手術教育研究所について

 当教室の手術教育研究所は、2020年に「全耳鼻科医に“神の手”を」をモットーに設立されました。手術の達人の技術は、時に“神の手”と形容されますが、それはその人が長年鍛錬を積んだ賜物であり、決して最初から備わっているものではありません。神業のような手術の技術も、構造を分析し定量的に評価することができれば、誰にでもその技術を移植することが可能になると考えています。これが実現し、耳鼻科医全体の手術技術が向上すれば、安定して質の高い医療を提供することができるようになります。
 当研究所では、上記を目標に、手術教育を可能な限り科学的に捉え、論文化して発信します。これは全国的にも珍しい取り組みです。若手の先生たちは、この取り組みを通して、手術についてより深く理論的に考察し、自身の技術の向上につなげることができます。

 この取り組みは、2021年の日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の教育・育成功労賞を受賞しました。

手術教育研究所について

 当教室の手術教育研究所は、2020年に「全耳鼻科医に“神の手”を」をモットーに設立されました。手術の達人の技術は、時に“神の手”と形容されますが、それはその人が長年鍛錬を積んだ賜物であり、決して最初から備わっているものではありません。神業のような手術の技術も、構造を分析し定量的に評価することができれば、誰にでもその技術を移植することが可能になると考えています。これが実現し、耳鼻科医全体の手術技術が向上すれば、安定して質の高い医療を提供することができるようになります。
 当研究所では、上記を目標に、手術教育を可能な限り科学的に捉え、論文化して発信します。これは全国的にも珍しい取り組みです。若手の先生たちは、この取り組みを通して、手術についてより深く理論的に考察し、自身の技術の向上につなげることができます。

 この取り組みは、2021年の日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の教育・育成功労賞を受賞しました。

主な研究成果論文

結紮縫合トレーニング:Auris Nasus Larynx. 2020;47(2):291-298
 耳鼻咽喉科医に必要な結紮縫合スキルについて、RAND/UCLA法を用いて耳科、鼻科、頭頸部外科など各分野の声を均等に集め、コンセンサスを形成しました。必要とされたスキルから7つのタスクを作成し、それらを用いてトレーニングカリキュラムを開発し、その妥当性と有用性を確認しました。当科では毎年このカリキュラムを用いた結紮縫合トレーニングを実施し効果を得ています。

3Dホログラムを利用した腫瘍切除:Laryngoscope Investigative Otolaryngology. 2021; 1-6
 患者さんの術前のCT画像から3Dのホログラムを作成し、手術に使用した報告です。手術を行う際には、このような立体での解剖の理解が重要になります。

ホログラムを利用した手術トレーニング, 頭頸部癌. 2021, 47(4), 366-370(日本頭頸部癌学会優秀論文賞を受賞)
 文章や動画などのバーチャルの手術教材をホログラムとして空間に浮かべ、それを参照しながら手術トレーニングを行えるようにしました。これにより、ご遺体を用いた手術シミュレーション研修の価値が高まります。

内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)のトレーニング:Auris Nasus Larynx. 2023; 50(6), 887-894
 本研究では低コストで繰り返しできる若手向けの鼻内視鏡トレーニングモデルを作成しました。

頭頸部手術に必要な技術スキルを言語化:Annals of Surgery. 2021; 2:e059
 この研究では、質的研究の手法を用いて、頭頸部手術に必要なコツ(技術スキル)を収集し、言語化し、整理しました。結果として、60のコツが収集され、スキルとして言語化され、それらは7つのカテゴリーに整理されました。頭頸部がん専門医(エキスパート)による無記名アンケート調査により、どのようなコツに注目して教育を行うとよいかが明らかになりました。このように、教えるポイントが明らかになると、より効率的な手術指導ができます。

作成した手術教育教材

科学的で新しい結紮・縫合トレーニング用教材 https://www.ehime-ent.com/
(R3 大学改革等推進補助金 VR教材作成事業)

手術解剖学習用3DVRモデル(R4-5 愛媛大学教育改革推進事業 愛媛大学教育改革GP)

現在進行中の研究

Mixed reality技術を用いた咽頭癌に対する経口的手術の支援システム開発(R5-8 若手研究)

