って言いますからね!

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