新着情報

オランダ留学体験記 〜その5〜
倉田聖
たまには真面目な話も・・
J先生(PhD course fellow, cardiologist)がCAGのシネ画像を見せてきて
CAG: LCX#11: 50-70%狭窄が一か所のみ
J:「これどう思う?」
A:「LCX近位に中等度狭窄だよね、それで?」
J:「手術するんだよ」
A:「(CABGはないはずのなので)心臓・大血管、脳血管の手術、大腿骨頭OPなど出血のリスクが大きい時はリスクになるかもしれないね、そうでない限りこれくらいはCADの治療なしでOPにいけるはず」
J:「AVRするんだけど、LCXの治療はどうしたらいいと思う?」
A:「stress MPIは?」
J:「やっていないみたい」
A:「(それくらいやって相談しろよ)虚血が出れば何かしたらいいんじゃない?」
J:「治療は?」
A:「1VDだからPCIが通常だけど・・」
J:「治療した方がいいわけ?」
A:「虚血が出ないとやる必要ないし、実際このレベルだったら迷うくらいの程度だよね」
J:「どういうこと?」
A:「先にPCIしてしまうと、抗血小板剤を二種類必要になるので、AVR時のminor bleedingのリスクになるし・・・」
J:「はっきりせえへんなー」
A::「CABG+AVRでは、LCXのCABGが心臓を反転させるリスク(いろんな合併症あり)があるし、LCXの1VDにCABGのは大げさすぎるよ」
J:「じゃ、どうすればいいと思う?」
A:「この患者知っている人?」
J:「少しね」
A:「(家族もしくは知り合いってことね)、もしこの患者が自分の親だったら、これくらいの狭窄では明らかな虚血まで出ないかもしれないので、MPIで証拠がない限りはAVRの治療を先に専念してもらう、そして術後にMPIをやって虚血があるなら、ゆっくりPCIという方針を考えると思う」
J:「Aのいうことは、はっきりせえへんな(unclear)~」
A:「(こういう答えを求めていないのか?) この人症状あるの?」
J:「ない、だから迷うよねー」
A:「DMは?」
J:「あるみたいー」
A:「だったら症状なんかアテにならないやろー、負荷ECGやった?」
J:「結果がないからまだみたい、けど負荷ECGの診断能は低いよね」
A:「それでも出たら虚血でいいじゃん」
J:「じゃあ、やるように言うておくよ」
反省点:
1.DMありで、負荷ECGなし、負荷MPIの結果がない状態で、相談持ってこられても何の議論もならない・・・(ほんとはAS合併の状態は虚血が出やすいので、CADが過大評価されることもある・・・・ASのリスクを先に考慮すべき)
2.AHAガイドライン上、非心臓手術であれば8METSの運動対応能があればCADの治療なしでも大丈夫など、ガイドライン・EBMっぽいことを基本に話した方がよかったかも
3.「自分の親だったら・・」などの言い回しは、彼らにはあまり響かない日本人っぽい表現だったかもしれない
4.高度狭窄でなければ、本来の冠動脈(この場合LCX)の血流が強いと、CABGの開存が長期に望めないなど、実臨床のことを伝えるのは、お国と術者の違いもあるので一概にも言えないし、それまで説明する語彙力もまだないし・・・
こういう日もあります・・・