頭頸部手術の3DVR教材の開発

頭頸部癌手術における適切なマージン確保に関する研究

頭頸部外科手術の尺度開発に関する研究

頭頸部手術で使用できるVR(バーチャルリアリティ)/MR(ミクスドリアリティ)技術の研究

腫瘍切除/電気メストレーニングのための腫瘍モデルの開発

発表論文・著書一覧

三谷壮平、木谷卓史、勢井洋史、佐藤恵里子、坂本佳代、向川卓志、鵜久森徹、脇坂浩之、羽藤直人. 3Dコンテンツを活用した新しい頸部郭清術教材の開発, 頭頸部外科, in press.

三谷壮平. バーチャル・リアリティ技術を利用した手術教育, 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報, in press.

Takagi T, Mitani S, Aoishi K, Nishida N, Hato N. Development of a proficiency-based training curriculum for beginners in endoscopic endonasal surgery. Auris Nasus Larynx. 2023, 50, 887-894.

三谷壮平. 手術技術の可視化と戦略的教育環境整備, 日本気管食道科学会会報, 2023, 74(5):338-345.

三谷壮平、西尾直樹、松木崇、木谷卓史、佐藤恵里子、坂本佳代、細川裕貴、鵜久森徹、脇坂浩之、羽藤直人. 頭頸部外科手術の基盤となる技術スキルに対する認識―若手医師と熟達医との違い―, 頭頸部外科, 2022, 32(3):257-263.

Nishio N, Mitani S, Sakamoto K, Morimoto G, Yokoi S, Shigeyama M, Wada A, Mukoyama N, Rosenthal EL, Sone M. Validation of a surgical training model containing indocyanine green for near-infrared fluorescence imaging. Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2022 Jul 8;7(4):1011-1017.

三谷壮平. ここまで進んだバーチャル・リアリティ―耳鼻咽喉科頭頸部外科領域での使用―, 耳鼻咽喉科, 2022,2(2)250-255.

三谷壮平, 木谷卓史, 坂本佳代, 相原栞, 細川裕貴, 佐藤恵里子, 勢井洋史, 羽藤直人. 頭頸部外科領域における内視鏡手術:咽頭癌と甲状腺腫瘍に対して, 愛媛医学, 2022, 41(2)66-70.

坂本佳代, 三谷壮平, 佐藤恵里子, 木谷卓史, 真田朋昌, 羽藤直人. Mixed reality技術によるホログラムを利用したハイブリッドカダバートレーニング, 2021, 47(4), 366-370.

佐藤恵里子, 三谷壮平, 西尾直樹, 木谷卓史, 真田朋昌, 鵜久森徹, Holsinger F. Christopher, Baik Fred M., 羽藤直人. ANL Secondary Publication 耳鼻咽喉科医のための結紮縫合カリキュラムの開発, 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報, 2021, 124(11), 1543-1544.

Gong J, Holsinger FC, Noel JE, Mitani S, Jopling J, Bedi N, Koh YW, Orloff LA, Cernea CR, Yeung S. Using deep learning to identify the recurrent laryngeal nerve during thyroidectomy, Sci Rep, 2021,12;11(1):14306.

Mitani S, Sato E, Kawaguchi N, Sawada S, Sakamoto K, Kitani T, Sanada T, Yamada H, Hato N. Case-specific three-dimensional hologram with a mixed reality technique for tumor resection in otolaryngology, Laryngoscope Investigative Otolaryngology, 2021, 1-6.

Mitani S, Nishio N, Kitani T, Ugumori T, Wakisaka H, Tanaka K, Miao B, Chan JYK, Holsinger CF, Hato N, Verbalization, categorization, and evaluation of fundamental surgical skills: An expert consensus in open head and neck surgery, Annals of Surgery, 2021, 2, e059.

Sato E, Mitani S, Nishio N, Kitani T, Sanada T, Ugumori T, Holsinger CF, Baik FM. Development of proficiency-based knot-tying and suturing curriculum for otolaryngology residents: A pilot study. Auris Nasus Larynx, 2020,47,291-298.