研修医の一次・二次救急研修報告「大動脈解離を疑った際には造影CT検査を躊躇しないこと」-愛媛大学医学部附属病院総合臨床研修センター

研修医の一次・二次救急研修報告「大動脈解離を疑った際には造影CT検査を躊躇しないこと」

アイプログラム(愛媛大学医学部附属病院を中心とした研修プログラム)では、救急研修の一環として、大学病院に隣接する愛媛医療センターで研修医が一次・二次救急の診療にも当たっております。
熊木天児センター長が指導医として同行することもあり、センター長から与えられたお題に応えるように、研修医の皆さんに経験談をレポートして頂きました。どの研修医も学びに繋がるしっかりとした研修を受けております。

第2弾でご紹介するのは、致死的疾患の鑑別には造影CT撮影が重要であることを学べたという経験です。4日連続で投稿していきますので、ぜひご確認ください。

「大動脈解離を疑った際には造影CT検査を躊躇しないこと」(2年目研修医 B先生)
 失神を主訴とする70代女性を診察しました。当日12時頃に突然の背部痛が出現したものの、30分程度で自然軽快しました。18時頃に入浴後、椅子に座っていたら急に意識を失い、救急搬送されてきました。胸部大動脈解離においては10%程度の方が失神を起こすため、大動脈解離を鑑別に挙げていました。時間経過やバイタル等、病態に合致しないと思い、造影CTではなく頭部単純CTと心電図で失神の原因検索を行いました。しかし、原因を指摘できなかったため、センター長に相談して造影CTを追加しました。結果的に大動脈解離はなく、神経調節性失神やてんかん、不整脈などの可能性があるため、日中に循環器内科を受診していただく必要性を説明し、その日は帰宅となりました。
 振り返ると背部痛・失神からは大動脈解離を除外する必要があり、患者さんの為に躊躇することなく造影CTを行う必要性がありました。致死的な疾患を除外する為に必要な検査は、今後躊躇する事なく行なっていこうと思います。

センター長からのコメント
結局、確定診断には至っておりませんが、限られた資源(人員、検査)で診療の行われている夜間救急外来では診断に至らないことは決して珍しくありません。その場合、致死的な疾患を見逃していないか、治療を兼ねた診断ができないかを必ず考えるように心がけております。そして、十分に説明します。その点、今回は症状としては典型的ではなかったものの、大動脈解離だけは逃したくない状況でした。昨今、CTに頼りすぎていることが問題視されておりますが、必要な時は必要です。ただし、本当に撮影の必要な致死的疾患の鑑別には単純CTではなく、造影CTが決め手となることが多いです。常に「この単純CT撮影は本当に必要なのか?本当に必要なのは造影CTなのではないか?」ということを考える癖をつけて下さい。それにしても、良い経験になりましたね!

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