野元先生雑感

2016年06月17日

夏至(げし) 総合診療医 6月21日

6月21日 夏至
日中の最も長い一日で、朝は早く夕は遅くまで明るい。この時期は毎年MDS学会が開催され、今年はBerlinである。私は2013-2015にMDSJの代表を担当し、現在、理事を務めていることもあり、毎年参加し発表している。1985年に英国へ留学中に現在のMDSの基となる研究会が開催され、雑誌が創刊された。よい雑誌にしようと皆で意気込み留学先での研究を掲載したが、当時はもっと良い雑誌もあるのにと、少し不安でもあったが、現在Movement Disordersはこの分野では最もよく読まれ、レベルの高いジャーナルとなっている。日本からの演題やシンポジウムなど、貢献が大きく投稿も増えて頼もしい。

 

総合診療医

医師国家試験が終わっても、医師としての試験はよく受ける。卒業後の研修を続けるためにそれぞれの学会が専門医制度を立ち上げており、専門医が話題になることが多い。2年の研修期間が終わると、専門医の研修を進めて試験を受けることとなっている。各学会の専門医制度を統一することが議論されてきたが、医師の地域における配置が課題となり、現在は、総合診療医の育成が話題となっている。英国は以前からGeneral Practitioner(GP)を制度化しており、2年の研修の後、3年以上の専門研修を受けてGPの資格を得ている。GPは人口の約2000人に一人の割合で配置されており、それぞれの地域で空席ができると募集をしている。私はロンドンに留学したが、city hallへ登録に行ったところ、住んでいる地域におけるGPの一覧表を渡され、登録する医師を決めるようになっていた。クリニックは一般の住宅と同様の建物で、カルテを準備する女性が一人いるだけのシンプルなオフィスで、救急時には各地域に配置されている病院を直接受診するが、原則はすべてGPを受診して処方箋を交付してもらうことになっていた。処方箋をもって近くの薬局へ行き薬をもらう。処方箋1枚に対して2ポンド(当時は約600円、現在は6ポンド)を支払い、薬代は保険から支払われるようになっている。GPはすべての症状に対して対応し、必要と判断したら、近くの病院へ紹介し、あるいは採血の指示書を渡して病院で検査をしてもらい、1週間後くらいに再診して結果をGPから聞くような仕組みだった。

来年から始まる専門医研修制度では、これまであった各学会の専門医とともに、総合診療医が設けられている。総合診療医は地域を担当するというコンセプトとなっており、このGP制度をモデルとしている。現在のデイケアや老健施設などの介護保険制度の案は英国等を参考に昭和60年ごろに作成された。医師の専門医制度が整備されつつあるが、英国等の欧州は多くの点でこれからの日本の将来モデルになっている。

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